dollシリーズ番外編。翼×葵のifストーリーです。
もしも彼らが同じ大学で付き合っていたら?っていうもしもストーリーです。
玲司も亮も出てきません。
葵の大学受験が一歩違っていたらこうなっていたかも?とゆるふわ読んでもらえると嬉しいです。
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今日は遊園地にデートしにきた。最近大学で知り合って付き合い初めた彼氏と。
絶世の美少年、翼。白い肌に大きな瞳。とにかく美しい天使の様な顔立ち。
何でこんな人がこんな平凡代表みたいな僕を気に入ったのかさっぱり分からない。
でも、『君みたいな子がとにかく好きなんだよ』って再三アタックされて付き合うことになった。
そんな僕ら。
「葵お待たせ!アイス買ってきたよ〜♡」
にこにこ満面の笑みで言う。両手にいちごアイス持って現れた翼は可愛かった。
「はい、葵。アイス持って…うわーカワイイ!」
なんて、僕のことを可愛いカワイイと彼は言う。
そこまでは良いんだけど…。
では早速、とかぶりつこうとした手を力強く掴まれた。
「勝手に食べて良いなんて言ってないんだけど?」
耳元で低く囁く声にぞくりと震える。
翼のハチミツみたいな甘い声には時折こうやって毒が混じる。
「は、ハイ…」
カワイイ系の彼氏だと思っていたが、ちょっとSっ気があるみたいなんだ翼は。
付き合って1週間、まだまだ分からないことが沢山ある。
『可愛い系クソS小悪魔彼氏』
翼がイジワルしてなかなかアイスを渡してくれない。自分の分はささっと食べ終えておきつつも。
はいあーん、て餌付けされるみたいにアイスを食べる。まあ、良いんだけど…。
あまりにもったいぶってアイス食べさせてくるので、アイスがダラダラに溶けてきたのだ。
その頃になってようやくはい、って渡してきた翼。
「ねええもう、イジワルしないでよお」
ふふ、と満足そうな翼。
どう頑張ってたべてもダラダラと手だの唇だのに垂れてくるアイスと僕はひたすら戦った。
そんな様子を、翼は楽しそうに見ていた。
小悪魔なんだよなあ、案外…。
この遊園地はかなり広くて、一日かけて遊べる感じ。コーヒーカップ乗ったりゴーカート乗ったり、あれこれと楽しんだ。
ただ僕は翼にちょっと振り回されっぱなし。
コーヒーカップもゴーカートも、翼がありえないスピード出して回したり走ったりするから。
全く乗り物に酔わないという翼。僕はまあまあ酔っている。
「おええええ…」
酔ってしまって、ひと気のないベンチで横たわる。膝枕してくれる翼。優しい時もある。
「葵ちゃん大丈夫?調子に乗るから…」
「僕のせいなんだっけ!?」
僕を見下ろす翼。その目元がまたニコ、て笑ってまた僕はドキッてした。
ゆっくり近づいてきて、キスされた。
***
機嫌良くお土産屋さんを見て回る翼。あれも欲しいこれも欲しいと結構ポイポイカゴに入れていく。
お坊ちゃんなんだよね?確か。その後ろを苦笑しながらついていく。
…それにしても外でキスなんて、翼って結構大胆なんだなあ。さっきの柔らかいキスの感触が蘇って、僕はひとり頬が熱くなる。
「ね、葵。これ似合いそう…」
そんな時にふいに翼が振り返って、美しい瞳とぱちと目が合う。やば、こんな赤面顔見られたら…
「葵、さっきのこと思い出してるでしょ」
見透かすようにからかわれて僕は居た堪れなくなった。物陰でキュッと手を握られて、僕は握り返した。
お化け屋敷に一緒に入った時。
「わ〜こわ〜い♡」
って翼はぶりっ子して言ってたけど、内心1ミリも怖くないって感じでズンズン進んでいくのがギャップがあった。
「お、置いてかないでー!!!」
僕は怖いの無理。いやだいやだと渋る僕を無理やり連れてきて、そして僕を1人置いて走り去った翼…!
***
「ううう〜ヒッグ、うぐ…」
「もう〜泣くなってばあ」
出口で合流した時、僕は恐怖のあまりに涙溢れていた。普通に超怖かったのだ。翼、あれ平気なのか…?
しゃがむ僕。道ゆく人に苦笑されている。うっ恥ずかし。
翼もそっと跪いて、そして僕の耳元で言った。
「僕以外の前で泣くなんて許してないんだけど。涙見せるのは僕の前でだけにしな」
ドキッとする。
翼は綺麗で高そうなハンカチを取り出すと、僕の頬をそっと拭った。
遊園地の煌びやかな装飾を背景にした絶世の美少年の翼。整った鼻梁に大きな瞳。吸い込まれてしまいそうだ。王子様みたい…
「ほら、立てって」
「!」
僕を強引に立たせた。嗜虐心のチラつく瞳が僕を見下ろしていた。
***
「葵。最後、あれ乗りたい」
夕暮れ迫ってきた遊園地。くいくいと僕の袖をひいた翼。指差したのは観覧車。
良いよと答えると、翼はにっこり微笑んでやっぱり天使みたいな顔をして、僕はただひたすらドキッとした。
観覧車、好きなのかな?
***
「わ〜すごいねえ」
「葵。子供みたい」
夕闇に染まり出す街並み。遊園地のカラフルな灯りがおもちゃ箱みたいで可愛い。僕はワクワクしていた。観覧車って楽しい!
観覧車に向かいあって座る。白いマフラーに埋まる翼の小さな顔。まつ毛が長くてお人形さんみたいだ。
目があってニコッて微笑まれて、僕はドキドキソワソワ。初めて会ったときから翼はこうだ。
その笑顔だけで人を虜にする。僕にはない魅力。
ガラス張りの観覧車は徐々に高さを増していき、気づけば上空にそろそろ差し掛かろうとしていた、その時。
「ねえ、葵ちゃん。お願いがあるんだけど」
「え、何?」
くすくすとイタズラっぽく笑う。
「何?何企んでるの?」
ふふふと笑う翼。観覧車のてっぺんでキスしようとか、そういう甘いやつかなとチラッと想像したんだけど、全然違った。
ふいに僕の隣に移動してきた翼。耳元でこそこそと言われた。
「ね、僕らの初めて、ここでしよ」
「え…」
相変わらずにこにこ笑顔で、冗談か分かりかねた。
「するって…?まさか…?」
「想像してることで合ってるよ」
え…!?
「こういうとこでするのって刺激的じゃない?」
「え、いや、でもさ、時間だって足りないしっ見えちゃ」
「良いから早くしな」
ガラス窓バン!てされてドスのきいた声。ぞくりと震えた。まただ。冷たく攻撃的な瞳。翼は時々、すごく男らしい時がある。
思わず命令に従ってしまいそうになる。
でも…
「いっいくら何でも無理だよっ」
「僕の言うことが聞けないって訳?」
苛立ちあらわに僕を見下ろす。
ぶるぶる背筋が震える。けど、嫌いじゃない。
「でも、本当にむり、です…時間ほんとに足りないよ」
「ふ〜〜ん?」
イライラと翼は外を見下ろし、高そうな腕時計を確認した。本当に無理か算段し…ため息を吐く。諦めたようだ。
「あーあ。葵がごちゃごちゃ言うから。あとでお仕置きね。そうだなあ、じゃあせめてキスしてよ」
僕は心底ホッとした。それくらいなら全然構わない。チュッとキスをした。その桜色の唇に。
「はあ?そんなんでキスしたつもり?」
許してくれない翼。
僕はそれから、翼の命令通りその膝に乗り上げてキスをさせられた。頭抑えられて激しく貪られる。
息が上がってしまって、チラと何気なく視線を上げた先。
隣の観覧車のゴンドラのカップル達と目が合った。
***
観覧車から降りる。さっきのカップルが通り過ぎて行くのを気恥ずかしい気持ちでやり過ごした。
翼は、何も言わずに翼は僕の腕を引いてズンズンと出口へと向かい出した。細い身体で意外な程に翼は腕力のあるタイプだった。
「え、あ、どしたの翼。も、帰るの?」
「そ。さっさと僕ん家帰るよ。我慢できない。
僕以外の人間の前で恥ずかしそうな顔したり笑ったり泣いたり。アイスだらだらやらしく溢したり。葵はマジでお仕置きしなきゃいけないからね。今日も明日も明後日も。躾してあげる。僕が良いっていうまで。何もかもだ」
嗜虐心溢れる瞳が僕を見つめた。
本能的な危険を感じる。背筋が強くぶるりと震えた。
翼は僕の手を離そうとしない。
end
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