オメガバース

【stardust#11】運命の番の本音

梓と同じ空間にいるのが耐えられなくて、僕は部屋を飛び出した。

壊れそうな心を抱えてふらふらと寮を彷徨う。
頭が重くて重くて、他に何も考えられなかった。

ふいに暗がりでポケットからスマホを取り出した。

『雨宮先生、会いに行って良いですか』

それは思い詰め過ぎた結果だった。

授業のグループLINEを悪用し、僕は先生にだけそっとメッセージを打った。

 

どうにでもなれ、どうしてこんなこと、誰か嘘だと言って、先生ならどうにかしてくれるかも。色んな思いが交錯していた。思い詰め過ぎて、頭がバカになっていたのかもしれない。

 

普段ならやらないことをやった僕をヤバイと思ったのか。すぐに返信は来た。

ー『良いよ。明日も休むつもりだから、家来れるなら会えるけど・・』

『行きます。僕も明日休むつもりでした』

ー『分かった。場所は・・』

 

こうして話はまとまり、僕は先生の家に行くことになった。何を話したいのか自分でもよく分からないのに。

 

未だヒートの醒めやらない、オメガの雨宮先生の家にひとりで・・。

 

 

『花の咲く先』

 

 

バスを乗り継ぎ訪れた先生の家。

ドギマギしながらインターホンを押す。いらっしゃいとふらりと出迎えてくれた先生は、部屋着で眼鏡なのに一目で色っぽいと感じた。

どうぞと通された部屋は、薄いパステルカラー配色の、綺麗で心和む家だった。床に置いてあったクッションに2人でそれぞれ座る。

僕は思い切って話を始めた。

「先生お休みのところ本当にすみません・・でも、先生ヒートで休んでるんじゃないかって噂があって・・。本当ですか」

「・・うん、そうみたいだね」

やっぱりと内心唇を噛む。分かってた、知ってたさ!でも。

「そうみたいって・・どうして他人事なんですか」

「だって僕の頭と身体じゃないみたいでさ・・人には言えない様な想像で頭がいっぱいで気もそぞろ・・こんなの僕じゃない」

先生はため息を吐いた。

潤んだ瞳で気怠げに僕を見つめる先生。
熱のせいだと思っていたそれは、欲の産物で・・。

先生はそっとクローゼットを指差した。

「・・今日、星屑くんが来るって言うから慌てて片付けたんだ。やましい本だのDVDだのをさ・・こんなの初めて。僕は発情期のネコちゃんにでもなっちゃったのかな?

・・ああ、こんなこと生徒に言うことじゃないんだけど・・頭、回んなくてさ・・」

先生は髪をぐしゃぐしゃとかき上げた。その様が色っぽすぎて、僕はたじろいだ。

番じゃなくても、こんなのドキドキするに決まってる。色香が花開く、そんな表現がぴったりだった。

「あの・・本当にすみません、その、大変な時に押しかけてしまって」

「うん?別に良いよ。・・星屑くんならね」

頭を僅かに傾けて僕をじっと見つめる。少し含みのある言い方・・?

「・・どういう意味ですか・・?」

「別に?よく面倒見てる子だからって意味。ただそれだけさ」

ニコといつもみたいに笑おうとした先生。しかしそれは少しの間があって・・誘惑の微笑みへと変わった。

「・・本当は星屑くんに相手して欲しかったから、って言ったらどうする?」

「!!」

キュッと手を握られて、慌てて振り解いた!

「嘘さ。間に受けちゃいけないよ。あっはは・・!」

先生らしくない笑い方。こんな先生は初めてだと困惑していると、先生は神妙な顔を取り戻して言った。

「・・まあ、こんな感じで変なんだよ、僕。ごめんね・・。

生徒を誘惑して揶揄うなんてやっちゃいけないのに、何してるんだか。誰彼構わず誘いたくなって・・。

・・あっでもね、星屑くんを可愛がってきたのは本当だし、内心可愛らしいと思ってたのも本当で・・って、何喋っちゃってるんだろ。

ヒートって頭おかしくなるな、本当・・ああ、抑制剤、効くの遅いんだよなあ・・」

 

グラグラと頭を振る先生。ドキンと跳ねた心臓。際どい発言もヒートのせい?今日の先生は本当に変だ。

ベータの僕ですらこんなにドギマギしてしまうんだから、アルファなら一層香り立つフェロモンにやられて・・!

 

ぶわ、と嫉妬の炎が燃え盛るのを感じた。
ギュッと手指を握り、覚悟を決めて本題を切り出した。

 

「先生。正直に答えて欲しいんです。
あず、灰原くんを・・どう思っていますか・・」

 

まっすぐ先生を見れず、俯いて自分の膝を見つめていた。

「・・良い子」
「それだけ?」
「・・スマート」
「あとは・・?」
「・・ハンサム・・優秀・・
あとは・・セクシーって感じかな・・」

ドキンと心臓が跳ねた。悪い予感がこっちへおいでと言っている。

「じゃあこの間また梓にキスされた時、どう思いました?噂で聞きました」

「・・・。別に・・」

ふいとそっぽを向いた先生。直感的に嘘だと感じた。

「正直に言って下さい!」

顔を上げた。答えの分かっている質問をぶつけて、僕は何を求めているのだろう。

「迷惑ってだけさ・・」
「嘘だ!」

耐えきれずぽろぽろと涙を溢してしまった。

「そんな、泣かないで・・」

先生が僕の涙を拭こうとするから、それを拒んだ。傷ついた顔の先生。その優しさが今は辛い。僕は顔を覆った。

「・・先生の本音を教えて下さい。教えてくれるまで帰らない・・」

スンスンと鼻を啜る音だけがしばし聞こえて、先生はため息を吐いた。

「・・ドキドキした。・・嬉しかった、気がする」

びくりと自分の身体が震えるのが分かった。

僕はこの後に及んで『灰原くんのことなんか別に何とも思ってない』と言って欲しかったんだ。

「あの時。欲しい、寝たい、自分のものにしたい、そう思った・・」

心がぶるぶる震えた。ヒュウヒュウと喉が鳴る。

「でも別に前から好きだったとか、そんな訳じゃなくて・・欲求が先行してさ・・でも、何故か今は灰原くんが気になって仕方ない・・そんな感じ・・」

「先生・・何でだか、もう、分かって、る、でしょう・・?」

あれ、おかしいな、うまく声が出ない。

「ああ、そうだね・・。

あのね、でもまず、聞いてほしいんだけどさ。

僕ね、星屑くんのことは初めて見た時から可愛いなと思っていて・・高校卒業したらデートに誘おうと思ってたんだ。

灰原くんと仮の番になったらしいけど、どうせアルファとベータだ。いずれ縁は切れるだろうと思っていたし・・

でもまさかその灰原くんと僕が運命の番とはね・・はは、運命の悪戯が過ぎる。

ずっとヒートも来ず、アルファの番なんて諦めてきたってのに。

 

・・灰原くんを僕にくださいって言ったら、君はどうする・・?」

 

続く

【stardust#12】ひかりの告白の行方『そんなの嫌です!』って言おうとした言葉は、ガサガサとした息となって漏れ出ただけだった。ヒュウヒュウ喉が鳴る。 「・・星屑くん?」...
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POSTED COMMENT

  1. ひーりー より:

    あぁぁぁぁぁ辛すぎる展開(><)
    でもこういう展開凄く好きです♡♡

    • tsukiyo より:

      >ひーりーさん

      ありがとうございます〜!そう言って頂けて安心しました…!