人間の美醜に関するちょっとかわいそうな話。怪我に関する記述が出るので苦手な方はお気をつけください。
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先生の顔。多分石でもぶつけられて腫れたのだろう額に、俺は氷嚢をあてた。
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「いやあ、それはダメだよ。根は悪い子たちじゃないんだからさ」
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はははと笑った先生。こうやっていつもいつもお人好しすぎる先生にまたも胸が痛んだ。
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「そうやって優しいからなめられるんだよ」 「別に気にしてないよ。だからシメたらだめよ」
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嘘だ。ずっと面倒見てきた魔術学校の子供らに冷たくされるようになって、めちゃくちゃ落ち込んでるの俺知ってるよ。
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理由は先生の見た目が醜悪になったから。 それでそうなったのは、俺のせい。
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そう言ってニコニコと食べ出した先生を、俺は微笑ましく見つめた。ここは先生が山奥に作った隠れ家だった。 見た目が醜悪すぎるせいで、人里に降りると騒ぎになってしまうのだ。
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だから俺はここにちょくちょく来ては、先生の面倒を見ている。
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小学校の担任だった先生。 当時10歳だった俺に初恋を教えてくれた。
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その時は普通の容姿だった。特別カッコよくないけど、優しくて優しくて本当に優しくて、俺が特別な感情を抱くのに時間は掛からなかった。
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「でもさあ、ルイくん。もうこんなに頻繁に来なくても良いよ?せっかくハンサムでさ、デートとかあるだろうし!
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…もう責任感じなくて良いんだよ?僕がやりたくてやったことなんだから」 「俺だってここに来たくて来てんだよ、だから良いだろ」
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それに責任を感じるなというのは無理だった。 先生が醜悪な容姿になったのは俺のせいなんだから。
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村長さん家に封印されているという禁断の書。大人達がヒソヒソ話しているのを時折耳にした。
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中に閉じ込めているのはある恐ろしい呪いらしく、近づくなとずっと言われていた。
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ある日学校を抜け出して、ひとりこっそり村長さん家に入り込み、当時覚えたての難解な魔術で封印を解き、中を開けた。
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その時本の中から襲ってきたのは黒い影。それは顔にべちゃっと張り付いてきて言いようのないおぞましい感覚だった。それだけ覚えている。失神したらしかった。
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それから少しして、俺はふらふら立ち上がった。ふと、部屋の鏡で自分を見て俺は悲鳴をあげた。ぐちゃぐちゃの顔になっていたんだ。まあまあ整っていたはずの俺の顔は見る影もなかった。
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バン!と部屋に入ってきたのは先生だった。俺を見るなりヒッと息を飲んだ。
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「…ルイくん!?可哀想に、なんてことだ! 先生が今すぐ助けてあげる!」
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先生は迷わず魔術で俺の呪いを解いた。ただし呪いを身代わりに引き受けるという形で。
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あとで知ったことだが、呪いというのは本当に厄介だ。
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呪いは基本的に死ぬまで解けない。けど、誰か別の人間にそっくり移すことは出来る。ただしそれは1度だけ。
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本当に呪いを解きたければ、何かしら条件を満たせば良いらしいのだが、その条件が何なのかは誰も分からない。呪いにもよる。 だから時折運よく解けることもある。だけどそれは滅多にない。
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そんな面倒な代物を、大魔術師様が本に封じたというのに。それを解いた、馬鹿な俺さ…。
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そしてそんな呪いを、あの時一瞬も迷いもせずに身代わりに引き受けてくれた先生。
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だけどあまりに醜悪な容姿となった結果、先生は人里を追われた。
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俺のせいなんだと言っても、周囲は耳を貸さない。醜悪過ぎる容姿は人を遠ざけた。俺がどんなに吠えても、先生に石を投げる奴は跡を絶たなかった。この世の理不尽さを思い知った。
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そんなある日。クリスマスが間近に迫って来ていた時。
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相変わらず先生ん家に来ていた俺。先生がそうポツッと言うのを聞き逃さなかった。
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「先生!俺と一緒に行こう!クリスマスマーケット!遠くから見てればバレないしさ!」 「え、いや…僕が行くと雰囲気がさ」 「大丈夫!遠くから見るだけだし!ね、決まり!!」
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押し切った。事実上、先生とデート出来るというのがめっちゃ嬉しかった。舞い上がってしまっていた。
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先生の頭を厳重にマフラーと帽子で包んで俺たちは遠目にクリスマスツリーを並んで見ていた。ぼんやりと遠目でも綺麗だった。
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チラと先生を見てみたら、瞳をキラキラさせて見ていて、俺は嬉しいやら悲しいやらつらい気持ちになった。先生、ああいう綺麗なもの好きだもんね。本当なら間近で見られたはずなのに。
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突然ガツっと嫌な音がして、先生が額を押さえてうずくまった。石が落ちている。これを当てられたのか。
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振り返る。何人かがケラケラ笑いながら走っていった。
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思い出した、魔術学校の同級生。先生にお世話になってたはずだ、アイツらも!
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憎しみが俺の心に燃え盛る。この目で確かに記憶した。
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近くの古びたベンチに並んで座った。タオルで抑える。
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「先生。ちょっとはやり返せよ。魔術使えるんだから槍でも降らせれば良いじゃないか」 「魔術は人を傷つけるために使うものじゃないよ」 「でもアイツらは先生を傷つける!」 「それはさ、しょうがないんだよ。だって恐いじゃん?僕の顔。別に気にしてないし」 「何がだよ!!」
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俺はイライラと哀しくなって頭をぐしゃぐしゃと掻いた。寂しかった、こんなに先生は優しいのに、誰も理解しない!
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「もう誰にも石なんか投げさせない。全員俺がぶっころしてやる!」 「ルイ君、良いんだ。そんなことしないでって前も言ったでしょ!」 「何で!」 「僕は誰かが傷つくところなんか見たくない!これで良いんだよ!」
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先生、何でそんなに優しいんだよ。そんなんじゃ早死にしちまうよ。
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だからなのか?ヤケッぱちな気持ちで言ってしまった。
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8年間封じてきた言葉を、つい言ってしまった。 言えないうちに先生居なくなりそうな気がしたから。
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「やなのかよ。傷つくな俺」 「うう…っ!」 「俺は傷つけても良いのかよ」 「良くない…!けど…さあ…」
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お断りか…。ガキは相手に出来ませんて?哀しくなって俯いた。
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「…本当に良いの?罪悪感から自分を安売りしてない?」」
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「良い!全然良い!!罪悪感で言ってるんじゃない!」 「君よりだいぶ歳上だし」 「良い!!!」
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「こんなオバケだけど…?」 「先生は綺麗だよ」 「!?」
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その心の中がさ、誰より綺麗なんだよ。先生自覚ないだろうけど。
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大分アタフタしながらも、じゃあよろしくお願いします、とかなり照れながら言った先生の、おでこにそっとキスをした。
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そんな噂が広まっても俺は別に気にしなかった。むしろ堂々としたモンだった。
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ある日、どうしても必要で先生と町の魔術道具屋に出かけた時のこと。
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ニヤニヤとややこしい奴らに絡まれた。クリスマスに先生に石投げた奴だった。
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「うるせえ」 「こんなオバケに興奮するって正気か?」 「ほっとけって言ってんだよ!」
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「自分が絶世の美形って言われてるの、鼻にかけてんの?こんな奴を相手に出来る素敵な俺って?嫌な奴〜」
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「まあまあ…」 困った顔で様子を見ていた先生だったが。
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喧嘩していた俺たちのそばで、そのとき唐突にブクブクと魔術用の火鍋が煮立ち始めた。加熱温度間違いか? ヤバいかもと思う間も無く突如火柱が吹き上がった!
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先生は迷わず鍋の一番近くにいた奴を体当たりして突き飛ばした!燃え盛る火だるまになった先生がふらふらと歩く。またも身代わりになったのだ!
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慌てて火消しした。魔術をこんな用途で使うななんて!
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やっぱり早く死んだ。言いようのない悲しみが込み上げた。涙がボロボロ溢れた。先生は優し過ぎたんだ。何で石投げる様な奴を守ろうとすんだよ、先生。
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俺は先生を守れなかった。悔しかった。どうしては俺は、いつもこうなんだろう。優し過ぎる先生をただ見ていただけだ!
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せめて最後に顔だけでもと思ってうつ伏せになっていた先生をゴロリと仰向けに寝かせた。
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ヒュウヒュウと息をしつつ、先生は生きていた。しかも、元の見た目に戻っている!?
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「…何かね『自分を疎む者を命懸けで助けること』が呪いが消える条件だったみたい。呪いが消える時、そんなイメージが見えた…」
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ボロボロに焼け焦げて消えたのは呪いの方だったのか。
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目に映るのは、先生の懐かしい元の顔。歳の頃は30ちょっと。頬が少しすすけている。
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なんか色々愛しくてぶははと笑ってしまった失礼すぎる俺。バツが悪そうに頭を掻いた先生。
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「あ、うん。知ってる。自分が平凡な人間だって…ごめんねこんな僕で…あっ恋人関係破棄するなら今だから。全然受け付けるしホント気にしないから」
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「させるかよ!大好きだった!普通だろうがオバケだろうが、先生なら何だって!」
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先生はやっぱり綺麗だった。その心の中は誰よりもずっと。
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子供好きの先生が頑張る回。美女と野獣的なお話でした!
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大体攻めくんが頑張る話が多いので、こういうのもアリかな?と思って書きました。
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以前にアンケートとったところ溺愛攻めが人気だったので、最近は
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ただピクシブで溺愛攻めを検索すると、幅広い作品にそのタグついてるんですよね。
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とりあえず、攻め君→→→→→←受け君みたいな、攻め君の気持ちが大き過ぎる関係性なのかなと理解したんですけど、どうなんでしょうか!?
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あと、受け君をかわいいかわいいする攻め君の場合は溺愛。
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かわいいって言わないけど強い気持ちを向けている場合は執着攻めに分類されるのかなと
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それが闇方向に行き過ぎるとヤンデレ攻めみたいな…。
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内容/クラスの中心ド陽キャ×ぼっち系ド陰キャ文学少年 正反対なのに惹かれ合うふたり。 夏休み、一緒に過ごした最後の20日間の話。
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冒頭部分が無料で読めます。宜しければ以下からどうぞ。
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※メールに返信するとメーラーデーモンのエラーが出る件、修正しました。
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