こんにちは!月夜です。





今回もメルマガお送りします。

今回はハッピーエンドな感じじゃないかもので、苦手な人はご注意ください。メリーバッドエンド的な感じ・・?

#美形平凡#兄弟#メリーバッドエンド

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汚らしく薄汚れた街、夜明けの駅。

そこに差す爽やかな朝陽は随分チグハグで、随分イヤミだ。




電光掲示板が電車の到来を伝えている。

「アキラ・・ほら、ちゃんと立って」

お酒の匂いをたっぷりと含んだ、金髪美形を抱え上げる。



透き通る様に白い肌、綺麗な灰色がかった瞳がうっすらと開き・・にこ、と営業スマイルを浮かべた。

見るひと皆が一瞬で恋に落ちてしまう、かわいい笑顔なんだけど・・。


「・・うっせえ殺すぞ」
目が据わっている。今日は相当酔っている様だ。

僕はため息を吐いた。
(お客さんじゃないよう、僕だよ、ソラだよ)と耳元でヒソヒソと話した。

「・・なんだ、ソラか・・」

そういって僕に余計に体重を預けて抱きついてきた彼を、よっこいせと電車に運び入れた。





表向きはカワイイ笑顔と愛嬌が売りのホスト、アキラ。その素性は口が悪い荒れくれ者。僕は黒服。

僕らは同じ店で働いている、救いのないふたり・・。





『希望を買う代金』





街並みと同じ薄汚れた電車はそれなりに混んでいる。敗れたシート、ゴミの捨て置かれた電車内。

いつものことだ。

アキラをドサっとシートに座らせた。
周りに人もチラホラいる車内。




「大丈夫?」
「おええ・・全然大丈夫じゃねえ・・ソラ、水くれ・・」




ペットボトルを差し出すと、アキラはグビグビと飲み始め、いっぺんに飲み干した。

店でコールがかかってシャンパン一気飲みする時と同じ飲み方・・。

「ったく、ふざけんなよあのクソ客共。次ウチの店来たらぶっ飛ばしてやるから」
「・・アキラ、ごめんね、本当ありがとう・・」



今だ少し腫れている頬をさすったアキラ。
事の発端は僕。

めちゃくちゃ太ったおじさんが僕を買おうとして、それを見てブチギレたアキラが客をひっぱたいたのだ。 

でもそんなアキラを店長は更にぶん殴った。彼が金持ちだったから。




「僕だって許せない、アキラに面白半分であんなにお酒飲ませて・・!」

悔しくって仕方ない。
詫びの代償としてアキラは大量の酒を一気に飲まされた。


「別に。大したことねえ」
「あのとき運が悪かったら急性アルコール中毒で死んでるんだよ!?」
「うるせえ!良いんだよほっとけ!」


逆ギレしたアキラ。


「・・ったく・・あーあ、金持ちを焼き鳥にして良い法律でも出来ねえかな、クソ野郎共」
「アキラ!」



口の悪いアキラ。せっかくの美貌に不釣り合いな言葉遣いが哀しかった。


「ふん、良いさ良いさ。金が貯まるまでの辛抱だ。必要額までもう少し・・あとちょっとくらい付き合ってやるさ、あの豚共に」

ニヒルにアキラは顔を歪めて笑った。






寂れた電車は人を運び、駅に降ろしていく。

僕らが降りるのはまだまだ先。もっともっと先の、貧乏人だけが住む汚い街・・。

気づけば皆降りてしまい、誰もいない電車内で僕らだけ。

アキラは僕にそっとキスをした。


「・・お前のちゃんとした名前、俺が買ってやるからな。あとちょっと辛抱してくれよ」

僕は首を振った。

「もう良いよ。僕の名前なんか・・『疎裸』(そら)で良いんだ」




そう・・金持ち連中が作った酔狂な法律のせいで、素敵な漢字を使った名前には信じられない高い値段がつけられたのだ。
だから貧乏人は子供が出来てもロクな名前を買ってやれない。


『名前ひとつで金持ちかそうでないかを見分けられる便利な法律』なんだってさ。



「良い訳ねえだろ、『疎裸』だぜ?」

「仕方ない、僕らは運がなかった。もう良いんだ。
だからお酒狂いのホストなんかもう辞めて・・お兄ちゃん」

「血縁関係は忘れろって言っただろ。・・俺はソラの恋人、アキラだ」



腹違いの兄は、そういって僕を抱きしめもう一度キスをした。

気づけば両親に捨てられていた僕ら。
寄り添って生きている内にいつしか恋人になった。



「名前の良し悪しがその後の人生も決める。住処も仕事も、結婚も!
だから人生変えたきゃ貧乏人は、まずは死に物狂いで名前を変えなきゃいけない。
この話は何度もしただろ、ソラ」
「でも・・」


アキラは続けた。
「・・それにな。『疎ましいに裸』でソラって読ますだなんて・・あんまりだろ。
恋人にはもっと良い名前をやりたいんだよ、俺は」


それに幾らかかると思ってるの?
自分の身体まで壊して。


「自分だって、諦めるに螺旋の螺、で『諦螺』(あきら)のくせ!」
「お前の名前より遥かにマシだね」



アキラはプイとそっぽを向いた。
アキラが自分の名前を心底嫌がっていることを、僕だって知っている。


なのに・・アキラは貯金を全部使って僕に名前を買おうとしている。



「とにかくだ!名前さえ・・ちゃんとした名前さえ手に入れば、お前は9等区から出られる。
2等区は無理でも3・・いや4等区くらいには住める。あそこはまだマシだ。あそこなら人生やり直せる、お前だけでも」

「やだ!!!アキラと離れたくない!!僕も9等区で良い!!」
「言うこと聞けよ、ソラ!!」

「やだ!!!!!」
「・・ってめ・・!」

途端にゴッホゴホと咳をしたアキラ。
口元を抑えた手のひらには・・血。


「俺には時間がないんだよ。せめてお前だけでも幸せになってくれよ。
ソラ、お前は俺の希望だ」

僕をじっと見つめる。

アキラが買おうとしている僕の名前は『空良』。


空気が悪くゴミゴミして、空もロクに見れない9等区から離れて、これからは綺麗な空が見れますようにって願いを込めて。


「とにかく今月の給料入り次第、お前の名前の手続きするからな。・・そしたウチ、出てけよ。泣いても喚いても追い出すから」
「馬鹿、アキラの馬鹿・・」

悔しくて苦しくて、ギュッと拳を握った。




『次は終点、9等区、9等区・・』
さびれたアナウンスが車内に響いた。




end
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兄弟BLでした。
弟の新しい人生を買いたいからホストを頑張ってる兄とそれを間近で見てやきもきしてる弟の話。
好きだからこそ一緒にいれない系の仄暗い話でした。

暗い話が好きなんです・・!



ちなみにソラは最初、『空落』になるはずだったんですけど考えてみたら悪くない名前だなと思ったので、もっと個性的な名前にしました。



『一般的な響きの名前にとっぴょうしもない漢字を当てる遊び』を一人でたまにやるので(なにそれ?)、その名残で思いついた話です。





◆ぺちゃくちゃ

noteで番外編を色々と販売させて頂いているのですが、先日累計販売数が200部を突破しました。これもひとえに読者さんのおかげです、ありがとうございます!( ;∀;)

ちなみに販売数1位は『ある浮気男の言い分』です。健気な攻め君が需要あるんでしょうか!?('ω')ノ






さて最近は、書ける作風の幅を広げたいなと思って試行錯誤してるんですが、これが中々難しいところでして・・

もともと仄暗い話・物悲しい話・重い話が好きなのでどうしてもストーリーの発想がそっちに寄ります。
だけどピクシブを広く見渡してみると、甘々系が概ね人気ですよね。

それに毎回同じ作風だとつまらないかな?というのもあり・・



なので明るい甘々系も書けるようになりたいなと思ってるんですが、むずかしくて・・修行中です( ;∀;)



腐女子って光の腐女子と闇の腐女子がいるじゃないですか?ハリーポッターで言うグリフィンドールかスリザリンみたいな・・(うろ覚え)

間違いなく私後者なんですよね。

一方ツイッターランドを見ていると「この作家さん明らかに光の腐女子だな」って思う人がたまにいて、そういうタイプの作家さんは労せず明るい甘々を書き上げてるので『すげえ。』ってなります。

やっぱり生まれつきなんでしょうか!?

私は明るすぎる光に触れると死ぬタイプ・・中2病こじらせですね。

まあーでもぼちぼちやっていきたいと思います!(^^)/






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