あけましておめでとうございます。月夜です。
今年もよろしくお願いいたします!





さてさて、新年1回目のメルマガお送りしますね◎
今回のお題は『健気な子が頑張ってるけど攻め様に相手にされなくて、切ないけれど最後はハッピーエンドな感じ』です!

スーパーアイドル×平凡スタッフ受けくんです。


◆報われなくても

「おおお、お疲れ様です!これ、差し入れです!」
「…ああ。そこ置いといて」

若干挙動不審になりながらも、今朝5時から並んで買った評判の栗饅頭を渡したのは、巽(たつみ)。
この事務所のスタッフのひとり。丸っこいメガネをかけて寝不足の頭はすこしモジャついている。

一方、興味ない感マックスでそう答えたのは彰。
この事務所に所属する、今をときめくスーパーアイドルだ。

誰がどう見ても無理目な片想いを巽がやってのけているのを、やや白けた目で見ているのは彰のマネージャー、柚。綺麗な顔をしている。

事務所という接点がなければ決して関わることなどない巽と彰。
柚以外にもその恋模様をやや意地悪な視線で見ているものは、事務所の中にチラホラといた。

それでも巽はメゲることはなかった。




『報われなくても』




「何遍いったらわかんだよ!ココ修正して!」
「は、はいっ!?」

ズバンと机を叩いて今日もキレているのは、巽の上司。キレやすく気分屋で指示がしょっちゅう変わる困り者だ。
しかしそんな上司の圧に押されながらも、巽は必死で食らいついていた。さっきとは真逆の修正指示をこなしていく。

その一方で。
「あっ小野田さん、ココね、彰くんのここのショート動画のココ、修正してもらえる?もうちょっと尺を長めに…」
上司の隙を見つつ、彰のPRのための画像や動画編集の指示を後輩に出していく。

パワハラ上司がいても巽がココを辞めない理由は至極シンプル。
彰の側にいたいから…ではなく。
彰をPRするための動画や画像を徹底して良いモノにしたいから、なのだった。


***


遅くまでオフィスではカチャカチャとキーを叩く音が聞こえる。巽だ。
結局後輩に頼んだ彰くん動画の修正が今ひとつな感じになってしまったので、自分で直していた。

そんな午前12時をとうに過ぎた事務所を訪れた者がいた。柚だった。忘れ物をとりに立ち寄っていた。

「!アナタまだいたの。…へえ、お疲れさん」
ちらりと巽のPCモニタを覗くと、それだけ言って柚は帰って行った。


連日連夜、作業は続いた。
凝り性の巽は夜な夜な彰のための編集作業を続けていた。もちろん残業代など出ないが。
時折顔を出す柚には心底ビビられた。

「うわっ流石に今日は居ねえだろと思ったけどいたよ。ってかまだそれやってんの!?正気か?」
「え、えへ…」

ほらよといつも、柚はコーヒーをくれた。



***



しかしその愛はなかなか彰には伝わらない。

「こ、こんにちは!」
「…ああ」

寝不足でややフラフラな巽は、廊下ですれ違うたびに彰に精一杯笑顔で挨拶するものの、大体いつも塩対応されていた。
すこし切ないが、それでも巽はかまわなかった。
仕方ないのだ。自分みたいに地味な人間は…。



そうして日は経ち。
巽の頑張りの成果もあり、SNSに流す様の彰のPV動画は相当良い出来のものが出来上がった。
たったの10分程だが、そこには確かに編集者の愛が詰まっていた。

彰や柚、その他スタッフ交えた居酒屋での飲み会の際、それが彰にお披露目されると。

「このPR動画メッチャ良いじゃん」
「あ、それ私がやったんです!」
「え、マジ?すっげ」

ちゃっかり手柄を横取りした後輩がいた。

「巽先輩、全然手伝ってくれなくて。すっごく大変だったんです!彰さんへの差し入れとかだけはやるし」
「…へえ…」

そんな嘘まで堂々とかます。

あの巽が?そんな風には見えないが、人は見かけによらないのだな。
半信半疑の彰だったが、その居酒屋の廊下でたまたま巽にすれ違った時。

「あっ彰くん!」
何か物言いたげな巽をつい、スッと無言で避けてしまった…。


***



彰についに無言でスルーされたことがあまりに悲しすぎて、飲み会のはじっこのはじっこの席で酒を飲みまくった巽。

「巽」

そんな巽の前に、ジョッキを持って現れた者がいた。柚だった。
長い長い脚を畳んで座った。
なんかひとりでぽつんとちまちまやってる巽が流石に可哀想だったんで、声を掛けてやっていた。

「アナタ飲み過ぎだよ。どしたんだよ」
「…彰くんに…ついにスルーされてしまって…あっ内緒にして下さいね」

ああ〜さっきのやつだなと内心合点した柚。ため息を吐いた。

「まあ彰にはそれとなく言っといてやるけどさあ。…ってかアナタ、何で毎晩毎晩あんなに遅くまで作業やってたの?残業代も出ない上にあんなに上司にイジメられてんのに。いくら彰ファンでもさ」

「だって好きな人には輝いてて欲しいじゃないれすか!世界で1番カッコイイんだぞ!って皆に分かって欲しいれすもん…彰くんのPV作るのは僕の天命なんれすよ…」

「…んなこと言ったってさあ、その手柄だって別のスタッフに取られたでしょ?聞いてた?あっさっきいなかったのか。タイミング悪いなあ本当。何してんだよ」

手短に経緯を話した柚。

「え!?そんなことが!?
ああ、そういう訳で彰くんは僕に冷たく…?うう、女子に優しいんですね、流石…」

ゴッゴッと日本酒を一気飲みした巽。

「おい!?流石にヤバくないかその飲み方は!?」
ぷは、とグラスを離した巽。

「…僕、そもそもアピとか苦手だし。それに僕が目立ちたいんじゃないし。良いんれすよ、とにかく。彰くんの何かしらの役に立てるなら、それだけれ…うう…でも彰くん…また僕に動画、作らせてくれるでしょうか…?嫌われちゃった?
僕、頑張るから。いくらでも…おねがい…」

そして酒に飲まれてそのまま机に沈んだ巽。

コイツ、マジか?このモジャつき頭…ずっと遅くまで頑張ってたもんな。柚はそんな巽の髪先にほんのり触れた。

巽を見直した柚。いや見直したどころか一気に花開く様な気持ちがあって…

***

翌日。
「俺、巽チャンと付き合うわ」
「は!?」

そう言い放った柚に彰は心底驚いた。
「だってさあ…聞いてみ?」

柚は内緒話の様に言って聞かせた。
どれだけ影で巽が今まで頑張っていたか。

「俺、健気な子って好きなんだよね〜。彰はああいう子は地味な子は好みじゃないもんな?俺がもらうね」
柚がニッと笑って言えば、居てもたってもいられず走り出した彰。
どうせ巽のところに走ってってるのだろう。

柚は知っている。自分と同じく彰が健気っ子好きなこと。
それに負けず嫌いの彰にこう言えば、その恋心が更に加速するということも。

どうせあの2人はくっつくんだろうってことも。

既に失恋の兆しが見えかけている柚は、爽やかな様な哀しいような気持ちで、窓から空を見上げた。

せっかく久しぶりに人を好きになれたのになあ。まあでも、巽チャンには幸せになって欲しいしな。
そんな胸の内は、冬の空だけが聞いていた。




end
——————————
くっつくカップルの脇でひっそり失恋する良い人キャラが好きなんです!!





◆ピクシブだとヤンデレ執着めっちゃ人気だと思った話

ピクシブにヤンデレ執着をアップしたらビックリするくらいフォロワーさんが増えました。
メルマガ登録頂いた方も沢山おられます。皆さんありがとうございます。
重い愛が人気なんですかね。

あまりにもフォロワーさん増えたので、今後はメルマガでもヤンデレ執着話書いていきたいなと思います。

良かったら教えて欲しいんですけど、ヤンデレ執着の最大のポイントってどこなんでしょう。

塩だった攻めくんが、徐々に受けくんになびいていって最後はヤンデレ執着するようになる、みたいな変化が面白いのか?
ヤンデレ執着する様そのものが求められているのか?
上記の両方を抑えていることこそが肝心なのか?


ヤンデレ好きな方、こういうトコを読みたい!っていうのがあれば良ければこっそり教えてもらえると嬉しいです^_^





◆月夜オンライン書店新刊のご案内

さて、12月は以下の2冊を新刊?で出しました。
宜しければどうぞ!
各100円です。

①冷めた瞳のその下で

dollシリーズ 翼×葵のもしも話。
彼らがもし大学で知り合って普通に付き合っていたら…?というお話です。傍若無人なクソS翼が楽しめます。

しかし本編とあまりに異なります。
翼ファンがたまにおられるので、そういった方向けに書きました。あと何でも許せる方向けです。
※18歳未満の方はご購入お控え下さい。

サンプルページ↓
案内ページ




② 『イケメン俳優が迫真の演技でヤンデレしてると思ってたのに』他2話

ヤンデレ執着短編集です。以下の3本立てです。

☑︎ヤンデレ先生vs受験生
☑︎ヤクザも神頼み
☑︎イケメン俳優が迫真の演技でヤンデレしてると思ってたのに

ハッピーエンドとも限りませんが、重い重いヤンデレ執着が楽しめます。

サンプルページ↓
案内ページ





◆メリバっぽい話

需要があるかは分からないんですけど、メリバ寄りの話お送りします。完全なる私の趣味です。

哀しい話が好きなので、我もメリバが好きだ!という方がいたらご一報頂けると嬉しいです( ˊ̱˂˃ˋ̱ )

和風ホラー『写し身の怪』
塩な攻めくんに片想いしてる、可哀想な妖怪受けちゃん。
ーーーーーーー

思い起こせばもう随分昔の話だ。
かつて隣に住んでいた幼馴染、秋也は僕に随分冷たかった。
小さな子供ながらに僕がこう言えば。

『僕ねえ、秋也が大好き!』
『俺は別に…』

秋也は切れ長な瞳をチラリとこっちにやって、それだけよく言ったものだった。

近所で小さな夏祭りが開催されると聞き、僕が思い切って誘ってみれば。

『お祭り行かない!?浴衣着てさ!』
『興味ない』

僕の方をチラリと見もせず、秋也はそう言ったものだった。その癖お祭り当日は何故か会場にいて、近所の女の子達にまとわりつかれていたりした。
興味ないのはお祭りではなく、僕だったのだ。

それでもメゲなかった僕。冬のある日には。

『秋也。こ、これ!!』
『…いらないし…』

思い切ってバレンタインにチョコレートを渡して見れば、アッサリいらないと断られた。

見事玉砕。清々しいくらいに。
家でワンワン泣いたっけ。こんな平凡な顔だからダメなんだ、なんて。

どれもこれも小さな時の話だ。
でも振り返ってみれば、秋也はあの頃から賢そうな瞳をしていて、もしかして僕の正体にどこか気づいていたのかもしれない。


『写し身の怪』



13歳になったある日。僕は両親から告げられた。
僕らは『写し身の怪』なのだと。

目の前の相手がいま1番会いたい人間の姿を借りることが出来る。
要は『好きな人の好きな人』になれるという訳だ。
そうして姿を借り、自分に夢中になった相手の生き血を啜って生きる。
そうして長く渡り歩いて生きてきたのだという。

13歳になったら僕も立派なもののけとして、そう生きていかなければならない、ということだった。

『海斗、あなたが人間なのも昨日でおしまいだったのよ』
母さんにはそう言われた。
そんな訳がないと思いながらも、通行人で試してみたら僕の体はぐにゃりと歪み、あっという間に変身した。誰か知らない女性の姿に。


***


こうして僕ら一家は表社会から姿を消した。水難事故に遭ったことにして。最後に遠くから見納めした秋也は、僕のことで泣いたりしていなかった。

それから僕は何人にも取り憑いて生き血を啜った。相手の命が尽きるまで。そうしなければ喉が渇いて渇いて仕方がなかったのだ。僕は自身の身の上を呪った。しかし自分が生きるには他に方法がない。

『一度かけた術は、相手が死ぬまで解けない決まりなの。生き血を吸えなければあなたが死ぬの。だから気をつけなさい』母さんはよく僕にこう言った。

長い長い時が経った。色んな街を彷徨い歩いた。沢山の人間の人生を覗いてきた。愛だの恋だの羨ましかった。しょせん写し身の怪の僕には関係なかったから…。

そんなある日。
僕はとある街角で見つけてしまったのだ。秋也を。何年経とうと見間違える訳がなかった。
あの切れ長で賢そうな瞳。秋也だ。立派な大人になって。だけど指輪をしている。誰かのモノなんだ!

見つけた瞬間、気持ちが溢れた。僕は辛抱堪らず秋也を追った。

秋也の『好きな人』になってみたい願望を抑えられなかったのだ。

その背中に近づいて、術をかけた。

「今1番誰に逢いたい?」

こう問いかける。いつものやり方だ。
術が完了する頃、僕は秋也の想い人に変身している。どうせ僕は知らない女になる、惨めだ。
でもかまやしない、せめて生き血を啜って僕の手で殺してやるんだ。どうせ叶わない想いだったのだから!

秋也は答えた。

「むかし幼馴染だった海斗。ずっと前に水難事故で死んだ。
子供だったから素直に好きと言えなかった。
もしももう一度逢えるなら、今度こそ好きだと言って、ずっと一緒にいたい。昔夏祭りで買ったこの指輪を渡したい」




end
ーーーーーーーーー
もしこんなもののけがいたら…と思いついた話。



それではまた次回!




何かコメント等ありましたらこのメールに直接返信、もしくはLINEにてお返事頂ければと思います。

※メールに返信するとメーラーデーモンのエラーが出る件、修正しました。



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