こんにちは!月夜です。




今回のお題は『コメディタッチで、ちよっとした勘違いとかあて馬の策略とかで、すれ違う両片想いのムズキュン』です。

#男子高校生 #美形×平凡 #ハロウイン

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この学園にはある伝説がある。
それは10月末に行われる寮のハロウィンパーティーで交際を始めた相手とは、その後末永くラブラブでいられるということ。

一方もう一つ、裏の伝説もある。

そのハロウィンパーティーでフラれてしまうと、魔物たちの呪いにかかりその後ふたりがお付き合いに進展することは絶対にない。

そんな伝説。

それに怖気付いて、僕はずっと好きな人に告白できないまま今日まで来てしまっている・・。



『ハロウィンナイト』



朝の教室での日課。視界のすみに大好きな冴島くんを視界に入れてみる。

ちょっと不良っぽい雰囲気だけど硬派な感じでかっこいいんだ。視界に入ってくれるだけでときめきが止まらない。
えへへ・・とつい笑みが溢れた僕を、友達の拓也が小突いた。

「かなで。またにやけてるぞ」
「だってえー」
「だってじゃねえ」



またこづかれて、やめてよーと戯れあう。
拓也はめっちゃいい奴で、学校入った時からずっと親友。
ヒソヒソと話しかけてきた。
「・・んで?冴島に話しかけなくて良い訳。良いかげんオトモダチくらいになれよ」
チラッと見上げて、僕はふるふると首を振った。



・・本当は高1の時、勇気を振り絞ってハロウィンナイトで冴島くんに告白しようとしたこともある。
だけどその直前、僕はうっかり聞いてしまったんだ。
廊下で冴島くんと他の同級生が話してるところ。
『好きな子がいる。めちゃくちゃ可愛くて好きなんだけど、どうやって近づいたら良いのか分からない』って・・。


それを聞いてハッとした。それ多分、同じクラスの亜蘭くんのことだと思ったから。超可愛い顔した美少年で皆にとっての高嶺の花。ふたりが喋ってるところ、確かに一度も見たことないなって。

それを聞いてビビってしまい、僕は冴島くんに話しかけることも出来ないまま高2になった。

ハロウィンナイトの参加は2年生まで。3年生は勉強しなきゃいけないから。
よってチャンスがあるのは、今年限り・・!


だけど・・


突如キャッキャと華やかな声が聞こえた方を見る。亜蘭くんが冴島くんになんか絡んでいた。
ドキッとした。いやギクっとしたというか。
委員の仕事が被ったとかで、ここのところ急接近したふたり。

ううう、亜蘭くん。今日もかわいいよー。なんでだよーこんなに遠くからみてもなんてうつくしき・・
内心しょんぼりする。
亜蘭くん、やっぱり冴島くんのこと好きなのかな・・なんかモヤモヤどきどきが治らない。

「・・まあ亜蘭には勝てねえなー、さすがにな・・」
同情してくれる拓也。そのお腹をポスッと殴った。
「分かってるわい・・っ!」
「まあ元気だせよ。いちごミルクを奢ってやるから」
「えっ良いの・・♡」

パッとにこにこになってしまい、僕は拓也と連れ立って教室を出た。



***

拓也に手を引かれる様にして歩いていく子犬の様な奏。やたらに距離感が近いようなふたり。
『ふたりがあんなにくっついているのは、ホントはデキてるからだ』と噂を耳した冴島。
根も葉もない噂話は時に真実の様にまことしやかに流れる。
冴島もそんな噂話に翻弄されるうちのひとりだった。それに実際、拓也は奏を結構気に入っている様に見えたのだ。
ギュッと手の平を握った。

***


その日のホームルーム。
ハロウインナイトのことで、先生からお話があった。
衣装を学校で貸してくれるんだけど、希望を書いて出すんだ。リストを見てみる。
え〜となになに。衣装色々あるんだなあ。
む!?かぼちゃの騎士がある!カッコいいしちょっと可愛いし、これにしよ!

冴島くんに『お菓子くれないとイタズラしちゃうよ?』とかあわよくば・・!?
あらぬコーフンを抱いて、意気揚々と希望の衣装を書いて提出した。
僕だってカッコいいナイト、やれるんだから!




ところが。

「え・・?」

後日配られた衣装を見て、僕は意気消沈した。
かぼちゃになってしまったのだ。巨大なかぼちゃ頭にオレンジのマント。どうやら冴島くんに気を取られるあまり、騎士ってつけたすのを忘れたらしかった。

ウッ・・かぼちゃ・・

「かなで〜衣装なに?俺は魔術師・・えっかぼちゃ!?なんでそれにしたんだよお前えええ」
ぶはははと爆笑した拓也だった。


***

ハロウィンナイト当日。学校の授業終わり、皆で教室で適当に着替えた。

ダンボールで作られた巨大なかぼちゃをかぶる。
それにマントも。
教室の窓に映る自分は立派なかぼちゃだった。
ウッ頭でかいよう。重いよう。

ちなみにチラッとみた亜蘭くんはカッコいい吸血鬼だった。シックな衣装でうわっ赤いカラコンまで入れてて本格仕様。すごいよう。カッコいいよう。うらやましいよう。

そして一方。こっそり覗き見した冴島くんはというと・・警官の仮装衣装だった。ちょっと長めの後ろ髪をひとつに結んでて、悪徳警官ぽさもあってあまりにカッコいい。すごいよう。カッコいいよう。逮捕して欲しい。ずっと牢屋に入れて置かれても良いな冴島くんが見張り役してくれたら・・

なんてえへへとまたあらぬ妄想をしていると。
む!?亜蘭くんがまた話しかけにいってる!!
やや強面の冴島くんに亜蘭くんは臆することなく近づいていく。ドキドキしながらカボチャ頭の隙間から見つめる。

「冴島くん、一緒に写真撮ろ!」

なんて言ってわりと強引に写真撮ってた。絵になりまくり。映えまくりのふたり。

僕だって・・僕だってかぼちゃの騎士だったら・・せめて・・せめて・・!
でもこんなかぼちゃ姿見られたくないっ。でも無理。でかいし目立つし、冴島くんの視界に入らないことが無理ッ!
内心しくしくしながら荷物をまとめ、僕はそそくさと拓也を連れて教室を出た。



***

一方。
そんな巨大なかぼちゃ頭が去っていく様子をこっそりとだが名残惜しげに見つめる冴島がいた。
『一緒に写真撮らない?』って奏に万が一言われた時のために、スマホはカメラを起動しておいたまま。
***

拓也と並んで歩く。
「お前、頭でけえなあ・・」
苦笑した拓也。分かってる。並んで歩くとがつんて時々当たる。ごめんねえ。


寮の中はハロウィンの飾り付けが色々されてかわいくなっていた。
こういう催しモノが色々あるのもこの高校を選んだポイントだったなー。

「奏。で、結局どうすんの?告白すんの?」
「ううっ・・」

現実に引き戻される。
告白するべきかどうかなんて、明白だ。
あまりにも脈がないし、ハロウィンナイトの言い伝えを考えれば告白をしないことが正解。
だけど・・
またキャッキャと廊下のあっちから声が聞こえて僕はハッと顔を上げた。
亜蘭くんが冴島くんにペタッてくっついて楽しそうに歩いてた。

「ダメ元でもさー、告白しとけば?まあ玉砕するだろうけどさ。そのかぼちゃ頭ならフラれたってギャグに出来るだろ」
「ううっひとごとだと思ってええー!」
またポカって拓也を叩いた。



***

そんな拓也と奏の様子を遠くから見ていた亜蘭。
勘の良い亜蘭は、奏の気持ちにとっくに気づいていた。
この僕に勝てるとでも?かぼちゃ君。
冴島くんを貰うのはこの僕だ。

亜蘭はむしゃくしゃして、ちょっと奏をいじめてやることにした。

***

拓也がトイレ行ってる間、僕がぼんやり待っていると。

「奏くん」

亜蘭くんに声を掛けられてめちゃくちゃビックリした。ううっ近くで見るとちょうかわいいよお・・

「な、なに?」
「これ、冴島くんから」
「え!?なになに!?」

カサ、と開いたメモには『夜22時。中庭の時計台の下で待つ』とあった。
え!?何だろ!?

「あ、ありがとう!!」
「いいえ〜どういたしまして♪」

ささっと帰って行った亜蘭くん。意外と良い人かもっ!


「かなで〜お待たせ」

亜蘭くんと入れ違う様に戻ってきた拓也。
僕はさっきの件を速攻報告した。
だけどう〜んと首を傾げた拓也。

「冴島ってこんな字だったっけ・・?もっとこう、荒い字だったような」
「気のせいだよう!!えーお手紙、なんだろう・・♪」


それでも訝しがる拓也だったけど。ワクワクの止まらない僕。キャッキャとテンションぶち上がり!ソワソワと夜22時を待った。



***



一方。やたらに楽しそうな拓也とかなでを遠くから見つめ、ため息を吐いた冴島。

何があんな楽しいって言うんだ。拓也と一緒にいるからか。
あの噂はやっぱり本当なんだろうか。
拓也はとっくに告白してるんだろうか。
それとも奏の方から?

奏が自ら冴島に話しかけてくることなんて今までなかった。不器用な冴島も、話しかけることはできなかった。
だから分からないのだ、奏の気持ちはなにも・・。


***

いよいよ夜22時、ちょっと前。
拓也には先に寮に帰ってもらうことにして、僕だけ例の待ち合わせ場所へと向かった。
行きすがら、どきどきが止まらない。

用事ってなに?ややややっぱりハロウィンナイトのこの日にお呼び出しということは、もしかして告白というやつ・・!?
そんな・・そんな・・えへ・・えへへ・・

いやでも単純にノート貸してとかかも。分からない。期待し過ぎてしょんぼりしたくないし・・

僕は顔を引き締めていざ時計台へと向かった、
のだけど・・

行ったら時計台の下。亜蘭くんが冴島くんに抱きついてた。

えっ・・
頭ん中が一瞬真っ白になって、でもカサッてやってしまって、やばい、冴島くんがこっち見た・・!

僕は脱兎の如く逃げ出した。



***

どれくらい時間が経ったろうか。
学園の隅っこ、僕は枯れた植え込みの間に挟まってひとり消沈していた。
膝を抱えてうずくまる。

うう・・やっぱり亜蘭くんも冴島くんのこと、好きだったんだ・・

うう・・ううう・・・

ずび、と涙とまらない。
告白、しとけば良かったなあ。怯えないで高1の時に。フラれたってナンボかマシだったじゃないか。何も言えないまま失恋するよりは・・。

「ううう・・ううううう〜・・・」
「・・奏?」

その時声がした。
カサ、と遠くで枯葉を踏む音が聞こえた。
ハッとした。チラッと植木越しに見る。あ、冴島くん・・!?

どうしよう。
こっち来る!え、なんで!?

どうしよう、どうしよう!?

その時僕はピーンと閃いた。
・・もしかして亜蘭くんとは付き合ってはいないかも可能性ってある?
告白するだけならあり!?

ざ、ざ、と近づく足音。
来た、来た・・!

ええい迷うな僕、今日のチャンス逃したら、僕はもう冴島くんに告白なんて出来ない!!
腕時計を見下ろす、気づけば12時間際、もうハロウィンナイトの時間はない!
死ぬほどの勇気を掻き集め、ざっと飛び出して僕は言った。

「!」
「冴島くん、す、好きです!あのっもし亜蘭くんと付き合ってなかったらっ!友達からでも良いので仲良くして欲しいです!!」

90度にお辞儀して手を差し出す。コンマ1秒が死ぬほど長く感じられた。お願い、なんか言って!出来れば色良い返事の方で・・!!

「・・あのねえ、俺に告白してどうすんのよ・・」

心底呆れ果てた声が聞こえた。見上げる。
拓也だった。

「え、あれ・・?」
「冴島は、あっち」

指さされた方を見るとちょっと遠くで冴島くんはうろうろしていた。背の高い冴島くんしか、植え込みから見えていなかった。

「寮に戻ってこないから探してたんだよ。冴島も一緒に。
ってか告白すんのにそのかぼちゃ頭は脱ぎなさいよ・・」
「・・わ、忘れてた・・」

そういえば今日ずっと被ったままだった。
ハアと拓也の巨大なため息が聞こえた。


「冴島ーーーー!!!」

おおきい声で拓也が冴島くんを呼んだ。

「かなで!!いたぞーーー!!!」
「わーーーっなに!?」

呼ばれた冴島くんがこっちに来る。
3人合流したところで。

「冴島、俺さっき奏に告白されたから!理由は奏から聞けよ、そんじゃな!」

そう言ってそそくさと拓也は走って帰って行った!

「ま、まってー!!拓也あああ!!!置いてかないでー!!!」

鬼みたいな顔した冴島くんとふたり、取り残されて・・!!





冴島くんと並んで座る。ひとけのない学園内のベンチ。心臓がどうどうバクバク言っていた。
僕はひととおり事情をゲロった。

「んで?ハロウィンナイトのあんないい加減な言い伝えを信じ込んでいたと。それで焦って告白しようと思ったけど相手間違えたと・・」

コク、と頷いた僕。かぼちゃ頭は脱いでいた。
初めてちゃんとおしゃべりするのがこんな尋問だなんて・・。ううう・・。

「だ、だって・・っ亜蘭くんと冴島くんが、なんか良い雰囲気だったから、焦ってつい・・!!」

拳をギュッと握っていった。
どうしようなんて言われるだろう。

「亜蘭は断った」

え・・

「俺も奏が好きだったよずっと。
一度付き合ったらずっと続くんだろう?ハロウィンナイトさまさまだな」

初めて見る照れた笑顔で、冴島くんは笑った。





end
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受けくんはちょっとポンコツくらいが好きだなって( ˊ̱˂˃ˋ̱ )




◆ぺちゃくちゃ

ピクシブでも色んな作品を出してきましたが、最近思うことがありました。
それは『広く浅く多くの人に刺さるコンテンツ、実は誰にも深く刺さってないんじゃないの説』です。


※これ自分の作品に対して思ってることで、別に他の作者さんを貶める意図は全くないです。
※頂いたブクマは全てありがたく思っています。ブクマくれた人を否定する意図も全くないです。



多くブクマはつくけど全然コメントつかない、賛否両方どちらの意見もつかない、でもブクマはつく。誰からも嫌われはしない作品。

一方ぶっちゃけブクマふるわないけど、何かしらの意見なりコメントがつく作品。好き嫌いが分かれる作品。



どっちも良いんだけど、どっちも全然アリなんだけど、でもより濃いファンを獲得したいなら後者なんじゃないかなって最近思った訳です。

誰からも嫌われないのと、誰からも特別好かれないって似てるとこあるなーって。

特別好かれないってのは、要は月夜じゃなくていいってことです)^o^(
『月夜の作品だったら読みたい』って言ってくれる固定読者さんを掴んでいかないと、これ多分淘汰されちゃうなーと。


実はつい最近、ピクシブで強めの長文罵倒メッセージもらって、大分落ち込んで、ツイッターでかまちょして、フォロワーさんに慰めてもらうというクソムーブかましたんですね。(フォロワーさんありがとうございました土下座)

で、日が経って改めて思ったんですけど、物議醸すくらいの作品の方が濃いファンも生まれたりするのかなーと。

私の作品は毒性強め(?)のものが多くて、『何で他の作家さんみたいにかわいくてホッコリしたの書けないんだろう』って割とずっと悩んでたんですけど、まあもうこれが作風なんだと割り切ろうって最近思いました。

これからも私の作品にはクズ野郎が出続けるし、大体受けくんが一回は可哀想な感じになります。

まあ分かりません、そんなこと言ってウケ狙いにいっちゃうかもですが!


ツイッターは鍵掛けちゃったので、何かあればこのメッセージに直接返信頂ければと思います。


それでは!

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