今回のテーマは『クールな攻めくんと健気な受けくんが付き合う前にモダモダする話』です!
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背の高いメガネの大好きな先輩を前に、秋葉はいつものセリフを繰り返した。
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「えーと、返却期限は2週間後です。延長する場合はこの届けを出していただければ出来ますので」
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了解とだけ行って本を受け取り、さっさと図書室のテーブルに向かってしまう先輩。
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その後ろ姿を名残惜しく見つめつつ、心のシャッターで今日も写真におさめた。
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秋葉の想い人・春樹は良く図書室に来て勉強をしていた。そしてしょっちゅう本を借りていく。
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頭良くてハンサムでクールで頭が良くて…あれ、頭良いって2回言ったっけ。
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図書委員の秋葉は、本の受け渡しをするときだけ自然に春樹とお喋りをすることが出来る。生きてて一番幸せな時間だった。
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春樹が借りた本は、後からこっそり秋葉もチェックして読んでみたりした。内容が難しすぎて何も分からないが、春樹にほんのり近づけた気がして嬉しかった。
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それに同じ図書室という空間にいられるだけで、十分すぎる嬉しさを噛み締めてきた。
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しかし春樹は高3。あと半年程したら学園を卒業していなくなってしまう。秋葉は高1。
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それまで…それまでどうにかお近づきになりたい!そう闘志を燃やす秋葉。
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どうにか自然に話しかける手段はないかと、日夜考え続け、一つ思いついた案があった。
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『先輩、いつも勉強大変ですね。これ皆に配ってるんでるけど、良かったらどうですか?』
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とここで差し入れのチョコチップクッキーを渡す。自然だ。あまりにも自然。
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そのために何回もチョコチップクッキーを焼く練習をした。焼いては焼いては寮の相部屋の冬由(ふゆ)に押し付けていた。準備はOKだ。
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万を辞して今日!作戦決行をするつもりだった。作戦の都合上、皆にも配った。結構好評だった。
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そして今。 ドキドキしながらチョコチップクッキー入りの袋を持ち、やはり相当ドキドキしながら春樹に近づく。
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あとちょっと…という所で、お約束のごとく秋葉はつまづき、座っていた春樹に襲い掛かるようにぶつかった。
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ぶつかった衝撃でメガネは床に落ち、それを秋葉がこれまたお約束の如く踏んづけた。
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半泣きでとりあえずチョコチップクッキーを差し出してみた秋葉であった。
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図書室は飲食禁止なので、近くの売店のベンチに一緒に座っている。これってデートってことで良いよね?夢心地の秋葉だった。
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「あのっもし良ければっまた焼いてきますよ…!?」 「…ふーん、じゃあよろしく」
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若干そっぽ向きながらだけど、今確かに『よろしく』って言ったよね!?舞い上がる秋葉。嬉しすぎて空も飛べそうだった。神さまありがとう。生きてると良いことあるね…。
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「…ところであのさ。俺メガネ新しく買わないといけないんだけど」
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「あっ!お金もちろん払います!!いくらですか!?」
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……今度一緒に選んでくれない?俺、そういうのセンスないから」
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かみさま、まじ…?お賽銭箱に今度1万円入れます…そう誓った秋葉だった。
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「もちろんお供します!!!」 「あっそじゃあよろしく」
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ふいと立って去っていった超クールな背中に秋葉がハートを飛ばしていたのがバレたのか。
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途中でくる、と春樹は振り返った。ドキッとした秋葉。
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「そうだ待ち合わせ。今度の土曜の10時、寮の前。どう?」 「もちろん大丈夫ですっ!!!!!」
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ちょっと声がでかかった。苦笑して春樹は今度こそじゃあねと去って行った。
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寮の相部屋に帰れば、ルームメイトの夏緒(なつお)がウザ絡みをしてきた。チャラチャラしたイケメンで春樹とは真逆のタイプ。土日にしょっちゅうお泊まりデートでどっか出かける軽い奴。
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「ってかお前、メガネは?」 「割れた」 「スペアは」 「あるよ」
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引き出しにしまってあるメガネを掛ける。視界を取り戻した。
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さて…と鞄から残りのチョコチップクッキーを取り出す。買ってきたブラックコーヒーと一緒に食べ出す春樹。
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「どしたん、春樹。お前甘いモン全く食えないじゃん」 「もらった」 「誰に…もしかして図書委員のあの子か!?」
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無言で食べ進める春樹。甘さに時々ウッとなるものの、どうにかこうにか食べ終えた。
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もう夏緒がウザくてスルーしたかったが、そうもいかなかった。
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「そういえば夏緒。今度の土曜、ちょっと出かけるから寮の係の仕事変わってくれ」
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ハナの効く夏緒にアレコレ問い詰められ、結局秋葉と出かけることになった旨を吐かされた。
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テンション上がってゲラゲラ笑う夏緒を、イライラしながら無視した春樹であった。
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一方その頃。いつも通り相部屋の冬由に恋の進展を報告していた秋葉。
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「どどどうしよう!?先輩のメガネ壊しちゃって、今度先輩と一緒に新しいの買いに行くことになった!!!!」 「良かったじゃん」
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「でね、週末あのおっきい駅んとこまで行って、買い物することになったんだよ!デートって思っていいよね!?」 「良いんじゃない」
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「ねえー!冬由ちゃんと聞いてよおお」 「聞いてるってば」
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「んで?デートするならカッコいいとこ見せないといけないんじゃない、秋葉」 「ううっ!カッコいいとこ…カッコいいとこ…!?」
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う〜んう〜んと頭を悩ます秋葉を横目に、冬由は携帯をいじり続けた。
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「スターパックスでスマートに新作注文したら良いんじゃない!?先輩の分も僕が一緒に!!メガネ壊したお詫びっていって!!ね、冬由、どう!?」
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脱力した冬由。お前なあカッコよくってのはそう言う意味じゃなくてもっとこう色気ある策はないんか…と一瞬アレコレ思いつつ。
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「あ、そういえばスタパで栗の新作ラテ出るらしいぜ。それにすれば」
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春樹との外出当日。寮の門のところで待ち合わせることになっていた秋葉。幸いなことに秋晴れで良い感じ。ドキドキが止まらなかった。
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昨日、冬由を深夜2時まで付き合わせてファッションショーを繰り広げていた。
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面白半分に付き合っていた冬由だったがいい加減眠くなってきたので『これにしろ』とある服を押し付けた。
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体育祭で応援団やった冬由が着たガチェピンの着ぐるみだった。
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仕方ないのでひとりウンウン唸って、ピンクチェックのシャツにジーンズにした。これで良かったかな…??ピンクってかわいすぎ?でもピンクが好きな秋葉だった。
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そんなこんなで今日。待ち合わせ場所でソワソワして待っていると、信じられないイケメンに声を掛けられた。あ、父兄の方かな?
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「あ、こんにちは。学校の入り口ならあっちですよ」 「??一緒に今日出かけるんでしょ?」 「……?…!…!?」
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春樹だった。コンタクトにして、前髪をワックスか何かで上げている。柔らかそうなカーディガン羽織ってる。かっこよさが天元突破していてクラクラしてきた。寝不足だったし。
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『うわあ〜先輩カッコいいですね!』とか何とか、うまいこと先輩を褒めたいのに言葉がうまく出てこない。
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ほんのり不安気な春樹を前に、コクコク頷く。そして絞り出した。いわなきゃ、ホラ気のきいた一言を…!
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春樹がひとしきり笑い終えるまで結構な時間を要した。普段クールな春樹がこんなに爆笑する姿、一体学園の誰が見れただろう。
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メガネ屋で新しいメガネも無事買えた。春樹のイメージ似合うシャープなデザインのやつを一生懸命春樹が選んだのだ。秋葉が選んだやつをそのまま採用した春樹だった。
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ここで真っ直ぐ帰るわけには行かない。何度もシミュレーションしたセリフを思い切って発した。
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「せ、せんぱい!!ところで、スタパに行かなきゃいけない気持ちじゃないですか!?」
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またも変なことを言ってしまった。『先輩、この後スタパ行きません?』って言いたかっただけなのに。耳までか〜っと赤くなる秋葉を見下ろす春樹。
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コク、と秋葉は頷いた。 穴を掘って自分が埋まりたかった。
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訪れたスタパ。今度こそ!間違えないぞ!!意気込む秋葉。
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「せんぱいっ、そういえば新しいメニューあるみたいですよ!?僕、せんぱいも分も頼みますっメガネのお詫びです!」
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「そう?別に気を使わなくて良いけどね。 まあじゃあ頼むよ。俺ホットな」
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「わかりました!!あっ先輩座っててください!僕持っていくので!」
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すごい、僕って結構やるじゃないの。失った自信がちょっとまた生えてきた。
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じゃあよろしくと去っていく春樹。後ろ姿がやっぱりかあっこいい…。
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うっとりしてたら、店員さんに呼ばれてしまった。あっといけない。
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「えっと、えっとー!この栗のラテ、ホットでふたつ、おねがいします!!」
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え、サイズ…?どうしよう、おっきいの、小さいの?何がベスト?ケチしてると思われたくない!
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レジでアセアセしてたら、後ろ結構並んでることに気づいた。やばい。
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渡されたのはパフェか?くらいの大きさのカップ。スタパが誇る最大サイズ、590ミリであった。
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神妙な顔でトレーに乗せて運んでくるちんまりした秋葉と、その飲み物のあまりの巨大さとの対比に春樹はまた爆笑した。
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「うう…飲みきれない…ううう…」 「まあ無理するなよ」
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苦笑した春樹。自分の分は涼しい顔をして飲み干していた。
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他愛もない話をした。ゆっくりふたりでお話しできる日が来るなんて思っても見なかった秋葉。
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ひとつひとつの会話を心のレコーダーに丁寧に録音…出来たら良かったのに。きっと日を追うごとに少しずつ少しぜつ不鮮明になっていくんだろうな。そう思うと寂しかった。
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「それ持ち帰ってあとでゆっくり飲めば?ちょっと待ってろ」
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春樹は秋葉の飲みかけのラテを持って立ち上がりレジまで行った。
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「はい袋。ついでにケーキも買っといたからな。同室の奴と食えば」
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甘党の秋葉はぱああ…っ!と笑顔になった。餌付けされている動物の顔に、ちょっと似ていたかもしれない。
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楽しいひと時はあっという間で、寮の前まで帰ってきてしまった秋葉。
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「せんぱいっぼ、僕、今日はお世話になりました!!た、楽しかったです!!!あとメガネすいませんでした!!それじゃ失礼します!」 「あっおい待てよ」
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かあっと耳まで赤くして、秋葉はなんか居た堪れなくて自室まで走って帰った。
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相部屋に戻るなり、冬由に今日の流れを報告していた秋葉。その一方、春樹は何も夏緒に語ることなくさっさとベッドに入って寝る振りをした。
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頭から布団をかぶって、今日の秋葉の全ての天然発言と天然行動を思い出していた。記憶力が良くて良かった。一生忘れない。ただひたすらに幸せな気持ちだった。
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あの子、天使か?顔は普通だが、天然さが好ましかった。良い意味で秋葉はこどもだ。悪意も汚れもなにもない。そんなところがまた良かった。
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照れると耳どころか首まで真っ赤になるんだよなあ。最高だなあ…。
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こんな幸せなきもちはひとりじめしたかった。誰にもシェアなんてするものか。
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「なあ〜春樹い今日の話俺にも聞かせろよお」 いきなり布団めくってきたデリカシーのない夏緒をうるせえと締め出した。
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「あ、先輩。この間はどうもありがとうございました」
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たまたますれ違った廊下で、春樹にすすと寄って行った秋葉。機嫌良く話す春樹。
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そんな雑談のさなか、秋葉が抱えていた本からひらりと何か足元に落ちてきた。
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何だか慌てふためく秋葉。何だ?と思いつつ見てみる。
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スタパのレシートだった。新発売の栗のラテ2つ。日付はふたりでこの前出かけた時のものだった。しおりのすみにボールペンでピースサインが描かれている。ご丁寧に周囲をマスキングテープで貼って破れない様にしてあった。
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春樹が何か言う前に、秋葉はレシートをひったくった。
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それじゃ失礼します!と言って逃げる様に帰っていった。
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自分の寮の部屋に向かって歩きだしつつ、何だか頬が緩んでしまいそうになるのを、何とか耐えていた。
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下級生達がこんにちは、と挨拶して通り過ぎていくのを涼しい顔で返事する。
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そして誰もいない階段に差し掛かったところで、我慢出来ずにくううと破顔した。
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本好きの秋葉のブレザーのポケットからしおりが2個ほど頭を出してたのを春樹は見逃していなかったからだ。
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秋葉の去り際の後ろ姿をひたすら思い出す。あの可愛らしいことといったらなかったのだ。
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期待しても良いんだろうかなんて、柄にもなくソワソワしていた。
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「どうしよう!?せせせ先輩にこのレシート落としたところ見られた!!!!」
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秋葉は寮の自室に帰るや否や、漫画を読んでいた冬由に泣きついていた。
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「だからそういうの辞めとけって言ったじゃん重いわ」 「だってええええ」 「まあバレてないんじゃない?」 「そうかな!?だよね!?バレてないよね!?」 「うんうん」
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不安すぎて、適当すぎる冬由のセリフにすら安堵を感じた秋葉なのであった。
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と、ここまで良い感じの春樹と秋葉だったが、それ以上なかなか進展しなかった。
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お互い照れてしまい、一歩踏み出せないままでいたまま、1ヶ月が過ぎる頃。
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面白おかしく春樹をウォッチングしていた夏緒だったが、チンタラとしてまったく進展しないので段々苛々してきていた。クールな顔の下で恋愛感情燃え盛ってるくせに。男ならもっとテンポよくいかんかい。
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ある日の図書室。タイミングを見計らって夏緒は秋葉に声をかけた。他にたまたま人がいなかった。
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「ねえねえ秋葉くん。ちょっと良い?」 「あっはい、何でしょう」
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こっちこっちと呼びつける。子犬の様に寄っていく秋葉。
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「俺、暇しててさあ。ちょっと付き合ってくんない?」 「え、何にですか?」
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こういうことだよ、と言って夏緒がキスしかけたその時。
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苛立ちを隠さない冷たい声。大好きな人のそんな声に秋葉は半泣きだった。
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「あのっ違くて!!!」 「もういい、夏緒んとこ帰れ!」
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振り向いてキレた春樹の剣幕にビクウとした秋葉。しかし最大の勇気を振り絞って春樹に抱きついた。
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「夏緒っ先輩には揶揄われただけですっ!今日初めて喋ったくらい、ですよ!!!」 「…それ嘘だったら許さないぜ」
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「ホント、です!!僕がこういうことしたいって思ってるの、春樹先輩だけです」
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春樹のネクタイをグイと引っ張って、秋葉は生まれて初めてキスをした。精一杯背伸びして。
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秋葉の報告を興味なさげに冬由は流していた。あれこれぺちゃくちゃ喋りたがる秋葉。
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「…ってかさ。春樹先輩の部屋に遊びに行ってくれば。そんで今日はごゆるりと泊まってくれば〜?」 「ななな何言ってんの冬由!?」
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とか何とか顔を真っ赤にしながら色々準備していそいそ春樹の部屋に飛んでった秋葉。
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やれやれ。ルームメイトの夏緒先輩のこと忘れてんのかアイツ。まあ良いけど。
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スマホでぽちぽちメッセージを打つ冬由。 5分ほどして部屋を現れたのは夏緒。
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「やっとくっつきましたね」 「俺に感謝して欲しいよなあ」
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「ところで秋葉にキスしようとしたって…夏緒先輩?」 「芝居だろおそんな怒るなって」
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「ホラ、二人がくっついたおかげで俺たちもこうやって寮でイチャイチャ出来る訳だし、な?」 「まあ確かにこれからは、休みの度に外でいちゃつける場所探す手間省けますもんね」
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「俺から告白するつもりだったのに」 「今からでも良いですよ?」 「…あー、その」
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秋葉がかわいく笑えば笑うほど、春樹はドキドキが勝って好きだと言えないままでいた。
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春樹がハッキリ好きだと告げたのは、ふたりの最初の夜が終わる頃。
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ちゃっかりくっついてた夏緒と冬由でした!笑( ´∀`)
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ちなみに春樹が甘いモノ食べれないことがバレるのは、この先5年後です。
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バレンタインデーも誕生日も、秋葉の手作りスイーツを頑張って食べ切る春樹。
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ある時、周囲の女性からもらった甘いお菓子の差し入れをこっそり捨ててることがバレ、実は甘いモノNGなことが秋葉にバレます。
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ところでわたし、実はXジャパンのトシさんのファンなんですね( ´∀`)あの歌声が最高にロックでカッコいいと思います。
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とは言ってもにわかみたいなもんです。ファンを名乗るにはまだ色々浅いと思います(^^;)
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で、ちょっと前にトシさんが地方のイベントに来てくださる機会があったんですね。
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それで念願の生歌を聞くことが出来たんですよ!!!!もうね、最高ですよ。
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歌がうまいんだ。当たり前だし語彙力もどっかいっちゃったけど。さいこう!!!トシさんの歌声って響くものがあります。
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それに歌の合間のトークの時も謙虚で丁寧で物腰柔らかいし。ステキです。
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ってかね。ご本人を直接拝見して『ホントに地球に存在してるんだ…』って思いましたね。
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いや普段交わることのない世界の中で生きてる方なのでね。別の次元に住んでいらっしゃる様に錯覚しちゃうんですね。でもいるんですよ。この同じ地上の上に。
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何かコメント等ありましたらこのメールに直接返信、もしくはLINEにてお返事頂ければと思います。
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※メールに返信するとメーラーデーモンのエラーが出る件、修正しました。
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