こんにちは!月夜です。




今回もメルマガをお送りします。

前回はお題箱に回答いただいた皆さんありがとうございました!

メッセージの個別のお返事はツイッターでやっています♪
今回のメルマガは頂いたお題から作りました。

それではどうぞ〜!

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僕はものすごく勇気を出して駿に切り出した。

「ごめん、実は今月いっぱいでマネージャー辞めるんだ。今月には部屋も出ていくから」
「・・・」



相変わらず感情の見えないクールな瞳が僕をただじっと見つめた。
中学時代に美貌故にスカウトされて以来ずっとアイドルをやっている駿。



「その、今までありがとう。もう1人で暮らせるよね?家電の使い方、このノートにまとめておいたから・・」
「・・・」



高校生になって東京に上京すると同時に僕がマネージャーとしてお世話係としてずっと一緒に暮らしてきた。平凡な僕だけど、この身に有り余るラッキーだった。



「僕がいなくなったからって、はっちゃけたらダメだからね?」
「・・・」



芸能人に恋愛はご法度。キャバクラなんてもってのほか。
若い盛りの駿の欲を一身に受け止め続けたのも僕だった。
恋人なんて甘い関係じゃない。割り切った関係。



「もう、駿!良い加減返事は・・!?」
「・・分かった。
・・・。」
「えっそれだけ!?」



あまりにアッサリ言った駿に拍子抜けして僕はガクッとうなだれた。
引き止めるとかないんだ。

「・・ま、最後までクールな君らしかったね、はは・・。今までありがとね、残り僅かだけどよろしくね」

駿はただ頷いた。
この子には感情ってものが、まるでない。




『ほんとうの気持ち』




段ボールに私物を詰めていく。引越し作業を進める僕を駿は何故か観察しに来ていた。

「・・何でマネージャー辞めんの」
「今聞くのかよ。・・実家で家業継ぐことになったの」

半分本当で半分ウソだった。父さんの持病が悪化してきたのと、僕の片想い病が悪化してきたから・・。



「ふーん・・これ差し入れ」
「うわっ!?」

僕の首に突如当てられた、みかん味のアイス。

『駿が僕の好きなアイスを覚えて買っておいてくれた』という事実だけで浮足立ってしまうほど、僕はこの子に恋してた。7歳も年下のこの彼に。



「引っ越すまでは今まで通り俺の部屋で寝んでしょ?」
「え・・あ、いや・・別々に寝よかなって・・ソファで寝るし・・」

身体だけの関係、そう割り切っていたはずなのに限界が来ていた。これ以上駿を好きになりたくなかった。

「・・あっそ」
それだけ言って駿は去って行った。ほらね、あいつ全然僕に興味ないし。




駿の所属するアイドルグループのDVDだのCDだのを箱にしまっていく。
あんなに感情がない駿だけど、アイドルは出来ていた。本当は感情ないくせに、人前では感情あるフリが上手かった。

だからSNSや雑誌だと駿は『感情豊かな子』として人気だ。

あ、懐かしい。これデビューしたての時のやつ。
ジャケットの駿はまだほんの少しあどけなさの残る顔でかわいく笑っている。デビュー出来て僕も本当に嬉しかったっけな。

もう身近で活躍を見ることはないんだな。

「・・・」
僕は感傷的な気持ちも一緒に段ボールにしまいこんだ。





翌日。早朝にリビングに行ったら既に駿がソファにいてビックリした。朝弱い駿。僕より早く起きたことなんかない。

「わっおはよう、駿」
「・・ねむい・・昨日眠れなくて・・」
「え!?」
5分で寝落ちする駿が珍しかった。

その日は撮影の合間にしきりにあくびをしていた。





引き継ぎをして色んな人に挨拶をして。アイドルグループの子達には残念がられてしまったけれど、『今までありがとう』なんて書かれた色紙をもらってうっかり泣いた。

大体皆ギッシリメッセージ書いてくれてるのに、駿のメッセージ欄だけは『風邪ひくなよ』のみでそれもまた駿らしく、それはそれでちょっと泣いた。





バタバタと慌ただしく日は過ぎた。

日を追うごとに片付いていく部屋。
空間がポッカリ開いていく。

・・ここにはいずれ別の誰かが住むんだろうか。そう思うと苦しかった。



ある日、駿がオフの日の夕食時。
駿の好物フルコースを出していた。

顔いろ一つかえずに頬張る駿。チラと部屋を見渡して言った。

「・・随分片付いたな」

寂しい、とかあるかな?とドキドキして待ってたら。

「おかわり」

茶碗を差し出されて、それで会話は終わった。

僕だけが駿を好きで、駿は僕に1ミリの興味すらない。離れようとすればするほどそれがよく分かって、僕は尚苦しくなった。





引越しが間近に迫ったある日。
駿は言った。

「最近俺が眠れない理由がようやく分かった。嘉穂を抱きしめて寝ていないからだ」
「え・・」

ドキッとした。それって・・え・・

「嘉穂がいると布団があったまって良かったんだ」
「・・!」



湯たんぽでも抱いていろ、と突き放せないのは惚れた欲目だった。





巨大でフカフカのベッドにふたり潜る。
僕は駿に後ろから抱きしめられていた。

「これこれ・・もう眠くなってきた・・」
「あっそ・・」

割り切った関係、とか思ってたけど違った?
僕は君にとってただの湯たんぽだったのかい・・?
ほろ・・とこぼれた涙を枕が優しく吸い取った。

「・・嘉穂の地元、遊びに行くから」

ポツと駿は言った。耳を疑った。

「え!?いや、その、パニックになっちゃうから良いよ」

アイドルが僕の地元になんか降臨したらエライことになる。そんなことされたら期待してしまうし。

それに・・

「実は地元帰ったらお見合いするんだ。その、お見合いしてみて問題なければ結婚の方向でって先方からも言われてて・・」
「・・ふうん」



やっとの思いで言った僕の告白。
相当ドキドキしながら駿の二の句を待ったが、ふうんのひと言だけだった。
そして駿は直に寝息を立てて寝始めた。

・・もしかして、なんて想いは霧散した。
自分が心底恥ずかしかった。





引越し当日。
駿が無理やり休みを取ってくれて、積荷作業を手伝ってくれた。
段ボールを積み終わったトラック。エンジン音が鳴っている。

「それじゃ」

一緒に住んでいた部屋の合鍵を駿に渡した。

「・・元気でね」
「・・・」

何も言わない駿。いつも通りの美貌、いつも通りのクールな瞳が僕をただただ見つめていた。

・・・。

最後まで何もなし、か。
駿の特別には最後までなれなかったな。

いや、僕らは結局アイドルとただのマネージャー。ここで感傷的になるなんて馬鹿げてる。



「陰ながらこれからもずっと応援してるから!CDもDVDも全部買うよ。
君の出演するものは全部僕の宝物にするから。
じゃあね!」

背を向けて立ち去ろうとした時。

長身が僕をタタと追い抜いてトラックの運転手さんに話しかけた。

「すみません引越しやっぱり中止になりました。これ引越し代。割増するんでこれで許してください」

駿は尻ポケットから財布を取り出すと、大量のお札を勝手に渡してしまった!





また部屋に大量に積み戻された段ボールを前に、駿は言った。

「俺、嘉穂が居なくなるのがイヤだ。ずっと俺のマネージャーでいろ。お見合いなんかするな。他の女のモノになるなよ。俺は最近イライラして眠れない。食欲もない。嘉穂が作る飯以外何も美味くない。嘉穂のことばかり考えて胸が苦しくなっている。俺は嘉穂とずっと暮らしたい。嘉穂じゃないとダメだ。
・・こんなの生まれて初めてだ。これは何だ?俺はどうしちまったんだろう?」



そんな風に必死に縋られて僕はクラクラした。
だってそれって・・



「・・それは恋愛感情ってやつでしょうよ・・
あと独占欲・・」

駿は一瞬目を見開くと、見たことのない笑顔でぱああっと笑い・・
「これが噂のヤツか!」

大層嬉しそうに僕を抱きしめた。





end

ーーーーーーーーーーーー

受けくんとの別離をきっかけに、本当の気持ちに気づいた・・いや感情が芽生えた?攻め君のお話でした( ^ω^ )

感情が死んでる攻めくんて良いですよね。
目が死んでると尚良い(どんな性癖?)




◆リクエスト話

前回のメルマガでピクシブのリクエスト受けたよ〜という話をしたんですが、ご依頼主さまから作品を限定公開→全体公開に変更してOK!という許可を頂きました( ´∀`)

(ありがとうございます!)

『大っ嫌いなあいつから番の指名』

レビューコメントも公開OKとのことだったので、掲載しますね↓

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こんなに早く!!作品を書いて下さり、びっくりするとともに、とても嬉しかったです。ありがとうございました。

さすが!!月夜の晩にさんの作品😭✨✨✨
めちゃくちゃ良かったです❤️❤️❤️

私の萌ツボ満載の「大っ嫌いなあいつから番の指名」狂喜乱舞しながら、一文字一文字大切に読ませていただきました。今更ながら王道学園にハマっているので、一際贅沢なひと時となりました。

拙い説明であったにも関わらず、ここまでリクエスト通りに書いてくださるとは!!(中略)

今作に限らず、月夜の晩にさんの作品がとても好きです。構成が面白いのはもちろん、文章が読みやすくて、スッと心に溶けていくように伝わってきて、月夜ワールドに触れるたびに至福の時を過ごさせていただいています。

今回は私のワガママリクエストにお応え下さり、心より感謝しております。
今後も陰ながら応援させていただきます。本当にありがとうございました✨✨✨

ーーーーーーーーーここまで

ちなみに私は褒められると木に登ってしまうタイプの人間なので、いま木のてっぺんにいます。木のてっぺんからこのメルマガを配信しています。

冗談はさておき『大嫌いな奴が番』というのが萌ポイントということだったので、その様に書かせて頂きました。

萌えの形は十人十色!楽しく書かせて頂きました♪

ピクシブリクエストはピンポイントのニーズが聞けるのが良いですね!
それに誰かひとりのために書いた作品というのは、他の同じ趣向の人にも刺さったりします。
なのできっと他の人にも楽しんで貰えるんじゃないかなと思っています♪





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