お題箱で『前回の続きで、溺愛攻めになるかもしれない攻め視点で』と頂きました。
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ただすみません、なぜか無意識に途中まで受けくん視点で書いてしまったので、後半から攻めくん視点に変わります。(すみません・・)
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辞めるやめる詐欺で、結局マネージャーを辞めなかった僕。
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今日は雑誌の収録でメンバーと来ていて、控室で待機中。もちろん駿も一緒。
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ヘアメイクが終わってトスと僕の隣に座ってきた駿。相変わらず顔が良い。ヘアメイクすると尚更で、僕は今更ながらドキドキしている。
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割りかし大きい駿の声に、僕はヒソヒソと返す。気づいて。
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「昨日は加減してやれなくてごめんな。今日は移動中ロケバスで寝ろ」
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心配そうに眉根を寄せている。感情が沸いた駿。それはありがたいんだけどさ。
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アイドルグループの他のメンバー、賢くんに割り込まれてドキッとした。
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「え!?あ、全然!その・・ちょこっと仕事で夜更かししちゃっただけだからさ!?」
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「嘉穂さん仕事熱心だからなあ倒れちゃいますよ?」 「いやそんなあ」
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ムッとした様子の駿の声。椅子の下で駿の足をトンと蹴った。気づいて・・!
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「え、仕事じゃない?何かハマってるドラマとか?」 「う、ううんそうねえ・・!?」
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どうしよう、最近海外で流行ってるあのゾンビドラマ、なんて名前だっけ!?あああ誤魔化せえええ!
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ヤバい感じにイライラの募ってきている模様の駿。うっめんどくさいよお・・!なによと振り返ったら、普通にキスされた。
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付き合ってるの内緒にしようねって再三言っておいたのに、早速バレた。
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しょんぼりした様子で駿が言うのを、ぷんぷんと無視した。
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撮影だのロケだの終わって僕らの家で。僕はシャワー上がりでもまだ怒っていた。無言で麦茶をコップに注いだ。
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「!・・に、二杯目いるか!?」 「何でだよいらんわ」 「そうか・・」
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機嫌の取り方がちょっぴりズレている駿にガクッとしつつ、内心ちょっと笑ってしまっていたけれど。
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「・・内緒にしようねって言ったよね?何で約束守ってくれないんだよ」 「『付き合ってる』とは俺は言っていない」
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ぷいとそっぽを向いて屁理屈を言った駿にカチキレた。
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「人前でキスしたらバレるだろお!?君は人間何年目だああああ!」
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「・・賢と楽しそうに喋ってた。嘉穂が悪い」 「あれは世間話!!!」
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「賢と世間話をする必要はない。する時は俺を通せ」 「なっ・・え、は・・!?」
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マネージャーがアイドルを通して世間話するって何?普通逆だろ・・!?
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でも無表情な駿が会話を中継してると思うと面白すぎて、ごめんなんだけどめちゃくちゃ笑ってしまった。
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何で笑われてるのかあんまりよく分かっていない駿が、愛おしかった。
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「・・まあとにかくだな。そうそう、その笑顔だ。嘉穂はそうやって機嫌良くしていろ」
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丸め込まれて抱きしめられてキスされた。間近で見る美貌にカ〜ッとなってしまう単純な僕。
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何かなあ・・もう・・駿そうやって顔の良さで誤魔化すの辞めろよ・・まあ誤魔化されてるのは僕だけどさあ・・。
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ベッドでふたり。僕は後ろから僕を抱きしめてくる駿に伝えた。
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「・・駿。アイドルに恋愛はご法度って言ったろ?バレたら大変なんだから。もう人前で僕にくっついたらダメだぞ」
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「努力じゃダメなんだよお。絶対だよ。分かったかい?」
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・・スピーと聞こえた寝息は狸寝入りなのかガチなやつなのか。僕と一緒だと寝るの早いからら、駿は。やれやれ・・。
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翌日からはちゃんと自身を抑えてくれる様になった駿に、僕は安心してたんだけど。
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ある時イベントで、人手が足りず僕もイベントの運営を手伝っていた時。
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ひと気のない廊下で、たまたま女の子のファンの子に僕は運悪く捕まりなんやかんや駿のことで色々聞かれてしまっていた。
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うわー、この子。僕が一人になるまでつけてたっぽい。
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個人的なことは答えられないと何度言っても、割と力強く袖を引っ張られて離してもらえなかった。ああ、どうしよう。女の子相手に力づくで引き剥がしたらヤバいし。
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「私、本当にファンなんです!マネージャーさん、あなたの連絡先教えてください!」
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やばいなあこの子、本当参った・・!なんて心底困っていた時。
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地を這う様な声が聞こえた。やっばあああ・・今このタイミングで地球で一番会いたくない人が現れたっぽい・・。
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「嘉穂、何してる。時間だ。さっさとこっちへ来い。・・それと君ね、 会場はあっちだぜ」
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苛立ちマックスで強引に引き摺られていき、僕は解放された。ありがとう駿。ただその、手を握るのは心底今はやめて欲しかったけど、到底それを言える雰囲気ではなかった。
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ふと振り返ったら、女の子は殺しそうな目で僕を見ていた。やばあ、絶対恨まれてるやつ・・。
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長い長い廊下を曲がり、関係者以外立ち入り禁止のエリアに入ってそして誰もいない会議室で。
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バン!と壁を叩く音が耳をつんざいた。駿に壁ドンをされている。いやそんな甘いもんじゃなかった。これはもう恐喝だった。
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怒りで目をギラギラさせた駿。こんな感情を露わにした駿を初めて見た。
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「あれは何だ!!」 「駿、落ち着いて!!」 「ファンの女に手を出すなんて随分じゃないか嘉穂。人には恋愛禁止だの何だの言っておいて!」 「違うって!」 「嘘だ!」
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聞く耳持たない駿の襟首をガッと引っ張ってキスをして黙らせた。
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「あの子は駿のファン。駿の個人情報聞きたいから僕の連絡先教えろって言われてただけ」
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猜疑心99%みたいな瞳を向けられている。こんな独占欲強かったんだなあ、駿て。
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「僕には駿だけだよ」 「・・本当だろうな」 「ホント!!あとで僕の携帯チェックして良いから」 「・・・・・・なら良いだろう」
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イベントが終わって家で、僕らは喧嘩(?)した分、甘い夜を過ごした。
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それから数日後。目を覆うような芸能ニュースが出た。
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あの日の駿が、僕の手を引いてく写真がネットにばら撒かれていた。熱愛だのなんだのって。
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頭を抱えてしばらく放心してたけど、いやいや!それどころじゃない!!!と立ち上がった。
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僕は社長に訳を話して(でも駿と付き合ってることは内緒。メンバーにも念入りに内緒にしてくれと頼んである)、速攻謝罪文を出した。
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でもそれで良かったと思う。ドタバタと消えるように僕は立ち去った。
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芸能レポーターに追い回されていたこともあり、駿には連絡出来ないでいた。
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連絡は何一つ返ってこないまま、時が過ぎて行く。家から出るなと言われ、嘉穂を探しに行くこともままならない。そのくせこれからツアーもドームもある。
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・・そんな晩に思い出すのは、前に嘉穂に聞いたあのセリフ。
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『実は地元帰ったらお見合いするんだ。その、お見合いしてみて問題なければ結婚の方向でって先方からも言われてて』
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嘉穂が今どこにいるのか分からないが、目ぼしいのは実家だ。そして嘉穂は元々見合いをしようとしていたんだから・・
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嘉穂のいないベッドはやっぱり寒い。嘉穂に触れたい。
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俺をこんな風に変えたのは嘉穂だ。 責任を取れ、嘉穂・・。
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嘉穂のいない生活は虚しい。飯は味がしないので興味を失った。生きていくためのただのガソリン。俺はまた感情をなくして過ごした。元通りの俺だ。生まれた時からの。
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仮面を貼り付けて笑顔を振りまいて過ごす。莫大な給料を貰って、それだけ。前はそれで別に良いと思っていたけれど。
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俺のコンサートを見て『良かったよお』と感激してくれる嘉穂もいなければ、『見てみて駿のうちわ作った!』って特製うちわを見せにくる嘉穂も、もういない。
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あれが俺にとっての幸せだった。 俺の幸せは金じゃなかったんだ。そう気づいた。
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だから皆に迷惑がかかると思って思い留まっていたが、ドームが終わったらこの仕事を辞めよう・・そう思い始めていた。
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「駿、お前そろそろここ辞めようなんて思ってないだろうな」
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「嘉穂さんだろ。いなくなっちゃって残念だったよな。せっかく駿を人間にしてくれたのに」 「・・・」 「寂しそうな顔した駿なんて俺初めて見るよ。嘉穂さんじゃないとダメなんだなあお前は」 「・・・」
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「でも辞めるなって言っても、どうせ辞めるんだろ?駿」
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「・・でもさ、俺は辞めないで欲しい。ってことでな、辞めない変わりの交換条件てことで嘉穂さんの居場所、知りたくない?」
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賢の胸ぐらを掴んで締め上げた。しばらく揉みあって、離せと振り解かれた。
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「嘉穂さんがお前の様子を気にして、俺にはずっと連絡来てたんだよ。絶対内緒にしてくれって言われたけど!駿が辞めるのは嘉穂さんも本望じゃないだろうからもうバラすぜ。居場所はな・・」
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俺は居場所を聞いて、即走り出した。電車を乗り継いで夜行バスに乗って・・。
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翌日。訪れたのは嘉穂の実家ではない、小さなちいさな漁村だった。何でそこにいるのかといえば、『心洗いたいから』らしい。賢によると。
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すみません、ちょっと抜けてきますと聞いた声は随分久しぶりで、俺は心に水が行き渡るのを感じていた。
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「嘉穂、戻ってこい」 「・・や、その、僕はもうマネージャーなんて・・」 「嘉穂がマネージャーをやる必要はない」 「うっ・・そ、そうだよね・・すいません・・」
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悲しそうに瞳を伏せた嘉穂。ズキと胸が痛んだ。好きな人の悲しい顔って哀しいんだな。
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「そうじゃなくてだな。俺、新しくマンションを買おうと思うんだ。そこに戻ってこいってことだ」 「え・・?」
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「都内の警備員常駐のマンション。買い物は全部ウチのスタッフが代行する。ジム付きマンションだ、自由に使え」
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「いや、でも僕がいたら迷惑になる・・」 「迷惑じゃない!!」
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「何で勝手に決めつける。俺の気持ちを無視するな」 「・・だって・・」 「俺に感情を植えたのは嘉穂だ。その嘉穂がいなくてどうする。俺を枯らす気か。俺がどうなっても良いのか」 「でも・・」
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でもでもと煮え切らない嘉穂に傷ついていた。 こんな感情も初めて。
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「嘉穂は俺が好きじゃないのか?」 「・・好きです・・」
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「じゃあ交換条件だ。嘉穂はこれからも俺を好きでいて良い代わりに、俺はこの間の熱愛報道を認める。嘉穂はもう一般人だ。そこまで追われない。これなら一緒にいれるだろ」
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なんて言ってるくせに、顔真っ赤にしてぽろ・・て涙をこぼした嘉穂にキスをした。
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これで嘉穂は逃げられない。でもそれで良いだろ、嘉穂。
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感情が死んでいた攻めくんに感情が芽生え、不器用なりに一生懸命人を愛する様を描いてみた、つもりっす・・!(^q^)
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最近はdollシリーズの亮×葵のIf番外編を書いています。破局する悲恋ストーリーっす。
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そういうの読んでみたいゾって以前要望頂いたので。7月あたりにnoteで出せると良いなあという感じです。またお知らせします( ^ω^ )
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ちなみに亮くんの関西弁キャラによって自分が今苦しめられてます笑
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関西ネイティブじゃないから分からないんだ( ;∀;)
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何かコメント等ありましたらこのメールに直接返信、もしくはLINEにてお返事頂ければと思います。
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※以前から『メールに返信するとメーラーデーモンのエラーが出て送れません』と報告頂いていたのですが、修正しましたので・・!
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