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先日大きな地震がありましたが、皆様大丈夫でしたでしょうか?
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コロナに地震と様々なことがありますが、早く元通りの日常が送れる様になることを祈るばかりです。
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さて、話は変わりまして今回もメルマガをお送りします。
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前回のメルマガアンケートにお答え頂いた皆様ありがとうございました!
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とりあえず今回は、1番票が多かった俺様S攻めで書いてみました。
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(他の選択肢希望でお答え頂いた方、今回はすみません!汗)
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ハッと目を覚ます。長いこと閉め切られたままのカーテンからうっすらと光が漏れている。朝が来たのだと分かった。
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僕を背後から抱きしめて眠る男。チラ・・と振り返ればその美しい男はまだ眠っている様だ。よし、今のうち・・。
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細心の注意を払ってその腕をどかす。更に、押さえつける様に僕の体にのっかっていた奴の脚もどける。
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よしここから脱出するぞ。忌々しい足枷をまずはどうにかしなきゃ。えっと・・ハサミを探して・・。
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ベッドをすり抜けようとしたところで、背後から突然腕を掴まれた。
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ヤバい、バレた、どうしよう!!!と内心真っ青で慌てた。
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そう優しい声音にハッとした。振り返ったら穏やかな瞳がこちらを見つめている。
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「今まで何で出てこなかったんだよ!!!うああああ!!」
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そう泣きついて、かつての様に優しく優しく抱きしめられて心底ホッとした。
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やっとハヤトが戻ってきてくれた、やっとここから出られる!!
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優しくて穏やかな表情を浮かべていたその端正な顔がニヒルに歪んでいく。
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「残念でしたぁ。俺、マサトだよ。ハヤトの声真似、上手かったでしょ」
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俺から逃げようとした罪、俺とハヤトを間違えた罪、俺よりハヤトを求めた罪・・
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そう言われて心底ゾワゾワした。冗談じゃない、こんな奴!
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コイツはちょっと前に突如現れ、僕とハヤトを引き裂いただけじゃなく、『俺のモノにする』って僕を監禁してきたヤバい奴。
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イラつくほどに良い香りのするオムライスだか何だかを作っているのを、恨めしい気持ちで見つめた。
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テーブルで、目の前に座ってふうふうとさも美味しそうに食べ始めたマサト。僕は椅子に拘束されていて、見ているだけだ。
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「はいアーン・・なんてな、しねえよ。お仕置き中なんだから」
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奴が言うお仕置きっていうのは、ご飯抜き水抜きっていう拷問みたいなつだった。
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朝の一件以来、何も口にしていない。今は昼の12時。
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お仕置きやめて欲しければ、今日こそ俺のモノになる決心をしろ、ただそう言っただけだろ。簡単なことだ」
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「誰がマサトなんか!いくらハヤトと同じ身体でもマサトなんか嫌だ!!!!」
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「あっそじゃあメシあげない。死ぬしかないね可哀想に。ざぁんねん」
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『屈服させてやる、絶対に』と内心思っているのがありありと伝わってきた。
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「・・ッ!大体何で僕なんだよ!・・ほ、他にも可愛い子もカッコいい男も、世の中、いっぱいいるだろ!!僕みたいな平凡な男じゃなくてさあ!!」
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やけくそで叫んだ。そうだ、僕はハヤトと付き合い、マサトは別の人間と付き合えば良いんだ!!
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「俺が夕貴を選んだ訳?ダサいくらい一途だからだよ」
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「夕貴ってハヤト大大大好きでさ。他のどんな奴に声かけられようが見向きもしない。 俺そういう超一途な子が好きなんだよね」
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まっすぐ見つめられて、初めてマサトからちゃんと告白めいた事を言われて迂闊にもドキンとした。しっかりしろ、僕!
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「そんな子はハヤトには勿体無い。だから取り上げて俺のモノにすることに決めた」
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「威勢良いねえ。まあそれもせいぜい今日で終わりだけどね」
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午後18時。この時間になってもマサトは何も与えてくれなかった。
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喉がカラカラなんて言葉じゃ言い表せないくらいに乾いていた。
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このままじゃ本当に死んでしまう。床に寝そべったまま僕は絞り出した。
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「じゃあ今言ってみな。ハヤトと別れて俺と付き合うって」
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ハヤトがこんなに好きなのに。でも・・背に腹は変えられなくて・・。
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「ハヤト・・ごめん・・僕、もう死んじゃいそう・・。マサトと、付き合うことにする・・」
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そう言った瞬間。ガバと僕に覆いかぶさる様にして、僕の瞳を覗き込んでマサトは言った。
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「本当だな?俺の目を見てちゃんと言ってみてよ。俺のモンになるって」
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両頬を大きな手で挟まれて、僕はじっとマサトの瞳を見て言った。
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「夕貴が、自分の意志で俺のモンになるって決めたぜ。ざまあハヤト!」
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ペットボトルの水を口移しで飲まされて、僕は不本意ながらマサトの口腔を貪った。
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干上がった喉が潤っていく、でもまだまだ足りない!!僕は気付けばマサトの膝に乗り上げていて、背を抱かれていた。
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ようやく水分を取り戻した身体は、理性を取り戻しつつあった。
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逃げようとする身体をマサトがキツく抱きしめてきた。苦しい。
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「おっとやっぱ辞めます、なんてナシだぜ。 んなこと言ったら埋めるからな」
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耳元で低い声で言われて心底ゾクゾクした。マサトならやりかねない。
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「・・だって・・。ハヤトとだって、まだしてないのに・・」
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夕貴が欲しがるものは何だってあげる、何だってしてやる。
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夕貴が夜中に落ち込むことがあれば何時だろうが飛んでって、朝まで抱きしめて・・なんてこともあったよなあ。
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そんで夕貴の気持ちを大事にしたい、とか言ってデートは手繋ぎだけとかさ。中学生かよ」
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「・・うるさい!ハヤトを馬鹿にするな!早く代われよ!!」
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「代わってどうなる!夕貴はもうハヤトのモンじゃないぜ。あーあ、がっかりしてるだろうなあハヤトは」
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「まあアイツは心の中の檻に閉じ込めたし、もう出てこれないけどね。 ・・俺だって10年閉じ込められたんだ、ハヤトには仕返ししてやる」
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マサトは俺の良心のかけらみたいな奴で、要は出来損ないさ。
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18歳の時にアイツが無理やり表に出てきたんだ。以来、我が物顔で生きてきやがって。許さねえ!」
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そんな。この人の本当の姿がマサトだっただなんて。 優しかったハヤト・・もう会えないの?
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「でももう俺は自分の人生を取り戻した。夕貴も手に入れた。もう手放さない」
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ぐるりと視界が反転した。白々しい蛍光灯の光を背負い、マサトがギラギラした瞳で見下ろしている。
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熱の篭った視線、雄そのものの雰囲気に僕は否応なしに飲み込まれていく。
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「ハヤトと夕貴が出会ってくれたおかげだな。 俺は夕貴に心底惚れて、お前を手に入れたい一心で出てこれた。・・感謝してるぜ本当」
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僕が大好きだったハヤトの顔と声で、獣の様に男は言う。
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このドキドキが恐怖なのか、胸の高鳴りなのか、もう分からない。
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ドスの聞いた怖い声。ハヤトはこんな言い方はしない。でも・・
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そう言ったものの、僕の中でぞくりと怪しい何かがうねるのを感じた。熱を帯びたそれが体の中を広がっていく。
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「本当は悪い気してない癖に。やっさしいハヤトじゃ物足りなかったんじゃねえの?」
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僕を見下ろす挑発的な黒い瞳。その奥でハヤトは『ここから出してくれ!』と喚いているのだろうか。
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見透かされたくなくて、僕は自分の瞳をギュッと閉じた。
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嫌味なほど優しい何かがそっと唇に触れて、それから嵐の様に僕を奪っていった。
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