こんにちは!月夜です。






今回のメルマガのテーマは、前回のアンケートで票が僅かに多かったこちらの内容です。↓

『異世界転生したら片思いしてた攻めくんがアイドルやってる世界線に来てしまい、マネージャーをやることになった受けくんの話』

#美形×平凡#ヤンキー攻め#両片想い#幼馴染

それではどうぞ!

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「おい、優里!起きろよ!」

キツめの声にビクッとして目を覚ます。

目前にはびっくりするような美男が。拓磨だった。拓磨が、立って動いている。
僕の幼馴染。中学に入ってヤンキーになってしまい少し疎遠になっていた僕の初恋の人、なんだけど・・

「頭打ったな、大丈夫か!?まったく階段から滑り落ちるだなんてしっかりしてくれよ」
「え、あ。ハイ、大丈夫です・・?」

手早く僕の体をチェックしていく拓磨に、
ちょっと、いやかなりドキドキしつつ彼を見上げる。

ヤンキー故金髪だった頭は、今は何故か茶髪で毛先が青。更に青いカラコンを入れた瞳はミステリアスで今にも吸い込まれてしまいそうだ。

それに服もカラフルでキラキラな衣装を着ていて・・。

「おし、じゃあすぐ来てくれ!スターライツのステージもうすぐ始まるぜ!頼むぞマネージャー!」
「!・・は、はい!」


ピンと来た。理解した。

どうやら僕は多分何かで死んで異世界転生し、片想いしていたヤンキーくんがアイドルをやってる世界線に来てしまったらしかった。
専属マネージャーとして。

・・イヤッッホウ!!!夢が叶った!!!





       『夢みたい』





バタバタと走っていって、僕はステージが始まるのを舞台袖から見守った。

スターライツは全部で5人。他の人たちももれなくイケメンで眩しかった。でも僕には拓磨・・たっくんが1番の推しメンだけど。

たっくんていうのは子供の頃の呼び名。教室では一ノ瀬君としか呼べなかったけど、ここは異世界なんだから良いんだ。




ライブが始まると、たっくんがリーダーとして挨拶をした。

「皆、今日は来てくれてサンキュウ!!!」

たっくんがそう言うと、ホールはキャアアアアア!!!と沸いた。

僕も沸きつつ、えったっくんそんなキャラだったっけ?ってちょっと笑ってしまった。

教室だとクールで、怖くて、超イケメンで近寄りがたい存在になっていたから。




東京ドームの数倍ある超巨大ホールにお客さんは満席。無数のペンライトが浮かぶ暗闇は宇宙みたいな広さだった。

そしてすごいのは広さだけじゃない。

ライブが実際に始まると釣り道具なしにドーム内をアイドルが空中浮遊して見せたり、
どこからともなく現れたキラキラの空飛ぶ列車のミニステージにアイドル達が乗ってパフォーマンスしたり・・

さすが異世界、そのステージは異次元の輝きを見せていた。



清々しい汗を飛ばしながら元気に歌って踊るたっくんは、あまりにも輝かしくて眩しくて。
僕は胸を打たれてしまい、何も言えずハンカチで口元を押さえた。たっくん・・




そんなライブの最中。

衣装チェンジに着替え室に現れたたっくんはすれ違いざまに僕の腰を一瞬抱いた。ヒエッ!?って見上げる。

「・・?どうした、優里」
「な、にも・・!?」

こっちのたっくんは随分フレンドリーらしかった。

早着替えを手伝う。何かキラキラした衣装を纏ったたっくんは、やっぱりカッコ良かった。
鏡の前でたっくんは言う。

「どう?良い男だろ」

僕はにこにこと、ウンと頷いた。

「惚れ直した?」

そのままキスされて、僕は持っていたライブの台本を落とした。

え・・?





正直そこからは、何も頭に入ってこないままライブは進行し、そして無事に終わった。
アンコールも終わり、メンバーはそれぞれのタクシーに乗って帰って行った。

残るは僕とたっくん。僕はどうすれば良いんだろ、えーと・・?

そう思っていたら突然肩を抱かれてヒエッとした。見上げたらたっくんだった。

「・・早く俺たちの家に帰りたいな」

ドキッとした。えっもしかして一緒に住んでる設定?マネージャー、まじで美味しすぎる。

「タクシー、俺が呼んでおいた。あと10分後くらいに来るから」
「う、うん・・」



玄関ホールの裏口で、たっくんと二人きり。僕はドキドキし過ぎて、心臓飛び出さないかを心配していた。

しかも肩を抱かれたまま、さらに指先をキュって握られて・・。

え・・?これってやっぱり・・?

ドキン、ドキンと最高潮に心臓が鼓動を打っている。

「ね、ねえ・・あの、僕さ、ちょっと頭打った衝撃で色々忘れちゃってるみたいなんだけど・・
僕らってその・・どういう・・関係・・?」

絞り出した。いわゆるカラダだけの関係、だなんて言われたらどうしよう。でも確認せずにいられなかったのだ。


「優里・・?覚えてないって、あ、まさか・・?」
突然ガッと肩を掴まれた。

「お前あっちから来た優里か!?」
「!?あっちって!?」

「俺がヤンキーしてて金髪の世界線から来たのかって聞いてんだよ!」
「そ・・そうだよ!!!たっくんも!?」

「ああそうだ!
・・なるほど、そういうことか。階段から落ちた時に優里は入れ替わったんだな。どうりで・・」

「え・・?」
「あ、いや・・。
俺もあっちから来たんだよ。優里よりちょっと先に。気づいたらアイドルだったからびっくりしたぜ」

「だ、だよねえ!?・・ヤンキーのたっくんがアイドルってえ・・!」
「いやお前も平然とマネージャーやってんじゃねえよ」

ケラケラ笑い合った。久しぶり、こんなの・・。何気ない会話が心底嬉しかった。

でもそんなことよりも・・。

「ね、でさ、僕らって結局こっちでどういう関係だったの・・?」
おそるおそる聞いた。
「・・この世界線だと、俺たちは恋人同士だったらしい。マネージャーとアイドル、極秘交際」

腰を抱かれたのもキスされたのも、そういうことだったのか。

悪戯に笑ってきたたっくんに、僕は死ぬほどドキドキしてた。だって、こんな平凡な僕がたっくんと付き合ってるって・・

「たっくん・・拓磨はさ、それで良かったの・・?その、僕なんかで・・」

少し躊躇って、たっくんは言った。

「・・ああ、もちろん。だって俺、お前のことがずっと好きだったんだから」
「・・え、ほ、本当・・?」

くわ、と体温があがるのが分かった。顔を上げた。真剣な瞳とバチと目が合った。


「そうだよ。優里は俺の初恋だった。
でも中学に上がったあたりから優里は離れていってしまったから何も俺は言えなくて・・。
好きだよ、優里。
・・教室でも病院でもずっと言えなかったけど、ここでなら本音が言えるな」

ははと照れくさそうにたっくんは笑った。

そんな。たっくんの口からそんな言葉を聞くことが出来る日が来るなんて。

「優里こそ俺で良いのか」

良いよ、たっくんだったら例えヤンキーでも怖くても普段近寄れなくても。
だってたっくんは話してみれば昔から何も変わっていなくて。

僕はただウンウンと頷いた。
涙で滲んで前が見えない。

「泣くなよ優里」

たっくんは笑って僕を抱きしめて、そっとキスをした。




唇を離すと何だかお互いちょっと気恥ずかしくて。

今何時だっけ、タクシーは?なんて時計の方に目をやった時。

暗闇にキラリと光るものを視界の隅で捉えた。

タクシーのライトかと思ったら、違った。

「・・拓磨!お前なんかがいるから俺は女に振られたんだ、死ね!」

建物の影から突如現れた不審な男は、長い刃物を拓磨に向けて猛然と走ってきた。

「危ない、拓磨!」

僕は拓磨を突き飛ばし、代わりに刺された。
「・・!!!」
ドクドクと溢れる血は止まらない。痛くて痛くて仕方ない。

「お・・っお前が飛び出てくるから・・!」
カラン!と包丁を落として不審者は全速力で逃げた。

「畜生、優里、優里!今医者を呼ぶから!!」

急速に目の前が暗くなっていく。これは死ぬなと直感した。

「おい、死ぬなよ!!」




良いんだ、たっくんのためなら僕は何でもするよ。
せっかく、せっかく、たっくんと結ばれたっていうのに悔しくて仕方ないけれど。

でもアイドルとして元気に生きてるたっくんがこの目で見れて、本当に良かった。
告白までしてもらえて、夢みたいだったよ、ありがとう。

「優里!!!く・・!
俺が元の世界に一緒に連れて帰ってやるから!あっちで待ってろ!!」

最後にそれだけ聞こえて、意識は途切れた。



***



パッと目を開けた。起き上がる。病室だった。
たっくんはベッドで眠ったまま。

ぐるりと周囲を見渡す。いつも通りの病室、いつもの院内カレンダー、古びた時計。
いつもの現実にいることを確認して肩を落とした。



「はは、また夢だったかあ・・」
美しい鼻梁の、美しい寝顔のたっくんを見下ろした。



たっくんは丁度1年前に起こしたバイクの事故以来、眠ったきり。おそらくこのまま目覚めないままだろうと医者達は言う。

日焼けして浅黒かった肌は随分白くなってしまったし、金髪だった髪はのびて随分根本が黒くなっている。



たっくんの手を握って側で眠ると、時おり元気な彼に夢で会えることがある。

「・・今日の夢はアイドル設定だったよ、たっくん。すごく元気いっぱいにたっくん動いてて、僕は変な奴に刺されてさ。随分リアルだった」

ぽた、と一粒涙がこぼれ落ちた。

「いつかたっくんと本当に異世界転生出来たらな、なんて。何でもするから、今度は絶対に僕が守るから。
・・たっくん、僕はずっと君のことが好きだったよ。たっくんはどう・・?」



たっくんの指先が、僕の手をほんの少しだけ握り返してくれた気がする。
けれど、それはきっと僕の願望がそう感じさせた勘違いなのだろう。


少し開けた窓から入った春の風が、優しく僕らの頬を撫でていった。






End


※補足

運命の悪戯で別の世界線に飛べたけど、
あっちで優里が死にそうになったから、拓磨が優里の魂を連れて現世に戻ってきた。

異世界での出来事を全部夢だったと思ってる受けくんと、
夢じゃないよ本当だよと言いたくても言えない攻めくん。
攻めくんはまた自由を失ってでも受けくんを助けたかった。

すれ違ったままのふたりの話はここで終わりますが、またいつか別の世界線にふたり飛んで今度こそ幸せになれると良いですね。


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次回は、『ワンコ系だと思ってた子が、実は俺様だったしそれに迫られて困る生徒指導の先生の話』です。



前回アンケートは票が割れて、こっちも結構人気だったので書くことにしました( ´∀`)


なので今回は次回メルマガアンケートないんですけど、良かったらコンビニオススメスイーツでも教えてもらえたら嬉しいです♪



執筆のお供にほぼ毎日セブンイレブンにおやつ買いに行ってるのですが、大体いつも同じようなもの買っちゃうので、新規開拓できたら嬉しいです。

ちなみによく食べるのはシュークリームです。



P.S.
そういえばピクシブで先日、ヤンデレ攻めの話書いたら結構ブクマ押して頂けたんですけど、皆さんもヤンデレお好きだったりしますか?

需要あるならメルマガでも扱いたいなと思います。

該当作品↓

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話
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それでは!


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