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それではさっそく1作品目をお送りします。

 

◆俺の溺愛を拒絶する幼馴染の話

俺の幼馴染はかわいい。世間一般的にはおそらく普通だが、俺には大層可愛く見えている。あの黒目がちな瞳がたまらん。
ずっとずうっと溺愛してきた。

家が隣で、2歳からの付き合いだ。
幼稚園からずっと一緒。

 

幼馴染への最初の告白は、確か俺が幼稚園の年少さんだった時だ。幼馴染の好物のハンバーグをタッパーに入れて、それと一緒に告白した。

幼稚園で飼っているウサギ小屋の前で。良い雰囲気は大事かなって思って。
そしたら返ってきた返事は『ごめんなさい』。
しかし1回フラれたくらいでメゲる想いではなかった。俺はその後も何度もアタックし続けた。

 

年中さんになっても、年長さんになっても。
そして小学校に入っても、中学生になっても!

俺たちが中学2年生になったある日。
俺は背も伸びて、雑誌のモデルやらない?と声を掛けられるくらいには成長していた。

放課後の誰もいない教室で、例年通り幼馴染に告白した時。

 

幼馴染がおもむろに『これ・・!』と手紙を渡してきたんだ。ラブレターキタと思って、俺は飛びついてその封を開けた。

中から出てきたのは、便箋に綴られた俺への熱い想い・・ではなく。
『溺愛拒否券 ※2年間有効』と綴られた1枚のチケットだった。

 

「何だこれ!?」引き攣りながら聞いた。

「毎年告白を断るの、色々大変だから・・。このチケット使ったら2年間は僕に告白とか、あれこれ構ってくるのとか、禁止だからっ!」

そういってバタバタと幼馴染は教室のドアへと駆けていった。
「はあ!?お、おい!!」

ドアから去っていく時、更なる捨て台詞を残して。
「それ、5枚綴りであと4枚あるから!」

え、10年分!?
それは雷に打たれる様なショックで、しばらくひとり呆然としたのを今も覚えている。

 

 

『溺愛拒否券』

 

 

桜芽吹く季節。随分寒さの和らいだ外の空気を吸いながら、1人散歩道を歩く。

幼馴染が溺愛拒否券を行使し始めて6年目、チケットは今3枚目だ。俺たちは大学1年生になった。

 

買ってきた2人分の飲み物だのスイーツだのを入れたコンビニの袋を下げて、俺は家へ向かって歩いていた。
ピンポンとインターホンを鳴らせば、おかえりなさいと幼馴染。ひょこと出てきたヤツは、やっぱり可愛かった。

 

そう、『絶対に告白をしないこと&アレコレ構ったり面倒を見ないこと』を条件に、俺たちは今節約のためにルームシェアして暮らしている。
そんなことは可能なのかって?
可能だ。俺さえ血反吐を吐く様な我慢をすれば・・!

 

ソファに座ってコンビニスイーツをつまむ。今日はポッキーにした。
コーヒーを淹れる等の世話をしてはいけないというルールなので、買ってきたアイスコーヒーをそっと差し出した。

なんとなく流しているテレビを見つつ、何でもない風に話しかけた。

 

「最近あったかくなってきたよなあ」
「そうだね」
「今度お花見でも行く?土手のところ、結構良さげだよ」
「それ良いね!お団子とか持ってく?」
「あ、ところでさあ。溺愛拒否券そろそろ廃止しない?」
「しない」

 

早ッ。俺はため息を吐いた。まあこのやりとりも多分300回くらいしている。慣れたものだ。

「ちょっとは悩めよ。あーあ。拒否券が全部なくなる頃、俺たち24歳とかかあ・・」
「そうだよ」
あまりにも塩。何なら拒否券追加もあり得るな。

 

それでも俺は、側にいられるだけでも良かったのだ。
幼馴染は引っ込み思案だから恋人作りそうな気配はないし、俺は誰かからアタックされても断るし。

 

ずっとずっと、付かず離れず側にいられるものだと思っていた。我慢は辛いけど・・。

今は脈はなさそうだけれど、いつか進展出来ます様に。そう祈っていた。

 

そんな穏やかな生活をある日突然ぶち壊したのは、幼馴染だった。
男の先輩に告白されて、付き合うことにしたと突然告げられた。家も出て行きたいと言い出して、俺は慌てた。

 

「何でだよ!?恋人いらいないとか、言ってたじゃん!」
「最近欲しくなったの」
「人に構われるのイヤって言ってたくせに!!」
「・・先輩はあんまりヤじゃない」
「そんな・・!」

 

俺には拒否券使ってくるくせに、他の男は良いんだ。
それがショック過ぎて頭がぐわんぐわんして、俺はふらふらとそのまま家を出た。

 

夜の散歩道。
俺は公園のブランコに座ってやけ酒を飲んだ。
誰もいないのに煌々と明るい蛍光灯の下、たった1人だ。

どうして?何でだよ。

 

財布に入れてある手書きの拒否券を取り出し・・ビリビリに破いてやった。
俺なりに、幼馴染を大事にしてきたつもりだったんだけどな。ずっと待ちたかった。でももう、待たせてももらえないんだな・・。

 

チケットは、ちりぢりになって桜吹雪みたいにどこかへ飛んでいった。
さようなら・・。

 

俺たちはそのまま別々に暮らし始めた。大学でもほとんど喋らなくなった。例の先輩と並んで歩く幼馴染を、俺はなるべく目に入れないようにした。

 

幼馴染と離れて行動しだして、やたら色んな女の子に絡まれる様になった。連絡先貰うことも増えた。たまに気まぐれに誰かと出かけてみたりもしたけど、気が乗らなくて誰とも進展しなかった。
そしてそのまま卒業して、俺たちはバラバラになった。

 

そうして俺は24歳になった。今では立派なサラリーマンだ。
自分の誕生日に、溺愛拒否券ようやく切れたなあなんて思い出すくらいにはやっぱり幼馴染を想っていた。
未だに想ってるって、我ながら重すぎるけど。

 

また桜の季節がやってきて、1通のラインが来た。大学のクラス会が開かれるらしかった。皆来るらしく、幼馴染もメンバーに入っていた。

サラリーマンのアイツ、今どんな感じなんだろう?アイツがスーツ着てると思うとグッときてる自分がいて、我ながら引いたのだけれども。

 

俺はもちろん『参加する』と返信した。

 

クラス会当日。雨が降って、せっかくの桜を散らしていた。

久しぶりに再開する面々とワイワイしつつも、俺は速攻幼馴染を探していた。・・でもいない。幹事にそれとなく聞けば、仕事の都合で遅れてくるらしかった。

 

ソワソワと待つ。でも中々現れなくて・・アイツが到着したのは、1次会が終盤に差し掛かったタイミングだった。

「ごめん、遅れちゃった!」

 

そう言って雫に濡れながら現れたのは、記憶の中よりも少し大人になった幼馴染だった。少し長めの前髪、紺色のスーツ・・あどけなさは残るものの、オトナになった幼馴染に俺はまたも恋に落ちていた。

 

しかし何て話しかけようか。気まずい。ものすごく。でも今話しかけないと、一生話すことが出来ない気がして、俺はどうにか声を掛けた。

 

「よ!久しぶり。・・てか、めっちゃ濡れてんじゃん。外やばかった?」

 

ただの友達として心配してるテイで、ハンカチで頭だの肩だのを拭いていく。大人しく拭かれていく幼馴染に、ちょっと良い気分だった。

 

昔だったら『そういうの良いから・・!』って言われてるもんな。

そのまま流れる様に、俺の隣の席に促した。

 

「まあまあ座れって!!あ、何飲む?とりあえずビールで良いよな?」

慌ただしくビールを注いでやって、乾杯した。1次会が終わるまであとちょっとだった。ちょっとでも会話しておきたかった。

 

「・・それでさ、仕事どう?今日も遅くまで大変だな」
「うん、その・・休日出勤とか、あるから。そっちはどう?」
「俺?まあ、適当に社会に揉まれてやってるよ」
「・・彼女とか、出来た?」

 

一瞬俺は硬直して・・

 

「まあ適当にな」
そう答えた。本当は今でもお前が1番好きだなんて、気が狂ってるから。

 

あっという間に1次会は終わり、他の皆は2次会に行くらしかった。
幼馴染は明日も早いから来たばっかりだけど帰ると言うから、俺もだわと答えた。

 

雨のようやく上がった夜道を2人並んで駅まで歩く。散り落ちた桜が地面の水溜まりに浮かんでいる。

 

ずっと聞きたかったことを、切り出した。
「・・ところでさあ。例の先輩とはどうなったんだよ」

 

一緒に住んでたりすんの?

「ずっと前に別れてるよ」
「え・・」
意外だった。

「・・ちなみにいつ頃?」
「付き合って1週間くらい」
「はあ!?」

 

びっくりした。立ち止まった。黒目がちな瞳が俺を見上げている。

 

「何で!?」
「何でって・・別にタイプじゃなかったから」
「よく一緒に歩いてたじゃん!」
「なかなか諦めてくれなくて。・・あと君に、誤解されたかったから」
「ああ!?」

 

思わず肩を掴んで揺さぶった。いや、当たり前だろ!
幼馴染は俺をチラと見上げて、自嘲気味に白状し始めた。

 

「・・君が好きだったんだ、ずっと。でも付き合ったら何だコイツこんなモンか、って終わってしまう気がして・・怖かった。
僕と君じゃあまりに釣り合わないからさ。だから先輩から告白されたのをキッカケに、君と離れたんだ。
そうなったら君にはワンサカ女の子が群がってきてたしさ。やっぱりあれで正解だったんだよ。
結局今だって彼女いるんでしょ?きっとお似合いの。やっぱそっちの方が良いに決まって」

 

全部は言わせなかった。強く強く抱き締めたから。

 

 

そうしてまた俺たちは一緒に暮らし始めた。今度は恋人同士として。

引越し当日、段ボールの山を片付けていく時。幼馴染は声を上げた。
「・・あ!こんなのまだあったんだ!」
「何?」

 

ファイルからヒラリと出てきたのは、例の溺愛拒否券だった。残り2枚。

「あったなあ〜!こんなチケット。先輩と付き合うって言われた時、ビリビリに破いてやったわ」

 

懐かしい、あの日。感傷的な気持ちが込み上げた。

ニクい溺愛拒否権を取り上げて、1枚破った。
「はい期限切れっと」

 

続いてもう一枚、と思ったところで俺はあることを思いついた。

段ボールの中からボールペンを見つけだし、溺愛拒否券を修正していった。
チケットの余計な文言を二重線で消し、大事な文言を付け加えた。

 

「はいこれ。すぐ使うように」
渡したのは『溺愛受け取り券 ※無期限有効』

 

「これでずっと一緒だな」
そう言うと、何それと幼馴染は笑った。

それ無期限だからな、忘れるなよ。

 

end

今回は『#幼馴染 #美形×平凡 #執着攻め』をテーマに書いてみたのですが、いかがでしたでしょうか?楽しんで頂けたら幸いです。

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