リクエスト対応作品です。
お題;
クズめな依存強め攻め×俺がいないとダメなんだから系受け。受けがキレても攻めが土下座したらニヤニヤして許しちゃう感じの関係性。メリバエンド。
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夏輝、22歳。
歌舞伎町No.1ホスト。
歌舞伎町で一番シャンパンタワーやってる男。
そのバブリーな生き様を世間に晒し、SNSフォロワーは20万人超え。
顔もカッコよくて背も高く、およそ天に愛された男といって差し支えない。
しかしそれはあくまで表面上の話。
僕は知っている。
夏輝は承認欲求に取り憑かれし男で心がめっぽう弱い。ストレスが溜まればすぐに薬を一気飲みするヤバい奴。いわゆるオーバードーズというやつだ。
ストレス耐性ないんだからホストもSNSも辞めりゃ良い。それだけの話なのに、ホストやSNSでなければ満たされない承認欲求があるらしく、彼は現状を辞められないでいる。
だから薬の一気飲みもやめれない。
その夏輝を介抱しているのは僕、優斗。
恋人。あ、一応夏輝の元客ね。
「お願いっ許して!」
夏輝は気軽に土下座する。いつものことだ。
「許しません」
「優斗〜!!俺を見捨てないでよお」
夏輝はハの字に眉根を下げ、情けない顔をしている。
イケメンが台無しだよ。店で見せてるつよつよの顔はどこいったんだっつうの。
「薬辞めるって言ったでしょ!緊急搬送何回目?」
「だ、だってええむかつくアンチコメント来て無性にイラついて……」
僕ははああと盛大にため息をついた。
「気持ちは分かるけどさあ。でもそんなんで薬一気飲みしてたらいつか本当に死ぬよ。もう薬もホストもSNS配信も辞めなさい」
「……や、やだ……」
びくびくと怯えて僕を足元から見上げている。
「キラキラ綺麗なシャンパンタワーも分厚い万札の束も!SNSのイイネも俺の楽しみなの!人生そのものなの!俺から生きがいを奪わないでくれええ……!」
「ふ〜んじゃあ生きがい優先させるのね。じゃあ僕とは終わりにしよ」
冷たく言い放つと、さらに夏輝は足元で情けない顔をした。
「やだあああああ優斗いてくれないとやだあああ死んじゃううう」
あ〜あ〜もうほんと、僕がいないとダメなやつなんだから。捨てられまいと必死な顔が僕のツボをいちいち刺激してくるから厄介なんだよなあ。
もっと見たいなあ……。
でもそんな欲望がバレる訳にはいかないので、僕は表面上はちっと舌打ちしてしゃがんだ。
「あんたね……」
その美しいお顔を正面からあきれた顔で見つめる。お説教してやる。それにしてもほんと顔だけはいいね。
「悪い子嫌いだよ?歌舞伎町にゴミ箱に捨てるからね?」
「ううう……良い子にするからああ……」
「ダメ、許しません。往復ビンタの刑」
「え、ビンタで許してくれるの?」
「あほか、ビンタのあとお別れ」
「やめてええええ」
あ〜たまらんな〜。もうちょっといじめようかな。どうしようかな。え〜っとなんて言おう。
「……っていうか優斗今日もかわいい大好き〜!怒った顔もかわいいっ!我慢できない〜!」
「ぐえっ」
僕の説教は夏輝によって押し流された。
床に押し倒されて、キスされて、そのままなし崩し……。
キス上手、床上手。ベッドに人を引き入れたら天才的。誰でも虜になるだろこんなん。クズなのにカッコイイ。こんな男が夢中で僕を愛してるだの
、お前しかいないだの言うからいけないんだ。僕の萌ツボを突き、絆されて、クズなんだけど僕はこいつを捨てることができない。
事後……。
「はあ……夏輝、そろそろ支度しな。今日から店出るんでしょ、付き添いしてあげるから」
僕に抱きついてうとうと寝ようとしていた夏輝。
聞いたとたんにぱあっと笑顔になった。
「え!良いの嬉しい〜!!!」
無邪気なにこにこ顔に、僕は2回目のちっが出た。これはまじのやつだった。いやお前今寝ようとしてたじゃん。
◼️
コール入ります、ボトル入ります!
ギラギラの店内は今日もすごい盛り上がりだ。
僕は端っこのソファに座って、ぼんやりと様子を見ていた。
ネオンすげーしミラーボールもヤバい。デカイ札束がバンバン手渡しされている。いや〜景気良いね。
そしてそのバブリーど真ん中にいるのが夏輝。
「シャンパンタワー入ります!」
別人なのかと思うほと、キッと意思の強そうな顔で堂々としている。夏輝はこの店でつよつよ肉食系イケメンと化すのである。あれで隣に座って乾杯♪ってそれだけで落ちちゃったよね僕。
運よく夏輝がメンヘラクズ野郎と知って、うまく主従関係が作れたので恋人になれたけど。あいつがそもそも真っ当なつよつよキャラだったら僕なんか歯牙にもかけないだろう。
あ〜良かった!なんてね。
それにしても今日はあの女の子があんな大金を夏輝に突っこんだのか。夏輝の隣に立ってるあの子、嬉しそうだなあ。ああ、鬱い。
「僕の大事なお姫様からシャンパンタワー入れてもらいました!」
ワ〜!僕の大事なお姫様だってさ!恋人の前でアイツよくも……こういうの、割り切らなきゃと思っても毎回いちいちイライラしちゃうんだよな。
シャンパンタワーまじ最悪なんだよな。この次は……。
見ないようにしてたけど、わ〜〜!という歓声でつい見てしまった。
『お姫様』の女の子が夏輝にキスしたからだ。シャンパンタワー入れるとこれをやって良いというのがこの店のルールだった。
もう最悪だーーーー!!!!これ嫌いなんだよ!
夏輝がチラッとこっちを盗み見たのでプイッと無視した。そしてそのまま帰った。
最低、最悪!恋人来てるんだから色々空気読めよな!無理だろうけど!くそ、くそっ!
レジにて。
テーブルチャージ、利用料。そのほか諸々で精算金額7万円なり。
嘘だろフルーツ盛り合わせとカクテル2杯くらいしか頼んでねーわ。潰れろよこの店。
まあこれ夏輝のお金だから別にどうでも良いけどさ!
ぶらぶら歩いて帰った。適当なバーで飲んでいた。
はあ……イケメンホストの恋人つれ〜〜!
ろくでなしの恋人つれ〜〜!!!
色恋営業で摘発されちまえ〜!!!
くそ〜〜!!!!!!
あーあ……。
「あの、お一人ですか?」
「!」
その時声かけてきたのは、なんかチャラチャラした知らない男。まあかっこいいけど、夏輝の美貌よりは劣るね。
「隣良いですか?良かったら一杯奢らせてください」
「あ、はい……どうも……」
もう夏輝なんかどうでも良いし。ナンパも断らないもんねーだ。
チラッと見た携帯には、夏輝の着信もないし。はいはい、姫の相手で忙しいんでしょうよ。
シャンパンタワーに溺れちまえ!
◼️
「うっ……おえっ……」
夏輝にキレ過ぎてた故なのか、酒を飲み過ぎて僕はベロベロに泥酔した。バーを出る頃には結構足元がふらついていた。
「大丈夫ですか?ゆっくり休めるところでもいきましょうか」
「……う〜ん……」
店を出て、男は僕をどこかへと連れて行く。
ラブホテルには流石に行きたくないなあ……お断りをと思った。だけど思った以上に酔っていて、呂律が回らない。振り払って帰りたいけど、逃れられない。
しかも吐きそうだし。おえっ……。
「ほら、あそこ入りましょうか」
「え、いや。あの、むり……ほんと、無理。離して、離して、いや、まじ離せよっ!!」
ってマジで連れ込まれそう。いやむりむりむりむり……!
「んんん〜!!」
めちゃくちゃ押し問答して、ホテルのマジで連れ込まれそうになる。ホテル特有の隠れるような入り口に、その壁に最後まであらがって指先だけ引っ掴んでいた。
くっそ〜連れ込まれてたまるかあああ!
「なつき〜!!僕を助けろよお!!!」
誰もいもしいない虚空にむかって虚しく吠えた。
僕は夏輝だから好きなんだよ、夏輝がいい訳!
夏輝がくれたリングが嵌る指先、虚しく壁から剥がれていく。流石にも、むりそ… …。
色々諦めそうになった時。
「優斗!!!!」
走って助けにきた男がいた。
そいつはナンパ男をパンチしてキックして僕を助けた。
「優斗!無事か」
歌舞伎町のやたらギラギラなネオンを背景に、神々しささえ纏って僕に向かって手を差し出す男。
美し過ぎてへどが出るね。
「……姫は大丈夫だったの」
「ホントはアフターしなきゃなんだけど……ビンタと引き換えに今日は許してもらった。ハハ違約金100万円なり……でも良いんだ優斗を助けられたから」
「そっか……」
クズでロクデナシで薬一気飲みが趣味なヤバい奴だけど、こういうとこだけスーパーヒーローな男、夏輝。
その手を取って、僕はまた立ち上がった。
僕を強く抱きしめた夏輝からは汗の匂いと甘い香水の匂いがして、すこしくらくらした。
夏輝のこれは、水商売の匂いだ。
僕を落ち込ませた日は夏輝はすごくベッドで奉仕してくれる。僕はそれを受け入れる。なんとも歪な関係だけど、こうして僕らは絆を深めているところがあった。結局はお互いに依存している。この依存が誰よりも深くなって抜け出せなくなれば、この夏輝を永遠に僕のものに出来る。
クズも飼いならせば悪くない。
問題は更生しないってことだけ。
◼️
「もう夏輝!今度という今度は許さないからね!」
「お願いっ許して!!」
いつものやり取り。
夏輝は土下座してきた。結局またオーバードーズをやったのだ。なんかネットかなんかに根も葉もないこと書かれてすごい傷ついたからなんとかっって。しかもアルコールも一緒に煽ったというオマケつき。なんで生きてられるんだよ。死ぬなよ僕を追いて。
「もう知らない!!!」
流石にカンカンに切れた僕。
僕を追いて天に行こうとした罪。
「もう、もう……僕がどんな思いしたと思ってんだ!」
土下座を無視して通り過ぎようとしたら足首にすがってきたんでつんのめって転んだ。
「何すんだよ!!!」
「お願い許してっ!!!」
被せるように飛びついてきて押し倒された。
「ねえっ」
「知らないよ!ほら合鍵、返すから!」
鍵を突きつける。
「うっ……やだああ……やだああああ!!!」
大粒の涙がぼたぼたと頬に落ちてくる。イケメンの涙は迫力あってビビる。
「薬もうやらないからあ」
「うそつき」
「アルコールもやめるうう」
「仕事がら無理だろうがまずホストやめなさい」
「やだああでも優斗は失いたくないいい」
あ〜あ〜あ〜やだやだ。ちっくしょう、そのそそる顔やめろよなあ。
「でもあんた本当に死にかけたんだよ。もう心労でこっちが死にそうだよ」
「うううっお、お薬全部捨てます!!!」
「はあ〜それだけえ?」
は〜くそ、夏輝いびりはやっぱり楽しい。
「お家のアルコールも全部捨てます!!!あっあとっ仕事の行きと帰りは優斗についてきてもらって、監視してもらいますっ!!」
「それ僕が忙しいだけじゃん……ちっ……それならまあ良いか……」
耳ざとく『まあ良いか』を拾い上げた夏輝は、僕を抱きしめた。
「優斗〜!好き好き大好きいいい」
地獄で救済された人みたいにスリスリしてきた夏輝だった。
あ〜あ〜、僕って甘過ぎ……。
まあ良いけどね。イケメンくんに縋り付かれるのは悪くないよ。嘘、割と好きだね。ん?これも嘘か、ぶっちゃけ大大大好き!
切羽詰まった夏輝の『好き』も『愛してる』も『お前しかいない』も、何度でも聞きたかった。
さて、そしてあの脅しが効いたのか、夏輝は本当に薬を辞めた。
「嫌われない様に頑張るっ!」
今の所、薬の一気飲みを本当に辞めている。
「ん、頑張ってね?期待してるよ」
「うんっ♡♡♡」
尻尾ふりふり。気を良くした夏輝とベッドで致したあと、そのまま夏輝は熟睡した。
……暗闇のベッドで1人夏輝に背を向け携帯を開く。
ち、つまんないな。
夏輝。マトモな人間になったらつまんないんだよ君は。君がメンヘラで僕らは共依存だから良いんだろう?その辺分かってんのかな?
という訳で。サブ垢から夏輝のSNSを開いてバッドボタンを押した。
ゴメンね夏輝。
流石に誹謗中傷コメントなんかはしないけど、バッドボタン入っただけで夏輝は結構落ち込む。
逐一バッドボタンの数を数えてるんだからその承認欲求の異常さが分かるというものだ。
でも、だからこそ夏輝の気分を操作出来る。明日は朝から鬱いだろうな、夏輝。
さてこれからどうやってけしかけようかな。まあ流石にオーバードーズは命の危険がある辞めて欲しいんだけどね。
でもほどほどに病み散らかす→土下座→仲直り熱々ベッド、というコンボをキメてほしいんだよね。そういうプレイと思ってるよ僕は。良いんだ、夏輝も僕にいじめられて楽しいと思うし。
ん〜良い方法はっと……ん?
適当にネットをスクロールしていて、ふと目に止まった。
『アンチコメント代行サービス』
!
いや地獄かよ逮捕されろこいつ。それにしてもなんでもサービスになるね。
まあ申し込んだりしないけど、ちょっと気になるよね。
ちなみにサービス内容は……ふ〜んこんな感じなんだ。へえ〜うわ巧妙だなあ。夏輝に効くな〜こりゃ。
まあさすがに頼まないけど?
さすがにね。
さすがに。
end
※アンチコメントは人の尊厳を傷つけるのでやってはいけません。あくまでも本内容はフィクションです。
月夜オンライン書店では、過去に掲載したシリーズの番外編やココだけの読切作品を取り扱っています。
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※boothとnoteは取り扱い内容同じです。
よろしくお願いします♪