その後、結局僕は莉音くんと近くの焼肉屋さんでご飯を食べた。体の大きい莉音くんはもりもりと良く食べた。金髪混じりのやや長い髪を後ろで束ねて、汗をかきながら肉に喰らいつく様は色気があった。
「どうちゃんと食べてる?」
僕にメッチャ肉を焼いて分け与えてくれた。莉音くんは気が利いてホントに何でもしてくれる。
僕はペットみたいな気分だけど、こういうペットなら悪い気はしない。
その一方で、ドジな僕が焼肉のタレの容器をこぼしそうになれば莉音くんはすかさずキャッチして止め、僕のグラスが空く前に追加のカクテルを頼んでくれた。
莉音くんは『良いよ気にしないで』と、僕にお酌をさせないので僕はビールをこぼすということはない。
この人といると僕はのろまな亀ではなくなった。
僕は食事の合間に気まぐれに聞いた。
「詩音くんに相手できたらどう?寂しかったりするの?」
「……別に寂しいとかないよ。それにお互いに相手が出来れば、お互いで性欲を発散しなくてよくなるからマットウな双子に戻れるよね。それは良い点」
何気なく言うので僕は目眩がして、聞こえなかったフリをした。
その後の食事中、詩音くんの乱入を何だかんだでずっと警戒していた莉音くんだったけど、詩音くんはそのまま現れなかった。
「どっかのオキニでも見つけたのかな?ねえナツミ」
そう呟いて、ホテルの鍵を開けて莉音くんは僕を部屋に押し込んだ。
莉音くんの荒々しい手が僕を体を探る。莉音くんは普段優しいけどベッドでは言うことを聞かない。僕を早々にベッドに押し倒し、僕が観念しかけたその時。莉音くんの電話が鳴った。
「……詩音だ」
最初無視してたけどあまりに何度も鳴るので、イライラしながら莉音くんは出た。
「何おまえ。今すごい良いところ。……え、はあ?お前何言って……ちょっと待ってろ、そっち行くから」
しぶしぶと、しかしやや焦りながらも莉音くんは僕から離れて立ちあがった。
「ごめんね、詩音のやつがちょっとおかしくて。様子見てくるからちょっと待ってて」
「え、大丈夫?どうしたの?」
「いやまあ、俺だけ行けば良いと思うから。待ってて」
莉音くんは僕の頬にキスして、さっき脱ぎかけた服を着直して少し慌てて出て行った。
「??」
僕はちょっとぽかんとしたけれど、ひとり部屋で待つことにした。
何かトラブルが……?あっ財布忘れたとか?まさかボッタクリに!?
なんて心配をしたりした。まあでも大丈夫だよね?莉音くんが行くなら……。
それから少しして、外は雨が降り出した。雷まで。こんな天気予報じゃなかったはずなのに。お天気雨かな。
結構な轟音で雨も雷も鳴り響く。追いかけようにもなあ……という感じ。激しさを増す一方の雨を横目に、僕はベッドでひとり目を閉じた。
それから結構経ってから、ようやくリンゴンとドアベルが鳴った。ドアを開けると、ホテルの暗がりの廊下に莉音くんが立っていた。
「ごめんごめん、お待たせ。ちょっと色々あってさ……」
雨でびしょ濡れだ。スッと部屋に入ってきた。
そして急いで僕らの荷物をまとめ出した。
「なんかね、詩音が部屋がどうしても落ち着かないから?変わって欲しいんだって。ここは悪い気が充満してて俺は具合悪くなるー、とか言ってさ……。アイツちょっと霊感あるんだよ。
面白いよね俺たち双子で俺には霊感ないのに。という訳で交代。アイツが言うには霊感なければ大丈夫らしい。ホントかよって感じだけどね」
僕はちょっと怖かったけど、決定事項に従うのみだ。ただ隣の部屋に移動する時に聞いた。
「ねえそういえばどうして莉音くん髪濡れてるの?外出た?」
「……ああ、詩音に頭痛薬買いに行ってやったからだよ。具合悪いって言うから仕方なく、さ。雨最悪のタイミングだよねー」
僕はふうんと返事した。何だかんだ世話焼きだなあと思っていた。
隣の部屋に入る。詩音くんはいなかった。
「やっぱ軽くどっかで飲んでくるってさ」
僕は莉音くんに声をかけた。
「っていうかそんなに濡れて大丈夫?先シャワーお風呂入っちゃえば」
「いやタオルで拭けば大丈夫。……そんなことよりさ」
「寒いんだよね。あっためてくれる?さっきの続きしよ」
莉音くんは僕をベッドに押し倒した。
続く
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