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【リクエスト】【短編】かわいい君へサプライズ

リクエストです!攻めくんが受けくんの誕生日を祝うお話です!

 

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秋葉は欲のない子だった。

思い起こすこと1年前。まだ付き合ってまもなかったあの頃。

『秋葉くんそろそろ誕生日だね、プレゼント何がいい?』
『えっと、えっとー!……先輩の使ってないメガネとかあったら欲しいです……♡』

『???いや遠慮しなくて良いんだよ?財布とか、なんかあるでしょ?』
『良いんです!僕は先輩グッズが一番嬉しいんです〜!』

『そ、そう……?』

後日、半信半疑で渡した自分のお古のメガネ。
あげたらキャ〜ッてすごく喜んでいた。

『ねっねっ先輩どうですか!?』

早速かけたりしてて、あまりメガネは似合わない秋葉が心底愛おしくてつい抱きしめてしまった。

『僕、これ宝物にしますね!』

ニッコニコの笑顔は忘れられない。

 

あの時の自分は高3。秋葉は高1。

同じ寮で暮らし、両思いとして過ごせたあの日々はほんのひと時だった。

俺はじきに大学受験を迎え、そして寮を出て行った。

一人暮らししている今ならわかる。

恋人のグッズが欲しいとねだったあの時の彼の気持ちが。

 

遠距離恋愛は寂しいものだ。じきに離れ離れになる自分たちのことを、秋葉はよく分かっていたのだろう。

でも今日は付き合って2回目の秋葉の誕生日。今年は絶対豪華に祝うと決めている。

 

 

『かわいい恋人にサプライズ』

 

 

「はあ〜楽しみ……♡♡♡」

僕は待ちきれなくてソワソワしていた。

今日はとっても久しぶりに、春樹くんの一人暮らしのお家に遊びに行く日!

僕はドキドキしすぎて朝3時に目を覚ましたのだけど、寮の同室の冬由(ふゆ)に『いくらなんでも早すぎるだろ』と寝かしつけられ、5時にもっかい起きて、そして寮を出発して駅へそそくさと向かった。

あああ〜!早く会いたいよう!

電車に飛び乗って、僕は春樹くんへ想いを馳せた。

 

春樹くんは頭が良くてクールでメガネの似合うかっこいい完璧な恋人だった。

どれくらい完璧かというと、記念受験で受けてみた医学部に受かっちゃったから行くという天才ぶり。そんなことある???僕とは本質的に頭のつくりが違った。

でも春樹くんは決して僕を馬鹿にしたりしない。どんなに難しい話も噛み砕いて僕でも理解しやすく話してくれた。

一見クールだけど優しくて温かい人だった。

そんな完璧な恋人が、大学で新しいお相手を見つけてしまうのではないかと僕は不安で不安で仕方なかったのだけれど、春樹くんは『杞憂だよ』と笑い飛ばしてくれた。

そして今日は満を持して僕のお誕生日!

お祝いするから泊まりにおいでと言われて、ほいほい向かっている。嬉しい。超ハッピー。

春樹くんは大学生になって更にオシャレになり、カッコ良すぎて一緒にいると未だに心臓が飛び出そうになる。

それにメガネしててあの頭良さそうな感じが僕はもうたまらない。大好きなのである。

「……(ぐへへ)……」

あっと声に出ちゃった。慌てて口を押さえる。いけないいけない。電車なんだから静かにしないと……!

いつもお守りに持っている、春樹くんのお古のメガネ。これがあるといつも春樹くんと一緒にいれる気がしている。でも今日はホントに久しぶりに春樹くん本体に会えるんだ!嬉しくって嬉しくって、もう弾け飛びそう!!

 

 

「!!は、春樹く〜〜ん!」
「秋葉!」

駅のホームで春樹くんを見つけて、他の誰よりも早くホームを駆け抜け春樹くんに抱きついた。

「会いたかったよ〜〜〜!!!!」
「俺も」

声が渋かあっこいいい〜♡好き〜♡♡

「じゃ、行こっか。今日は楽しもうね」
「うん♡♡♡」

僕は春樹くんが側にいてくれるだけで良かった。でもこんなに好きな人にお祝いしてもらえるなんて、なんて幸せなんだろうって思った。

 

 

都会に住む春樹くんは、いろんな場所に連れて行ってくれた。まずは遊園地!コドモな僕はめっちゃ喜んだ。ジェットコースターやらなんやら、色んな乗り物に僕はきゃいきゃいした。バッシャ!!!って水が跳ねるスプラッシュなやつとか僕的には超楽しかった。

つめてえ〜!って笑う春樹くんが眩しすぎた。普段クールなのにちょっとはしゃいじゃう年上の春樹くん!尊くて……かわいくて……!!

「ほんとに、ほんとに……!来て良かった〜!♡」

色ん想いを込めてそう叫んだら、春樹くんは嬉しそうに笑ってくれた。

 

観覧車に乗って、おもちゃみたいな街並みを見下ろした。

しっとりとしたオトナな雰囲気を出さないといけない乗り物のはずだから、神妙な顔をしていようとしてたんだけど、やっぱり高度出ると楽しくて僕はウキウキが隠せなくなった。

「景色すご〜い🎶ね〜春樹くんも見てよ〜」

春樹くんは、そんな僕の写真を沢山撮った。

「今日のアルバム作っとくよ。2人の思い出に残そうね」
「春樹くん……!」

僕も春樹くんの写真を負けないくらい沢山撮った。それにしても推しをこんなにバシャバシャ写真撮って良いなんて、恋人関係ってなんてありがたいんだ。

写真の中の春樹くんはかっこよかった。観覧車の日差しを受け、ただひたすらに爽やかイケメンだった。あんにゅいな雰囲気がステキだ……。

でも実物はもっとかっこいい。
携帯をそっと下げる。

ふと現実に戻ってしまった。明日から僕らはまた遠距離なんだ。

携帯をギュッと握った。

これがあればまた遠距離になってもがまんできるよね……。

そんな感傷に気づかないふりをして、僕ははしゃぎ続けた。そうすればこの時間がずっと続くような気がした。

 

それから春樹くんは美味しいランチに連れて行ってくれて、ご馳走してくれた。有名なシェフがいるらしい。

「美味しい!!すごいよ春樹くん!」
「そう?ならよかった」

シレッとしてて、そこがまたかっこいい!!!

帰り際、お店の人に呼び止められて『あなた弟さん?お兄さん、随分熱心にここに通ってメニューあれこれ試してみてたわよ。大事な人のお祝いしたいからって』ってこっそり言われた。

「秋葉?」
「!あ、ごめん、今行くよ!」

お店の先に行ってしまってた春樹くんの背中を慌てて追った。なんでもない風に見せかけて、色々準備しててくれたんだな……。

 

それから、春樹くんはおおっきな本屋さんに連れて行ってくれた。僕も春樹くんも本好きだから。

春樹くんにおすすめの本を教えてもらって買った。僕には春樹くんの頭の中は覗けないけど、同じ本を読むと心近づける気がする。前にそんな話をしたのを、覚えていてくれたんだって。

大切なお土産として鞄にしまった。書店を後にするとき、ふと書店を振り返った。また春樹くんと一緒に来れるよね。次来る時は、僕が春樹くんに何か本を選んであげたりできるような男になれると良いなあ、なんて思ったりした。

カフェでお茶してちょっと休憩して……時間が経つのはあっという間で、もう夕方。明日は午前中には帰らないといけなかった。秋の夕暮れがさみしい… …。

そんな僕に気づいたのか、春樹くんは優しく声をかけてくれた。

「あーきは。ウチそろそろ行こっか。ディナーを準備してますよ」
「!うん!」

 

久しぶりの春樹くんのお部屋。本棚一面に難しい本がズララ〜!って並んでて、前回来た時より増えててさすがって感じ。医学部のテキストをペラペラ見させてもらったけど、まじでちんぷんかんぷんだった。(あれは本当に日本語……?)

「お、秋葉も医学部来る?」

機嫌よく僕を膝に乗せて、勉強机の椅子に座る春樹くん。

「むりだよー。ぜったい無理」
「替え玉受験か……」
「も〜春樹くん!」
「じゃあせめてすぐ近くに引っ越してきてよ」
「ウグっ頑張って勉強します……」

勉強苦手なんだよなあ……と俯く僕に、春樹くんは優しくおでこにキスしてくれた。2人の距離が近くて、ドキドキが鳴り止まない。あれれ、この雰囲気はもしかして……。

「……秋葉」
「な、なあに……?」
「……。ほら、ディナーだ!準備するよ」

振り切るように春樹くんはサッと立ち上がった。

ほっとするようなちょっと残念なような、そんな気持ちで僕も後に続いた。

 

 

「えー!?これ全部春樹くんが作ったの!?」
「まあね」

僕はゴクリと喉を鳴らした。

テーブルに広げられた料理の数、そしてその本格さ!なんかチキンの丸焼きとかあるんだけど!?

「自分の手でも秋葉を喜ばせたくて」
「買ったんじゃなくて!?」
「……実は料理教室にしばらく通った」
「ええ〜!?」

ちょっとバツが悪そうにしている春樹くん。

「しばらく1人で家で練習してたんだけど、なかなかコツが掴めなくて……女性に入り混じって練習してきた。いやー恥ずかしかったわハハ……」

女性……そんな。こんなにかっこよくてイケメンで頭良くて料理までできたら……。

「秋葉?あー女性と言っても何もないから安心し」

「は、春樹くん!料理教室なんて行ったら女性たちに取り合われて、じゅ、10等分にされちゃうんじゃない!?」

僕としては素直な心配を口にしただけだったのだけど、春樹くんはずっこけた。

 

だって凄かったんだ。料理。

おフランス料理らしい。そういえば確かに本棚にフランス料理の本もあったなとぴーんと来た。

「美味しい!!!!練習大変だったんじゃない?」
「喜んでくれたらそれが何よりだからね」

「そ、それだけでこんな努力を!?うっ春樹くんありがとう……!」

優しさが身に沁みた。

頭良いし努力家だからこんなことも出来ちゃうんだろうな。僕は春樹くんが大好きで尊敬してるけど、やっぱり僕ら釣り合わないんじゃないかな……。いや最初っから釣り合ってはいないけど……。

デザートにはもちろんいちごのホールケーキ(当然手作り)。

「秋葉、お誕生日おめでとう」

そう言って照れながらハッピーバースデー歌ってくれて、なんか色々込み上げてしまった。暗がりの中で揺れる蝋燭の日がなんともロマンチックだった。

「ありがとう春樹くん、こんな嬉しい誕生日初めてだよ!」

そして明日帰る時のお土産用にクリームブリュレまで作ってくれていた。ちなみに表面のコゲコゲは専用のバーナーを買ったらしい。

「明日からまた離れ離れになっちゃうからね。帰り道も楽しんで欲しいし」

ラッピングの箱までキュートだし。春樹くんがもはや眩しかった。神か……完璧な人だ……本当……。

「……秋葉」
ギュッと抱きしめられて嬉しい反面、ちょっと複雑な気持ち。

「……春樹くん、どうして僕にそんなに優しくしてくれるんですか……?」
「?大事だからだけど?」

何を当たり前のことを言ってるんだと言わんばかりに首を傾げる春樹くん。

「ぼ、僕はここまでしてもらえるような素晴らしい人間じゃなくて……気持ちはもちろん嬉しいんだけど。その、釣り合わないと言いますか……」
「釣り合ってないって誰かに言われたの!?」

すごい剣幕に驚く。

「あ、いや、そうじゃないけどさ……良いのかな?って思っちゃって……」
「秋葉がいるから俺は頑張れるんだ。釣り合いだとか、そんなの俺たちが決めることだろう?俺は秋葉とくっついて良かったと思ってるよ。それで良いじゃないか」

「春樹くん……そっか、ありがとう……」

春樹くんグッズを持ち歩かないと不安だった僕が、慰められていく……。春樹くんは僕に安心をくれる。じ〜んとしちゃうね……。

「ね。あ、そうだプレゼント」

そうして渡してくれたのは小さな箱。ピンクのリボンがかかっている。わ、僕がピンク好きなの覚えててくれてたのかな……?

「わ〜なんだろう?」

春樹くんがくれるものならなんでも嬉しかった。

かぱ、と箱を開けると中には腕時計。

「わ、わ〜!すごい!かっこいい!ありがとう!」

ブルーの文字盤のシャープのデザインのそれは、クールな春樹くんのイメージそのままだった。

「春樹くんみたい!嬉しいよ!」

「今年も俺のお古のグッズってのもなって思ってさ。まあそれを俺と思ってつけてよ。あ、これさ実は同じの俺も買ったんだよ。お揃いってことで、いつでもお互いのこと想えたら俺も嬉しいなって」
「春樹くん……!」

「これでちょっとは遠距離も不安じゃないだろ?俺はいつも秋葉を思ってるって安心してくれたら良いんだけどな。

……あ、あと。……これ……!」

チャリと渡されたのは……。

「もしかしてこの家の鍵?」
「そ。いつでも来て良いよ。って言ってもなかなかこれないだろうけど。2年後、ちゃんとウチに住んでくれよなってことで。その、こっちはサプライズプレゼント」

春樹くんは僕の方にボス、と自分の頭をうずめた。

「俺だって正直不安なんだ〜……!遠距離は辛い!秋葉は今何してるのかな?って授業の時も、実験の時もそればっかり考えてる。まったく寮にいた頃の自分が心底羨ましいよ。

どう?少しくらいは誕生日ちゃんと祝えたかな。喜んでもらえた?ちゃんと年上の恋人らしく振るまえてる?……秋葉の中から俺は消えない……?」

僕は驚いた。こんな完璧な春樹くんが弱気になるなんて。でも恋人をこんなに不安にさせてはだめだ!

「春樹くんは僕にはもったいないくらい素敵な人だよ!僕の中から消える訳ないじゃないか!
こんなに精一杯誕生日お祝いしてくれる恋人なんて、春樹くんだけだよ!僕には春樹くんしかいないよ。だからそんな不安な顔しないで……」

「秋葉……」

そして春樹くんの頬を手で挟んで、僕からちゅっとキスをした。

「せ、世界で一番春樹くんが好きです!」

か〜っとほっぺが熱かったけど、がんばった。

クールな春樹くんのほっぺもみるみる染まるのが見てとれてふふん良い気分、って思ったのと……。

「参ったな。最高のプレゼントをありがとう。でも秋葉、ちゃんと覚悟あるんだろうね」

そういって押し倒されたから。僕は目を閉じた。
どうぞ僕をご自由に。もうどっちが誕生日かわかんないね!

 

どうにかこうにか受験を制して、春樹くんとこの近くの別の大学に合格して、僕が2年後にここに転がり込むのはまた別のお話。

 

 

 

end

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