※今回r18要素あるので18歳未満の方はご覧にならないようお願いいたします。内容はタイトル通りです。
夜、テディとの引越し準備をすることになった。
久しぶりにバスルームから出してもらえた時、僕はうれしくて少し泣いてしまった。
「うっ…ヒグ…」
「よしよし、泣かなくて良いんだよ?」
テディがそう言って抱きしめてくれて、その大きな身体につい身を預けてしまって、ゾッとした。
どうしてなんだろう、おかしい。僕を閉じ込めてたのはテディのくせに、そのテディに慰められてほんのりホッとしてる…。
僕はブル、と身震いした。僕は感覚がおかしくなりつつあるのかもしれない。共依存ってやつ?いや冗談じゃない。
テディをチラ、と見上げる。少しエキゾチックな雰囲気の美男は、僕に吸い寄せられる様にキスしてきた。
「ん…ふ、う…」
熱烈なキスに応えながら僕は改めて決心した。早くこの子から離れなきゃって。
引越し作業、と言ってもテディはアイドルの身。今日だって長い時間は家にいられない。だから僕らは最低限の荷物だけまとめる。それ以外はスタッフの人があとは適当にダンボールに詰めて送ってくれるらしい。
初めて来た日のことを思い出していた。別に大した日数なんて経ってない。初めてテディに会った時はカワイイ男の子だなって、それぐらいだった。
ぼんやりしながらも洗面台へ向かう。洗面用具とか歯ブラシとか入れなっきゃって…。
そう思ってふと洗面台の鏡に映る自分を見て僕はギョッとした。随分痩せた、というか頼りなげな、しぼんだ感じに見えた。そりゃそうか…
首を絞められたあとも噛み付かれたあとも、キツくつけられたキスマークが散る身体も…蛍光灯の下で見ると散々だ。昨晩だってテディが離してくれなから…ドクンと身体が波打つ。いけない、忘れろ。
「藍。手伝うよ」
ふいにやってきたテディは僕の腰を抱いた。そして手のひらが太ももからお尻らへんを撫で上げた。テディのトレーナー上だけしか着せてくれないから、下なんも履いてないし…。
「…!テディ、それどころじゃないよ」
「良いじゃん」
耳を噛んでうそぶく。悪戯に這い回る手は僕のアレをなでるようにいじり…なのに突然痛いほどギュッと握った。ビリビリとした刺激が身体を走る。
「いっ!なんで!」
悲鳴をあげた僕に、テディは耳もとでクスクスと囁いた。
「藍。おもらししちゃう?」
「…!!!」
テディに迫られて初めて粗相してしまった日の悪夢が蘇る。鏡越しに悪戯に笑うテディと目が合ってカアッと恥ずかしくなる。あ、いやだ、やばい。身体が変に反応して、出ちゃいそう。も、もれちゃう。ギュッとテディの手を押さえた。
「やっ…やめてよお!!」
「別に我慢しなくて良いのに。…でも我慢してる顔もやっぱりクるね。最高に好きだよ藍」
必死に我慢した。僕は顔が真っ赤で、テディはすっごくうれしそうで、僕の太ももはぶるぶる震えている…。
いやだ、僕は変に支配されている。いやだ、いやだ…。
■■
「さて、これでとりあえず全部かな。藍。そろそろ行こっか」
「あ、テディ待って。僕ちょっとその、喉ガラガラしてるから飲み物飲みたいなーって」
必要な荷物は、テディのキャリーケースとブランドもんのボストンバッグにほぼ詰め終わった頃。
やっとテディからスウェット下を貰って履いたあたりで、僕はテディに飲み物が飲みたいと滑り込んだ。逃げ出すチャンスは少しでも多い方が良い。
「えー?もうこのまま行こうよお」
「や、やだっ。ねー、最後にここのイチゴジュースふたりで飲みたい。半分こしよ?僕、買ってくるし!」
「えー?うーん…」
そう唸るテディだったけど、ちょうどテディに誰かから電話が来た。
「あハイ、もしもし…」
仕方なしに電話に応じたテディ。その隙に、僕は本当にさりげなくスッとドアを出た。
足音を立てず、裸足でぱたぱたと歩く。
よし、よし、よし…!イケるぞ、このまま!どっか誰か別の人の部屋行くでも、とりあえずマンションから出てどこかへ消えるでも…!
久しぶりの廊下に胸が高まりすらした。
やけに長くて広い廊下。自分の携帯はテディに取り上げられたままなのを思い出す。でも良い。解約して、また買い直せば良いよね。
案外スムーズに逃げ出せたかも。僕らの部屋の近くにあった自販機コーナーを通り過ぎる。よし、このままテディにバレずに行こう…!
そう思って廊下を曲がり、階段を降りて行こうとした時。
「ねえ、どこに行く気?」
「!!!!!」
首後ろを強く掴まれ、僕はヒッと振り向いた。
「…テディ…」
いつの間に?全然足音しなかったよ?どうやって?と思ってテディの足元みたら、彼も裸足だった。そんなに慌てて出てきたの?テディも。
「ねえ、藍?正直にお話してごらん?」
テディの瞳が猜疑心に染まっている。殺され…やばいやばいやばい何か考えろ何か!!
「ご、っごめん!自販機の場所、分かんなくなっちゃって…!!すぐ戻れなくてごめん!!」
僕は自分からテディにギュッと抱きついた。嘘が表情でバレないようにするために。
無言で僕の後ろ頭を撫でるテディ…。
「……」
ドッドッドッドと自分の心臓が鳴っている。どう?うまく誤魔化せた…?
「……ふうん。そっか。自販機はねえ、あっちだよ。通り過ぎてるよ忘れんぼさん。やっぱり俺がついてないとダメだね、藍は」
そう言ってきつく手を握られて、僕はあえなく引き返させられた。
怒ったような疑うようなテディの声音が頭に焼き付いて離れない。テディは僕の手を引いてズンズン行ってしまうから、表情が見えなかったから…。
マンションを出ると外は真っ暗だった。
僕はテディが用意した車に乗せられた。目深に帽子を被せられて。
「ま、一応ね」
そんなテディも一応サングラスはしてるけど、こんな目立つ美男が多少なんかやっても全然無意味だった。
「まあ多少撮られても俺は別に気にしないし…」
そう言ってテディは車を発進させた。
景色が流れていく。遠ざかっていくマンション。また他の皆に会えることはあるのだろうか…。
胸がずきりと痛む。
そしてそれとは別の意味でもまた僕はどきどきしていた。走り出した車。逃げ出すチャンスはあと何回あるのだろうか。1回目は既に失敗している。
どうにかまっすぐ家に寄らせないようにしなきゃ…考えろ…!何か手を…!
「そ、そういえば夜ご飯、どうする!?どっかファミレスでも寄ってかない!?」
チラッとこっちを見たテディ。
「んー…まあ良いよ」
そうして一緒に立ち寄った道路沿いの小さなレストラン。突然現れたデカいイケメンに店員さんもやや赤面しつつ戸惑っている。
「藍ぃ。何にする?ハンバーグでもステーキでも、何でも」
「あっうん…そうだねエート」
普通の時は普通にやさしいテディ。適当にオーダーを済ませた。
店内をさりげなく伺うと、良い感じにトイレがこの席からは分かりづらい場所に!これはチャンス!!
「そういえばさ、なんか酔っちゃったのかな?ちょっと気分悪くて…トイレ行ってくるね」
「え、まじ大丈夫?一緒に行こうか?」
「ううん大丈夫!」
「…そう?分かった待ってる」
心配そうなテディを置いて、僕はトイレへとそそくさと旅立った。
「…はああ〜〜〜…!」
トイレのドアをパタンと扉を閉じ、まずは大きくため息を吐い。ここからがまた正念場だ。トイレ続くの窓…は小さい。当たり前に無理。
程々に人が来たら入れ替わりな感じでドアを出て、屈んで出口まで出てそのあと走って…!
何度も頭の中でシミュレーションした。下手なタイミングでバレたら本当にヤバい。
その時。少ししてチリン、とドアベルが鳴り他の人が入ってきた。今だ。走れ、チャンスは何度もない!
行かなきゃ!
そう思ってトイレ出て走り出そうとしてボス、と誰かにぶつかった。
「あっごめんなさ」
「藍」
!!!そのまま抱きしめられて胸板に顔をうずめられた。
「待ってたよ。具合はどう?」
ひっ…。
「…う、い、いや、別に。休んだら良くなったよ…」
「ふうん。そっか。よかった…久しぶりのお外だから緊張しちゃったかな?」
「うっうん。そう、なの。実は」
心臓のバクバクが止まらない、どうか僕のドキドキがバレませんように…!
「だよねえ?…いやあ、俺ってばさ。藍が俺から逃げようとしてるのかなあなんて思っちゃったよ。…思い過ごしだよね?」
心臓を素手で握られるような声だった。
「…あ、当たり前じゃない、テディは…僕の旦那さま、でしょう?」
「!…藍い。分かってるじゃない」
とびっきりのご機嫌な声でテディは僕を優しく撫でた。人目につきづらい場所ではあるけど参った。それにしても本当にどうしよう…どうしよう…。
その後店を出ると、テディは無言で車を走らせた。ガソリン切れそうじゃない?って僕が言ってみてもそっけない返事。猛スピードでガソリンスタンドを通り過ぎ、車はどんどん暗がりの道へ…。
「ねえ、テディ…」
「……」
端正過ぎる横顔は怖い。血の通わないお人形さんみたいだ。
ど、ど、どうしよう。ここで惨殺?明日の新聞の見出しになっちゃうの。や、やだああ…。何か足の間がむずむずする、最悪。ここで粗相とか本当に無理だよ。どうなっちゃったの?僕の身体。もう、もうむしろころしてくれえ…。
流れゆく景色を見ながら僕は涙ぐんでいた。無情にも街中の明かりがどんどん遠ざかっていった。
「さ、藍。ついたよ。ここが俺たちの家だ」
「あうっ…」
たどり着いたのは一軒家。ポツン、と自然の中に建っていて隣の家は大分先だ。何この映画で出てきそうな家…?
「さ。中はいって」
そっと背中を押されて中に入る。見た目は森の中のちょっとしたコテージみたいな、そんなかわいい感じ。入ると中も綺麗。家具も一揃いある。すぐ暮らせそうではある。
だけど…。
僕はさああっとなっていた。逃げ出す余地はあるのだろうか。ウグ、なんか込み上げてきた。でも…どうにかするさ…!
「…藍」
バタン、てドアを締めて鍵をガチャ!と勢い良く締める音が聞こえた。そのまま後ろから抱きしめられた。
テディの香水がふわ、と香った。誘うように身体を撫でられる。
「やっと2人っきりだね」
「う…っうん…」
「藍。だいすき。藍は?」
「も、もちろん…好きだよ」
テディは僕のスウェットに手を滑り込ませる。ぷり、と白い尻が剥き出しになって僕ははずかしい気持ちでいっぱい。明るいこんなところでなんて…。
「…このまま?ここで…?」
「そう。初めてここに来た日の思い出をね、藍に刻んでおきたいし…まあ、俺が我慢できないだけだよ」
そう言って荒々しくキスをして、ぐいと僕のスウェットを剥いだ。
「あん、やだ、んっや」
「藍、藍」
息もつけないくらいに荒く僕を穿つテディ。玄関先の壁に手を尽かされて、後ろからそのままテディに抱かれている。ぐい、と片足を大きく持ち上げられて…変な角度でおかされるといつもと感覚が違う。おかしくなってしまいそうだ。
「やだ、やだあ…っ」
「いつもよりキュウキュウだよ?やだじゃなくて、気持ちいいって、言うんだ、よ!」
「ああああん!」
ずぶずぶと僕を好き勝手に穿つテディ自身は、僕のなかから出ていってくれない。ギリギリまで引き出しては激しく穿つ、その繰り返し。キスも深く同時にされて…。
「ん…!」
ついに身体がびくびくと痙攣する。ぱた、ぱた…と僕自身の先端からこぼれた液体。ぐっとテディも身体をこわばらせて欲を放った。
「…っはあ、藍…」
チュ、とこめかみにキスされる。頬に手を添えて、また深くキスされた。こうしてる時のテディは、僕を宝物みたいに扱う。『僕を宝物の様に想う』っていうのは多少は彼の中の本心なのかもしれないけれど…。
「はあ…さ、藍。俺たちのお部屋はこっちだよ。おいで。ベッドでちゃんと抱いてあげる。藍が逃げ出さないようにね」
逃げる隙など与えない手が、僕を地下室へと引っ張っていった。
続く

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