ヤンデレ

【ヤンデレメーカー#23】寮母辞めます

雷さんに首をギリギリ絞められる。

「俺のモノになるって言えば良いだけだろ!じゃなきゃこのまま締め殺すぞ」

僕はそれでも首を振った。雷さんとそんな無責任な約束出来ない。

酸欠になって気を失う直前、めちゃくちゃ傷ついて悲しそうな雷さんの顔が視界にはいった。

「…藍!」

普段あんなに強気でぶっきらぼうな雷さんの、あんな顔僕は見たくなかった。誰にもあんな寂しそうな顔はしてほしくないのに…。

「藍、藍!」

崩れ落ちた僕に心底慌てて声をかけている。分かってたよ、本気で僕を殺そうだなんて思う人じゃないってことくらい…でも今はすごく眠くて、お返事が出来ない。僕は雷さんを嫌いじゃないこと、せめて伝われば良いな、って…。

 

■■■

ハッとして起きた。やばい、どれくらい寝てたんだろう。あれ…何があったんだっけ…?あ、雷さん…来てたっけ…?今は…いない…?え、あれ夢だった…?

「!」

その時僕はゴッホゴホと咳をして、そうだ首絞められて気絶したんだと思い出した。今そばにいないところを考えると、僕が気絶している間に帰ったらしい。

いつも通りの真っ暗な風呂場で天井をぼんやりと見上げる。

いまどうしてるんだろう。撮影行くっていってたっけ。ああやって強がっているけれど、僕が思い通りにならなかったことで落ち込んだりしてないといいな。ああいう人が見せる寂しい横顔は見ているこっちまで傷ついてしまう。

 

サミーさんは?僕なんかからのおせっかいメールを喜んでくれる稀有な存在だったけど。サミーさんも事情は分からないけど、誰かに構って欲しかったのかなあ。快活に笑うサミーさんがしょんぼりしてる背中なんて、想像しただけでつらくなってくる。

僕からのメッセージなんか来なきゃこないでまあいっか、ってむしろそう思っててくれるなら良いのだけれど。

 

…亜蓮さんは?どうしてる…?

僕は目を閉じた。会えないけど、面影を思い出してドキドキした。でも僕のこともうどうでも良いんだっけ…。

つ、と涙がこぼれ落ちてしまった。

それと同時に自分が情けなくて、自嘲気味に笑えてしまった。

僕って要領悪すぎるな。一丁前に寮母やろうとしたけど、かえっていろんな人の地雷を踏み抜いてしまった気がする。触れてはいけない心の扉に触れてしまったというか…。

寮母、向いてなかったな。なっちゃいけなかったかな、僕は。

 

次テディが帰ってくる時。

僕はホントに寮母辞めるからここから出してくれって、お願いしてみよう。

僕のこと監禁だなんて、そんなことわざわざしなくたって良いんだよって、併せて伝えよう。
あの子は僕に執着し過ぎている。まったく目を覚ませって言うんだよ。

雷さんもそう。僕に認められたいとか褒めて欲しいとか、嘘だろ?って感じ。

 

僕なんかいなくたって皆生きていけるんだよ。

当たり前のことを思い出してもらわなきゃ。

 

改めて話したら、きっと分かってくれるはず。あ、そっか、別に藍いらないかって。憑き物が落ちたように。

 

もしもそうしたら、僕は最後に亜蓮さんに逢いたいな。願いが叶うと良いのだけれど。

 

 

 

続く

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