ついポロ、と溢れた涙を見てテディは目に見えて苛ついたみたいだった。
「亜蓮はプライド高いから。フラれたと思ったらすぐに興味なくす。藍のことなんかもう眼中にないね」
「…!」
そして容赦なく僕の心を刺していく。
ボロ、と溢れた涙をテディは忌々しそうに拭き取って、指先で弾いて捨てた。
「他の男のこと考えて泣くとかさあ…俺を萎えさせてそんなに楽しい訳?ほんと、まじでイライラするよ。ころしちゃうかもね」
「…ひ…っ」
テディの片手が僕の首に絡みつく。こいつはやりかねない。下手に刺激すると何をするか分からない。
でも…
「……」
無言でポロポロ涙をこぼすのを僕は止められなかった。
自分でもおかしいなって思うんだけど、そんなに話たこともない亜蓮さんだったけど、僕は心底惹かれていたみたいだった。
フラれちゃった、終わっちゃったんだって思ったら苦しくて、どうしようもなかった。
「…藍。亜蓮のことなんかで泣くの、辞めろって!」
「……」
「辞めろよ!!」
自分でやったことのくせにどうしてそんな傷ついた顔するんだ
テディは僕をかき抱いた。
「やだ…他の誰かのことで泣かないで…どうして藍は俺のものじゃないの?心の中まで手に入れたいのに…藍が1番欲しいのに!」
そんなこと言われたって、僕はどうしたら良いのだろう。
「…藍を俺のもんにする」
僕はギュ、と目を閉じた。だってやだって言ったって、どうせテディは僕をねじ伏せるだけだ。
冷たい涙が頬を伝って流れた。
***
テディは僕の拘束をロクに解かず、でも衣服だけ荒々しく剥いで、僕を抱いた。
風呂場の壁に手をついて、僕を貪るように後ろから抱くテディをどうにか受け入れた。
「藍、藍!!誰にも渡さないから」
耳を食む。首に噛み付く、テディの抱き方は野良犬が久しぶりの獲物にありついた時みたいだ。猛獣かもしれない。
「…あ、ん…!」
男の身体は正直で、触られれば反応するし、出すものも出す。
びくびく震えた身体を、テディはきつく抱きしめた。
「…藍、藍。やっと俺のもんになったね。やっとだ…大丈夫、ずっとここに住めば良いよ。俺がずうっとお世話してあげるから…」
そう言ってボディソープで身体を優しく洗ってくれた。僕の足の裏さえ丁寧に洗ってくれる、歳下の綺麗な顔した男の子。職業はアイドル。母親はいない。
身体を伝って足の先まで流れていくボディソープの泡をただただ見ていた。
僕はテディが嫌いじゃなかったけど、好きだったか分からない。抱かれておぞましくなるような子じゃないけれど。でも僕が好きだったのは亜蓮さんだった。好きな人に優しく抱いてもらう権利はもうなくなっちゃったのかな?亜蓮さん、教えてよ。僕のことほんとうにきらい?
「藍、流すね」
頭からシャワーを浴びせられた。
温かいシャワーの中で、やっぱり冷たい涙は溢れた。
続く

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