「ん…!」
変なところに手が滑り込んできた!
「テディ!辞めろって!」
「良いじゃん」
そのままなし崩しに僕に手を出そうとしてきたテディ!いくらイケメンでもそれとこれとは話が別!!
僕はひたすらに暴れてベッドから滑り落ちた!ダッと走り出そうとしたが、服の裾を掴まれてのどがグイッとのけぞった。
「あーもー分かったよ!今日は辞めといてあげる」
そういってテディは僕をベッドに再度引き摺り込んだ。すごい力だった。再度僕をムギュ、と抱きしめた。
「おやすみ、藍」
ハートマーク付きのセリフを飛ばしてきた美男子は、じきに寝始めた。
僕はひたすらに眠れない夜を過ごした…。
***
翌朝。
またもスウウと僕の匂いを嗅いだテディ。
「めっちゃ良い匂い。俺の匂いがちょっとするのもグッドだ」
そう満足気に言った。僕はもう何て言えば良いのか分からなかった。
今日は撮影があるというテディ。
部屋を出ていく前にこんなことを言ってきた。
「藍。これあげる。ファンの子から前貰ったやつなんだけど」
クマのぬいぐるみを手渡された。
綺麗な毛並みのゴールド系茶色のクマくん。
「今度から俺が泊まりで帰ってこれない時はこれ抱いて寝てね。俺だと思ってさ。『テディ♪』って話しかけたりしても良いよ」
ニコニコ笑って言うテディ。機嫌良く続けた。
「一緒に眠る習慣を藍の身体に覚えさせないとね。いずれ藍にも俺がいないと眠れない身体になって欲しいじゃん」
…!!!
「な、何言って…!」
「お互いがいないと眠れないなんて最高にクールだろ?ちゃんとクマくん抱いてる写真夜送れよな。
また連絡する」
チュッとキスを掠め取るとテディは出て行った。
***
やや呆然としながらも、残された僕はとりあえずテディの部屋を片付けていった。合鍵は持っている。
テディ…まじで何なんだ…?
距離の詰め方が尋常じゃない。
あと会話の端々から仄暗いさが漂っている。まじ、何…?アイドルってやっぱそんな大変なの…??
モヤモヤが膨らんでいく。
その時着信が鳴った。見慣れない番号だ、パッと出た。
『もしもし?あなたが新しい寮母さん?』
メッチャ良い声に内心ドキッとした。ん?新しい寮母さんて前もいたの?
『あ、ハイそうです!』
『俺の部屋すぐ来れる?701なんだけど』
『今行きます!』
ああ、何か助かった!そそ、他のメンバーもいるし、きっとテディのことだってどうにかなるさ!
とか思ってたけど。普通に他のメンバーもやばいと後に知ることになるのである。
***
701号室の戸をたたく。
「こんにち…!?」
ガチャ、と出てきたのはこれまた目が覚める様な美男だった。真っ黒で少しウェーブがかった髪にがっしりした体格で、野生味ある雰囲気はカッコ良かった。やば、ちょっとタイプかも、なんて…。
「入って」
それだけ言って僕を部屋に招き入れた。ちょっと無愛想なのもクールでカッコ良いとか思っちゃってた。
「初めまして、藤井 藍って言います」
「俺ね、亜蓮。よろしく」
グッと握手してくれた手は、甲に血管が少し浮いている。男物の大きな腕時計が似合う手だった。
「何でも頼んで良いんでしょ?そしたらなんか飯作ってくんない。作り置きも欲しい。高い外食はもう食い飽きたんでね」
「了解です!」
買い物に行ってきて僕はアレコレと作った。肉じゃが、筑前煮、卵焼き、鯵フライ。貧乏フリーターは料理が超得意分野なのだ。
広い広いシステムキッチンは使い勝手が最高だ。良いなメッチャ広い。ここでダンス出来るじゃん、しないけど。
「ふーん?うまいじゃん。こりゃ助かるなマジで」
後ろから覗き込んできた亜蓮さんだった。
ワカル、誰かに手料理作って欲しい気持ち。僕は自分で自分に振る舞うのみだけど!
あとはチャーハン作って終わり、そう思ってフライパンをあっためていた時。
「ってか君。何持ってきたのソレ」
「あー、これはですね…」
とりあえず持ってきたクマくん。キッチンの隅っこに置いていた。
その入手のいきさつを超ザックリ話した。
「昨日、その。テディくんのお部屋で色々雑用やらせてもらったんですけど。テディくんが俺だと思ってねーって。いやー、彼、本当フレンドリーで冗談がうまいですよねーっ」
亜蓮さんの瞳がキラ、一瞬光った気がした。
「クマのぬいぐるみで牽制したいんだろ。まったく面倒なヤツだよ、テディは」
そう言って亜蓮くんはクマくんを回収すると、ポイっとゴミ箱に投げ込んでしまった!
ぼさあ!とゴミ箱に沈んだクマくん!
「あ!!えええー!?」
「良いじゃんテディなんかほっとけよ。どうせあいつ誰でも良いんだし」
「え!?いや、さすがにそんなことはないんじゃ…!?」
「どうせそうだって。アンタ手出されそうにならなかった?」
うっ!なったけど!!
「い、いやー、でも良い匂いだね抱き枕になってみたいに言われて…!」
あれ僕は何を口走ってるんだ?頭ん中がグルグル渦巻いてる!あと何でテディ庇ってるんだっけ!
「あいつが?…ふーん、じゃあ結構ホントに気に入ってるんだ」
多分そういうコト!
僕はやや首を傾げつつもコクコクうなずた。
「でもな藍。お前は俺んとこにずっと来い。俺の言うことを1番に聞け。分かったな」
ドキンと鼓動が鳴った。
続く

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