※はじめに
・めちゃくちゃ鬱ストーリーです。
・胸糞悪すぎる話です。
・あまりに危険なので期間限定公開になるかもしれません。
・それでも読むぞ!という方のみどうぞ。苦情は受け止められません。
・本当に大丈夫ですか!?良いですね!?
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最近、付き合っている彼氏が冷たいなとは薄々気づいていた。
「…やだ…別れたくない…」
「何度も言わせるな…」
ふうと長い髪を掻き上げて己龍は言った。褐色肌に銀髪の長い髪。黒い中華風の服装と不思議とマッチしていて、そのミステリアスな風貌に僕はしょっちゅう見惚れていたっけ。
「……やだ…」
我慢できずにぽろ、と泣いてしまった。
「ミオ。泣くんじゃねーよ。俺がイジめてるみたいだろ」
心底イライラした様に己龍は顔を覆った。
僕はしゅんと俯いた。ふいに長い三つ編みが目に入る。長い長い髪を己龍が丁寧に編み込んでくれたやつだった。あれは付き合ってすぐの頃だった。
「とにかく今日で俺たちは終わり。それだけ。もう会うこともねえから」
「やだ、お願い。友達ではいたい…」
「無理だっつってんだよ」
どうして己龍はこんなに冷たくなってしまったんだろう?僕がトロいから?冴えない容姿だから?教えて己龍。
「僕には己龍しか友達がいない。お願い…」
物心ついた頃から、マスターにペット代わりに飼われている僕。マスターは忙しくてあまり相手をしてくれない。
マスターの友達、ということである日紹介されたのが己龍だった。
他愛もない話も、ちょっとしたトランプなんかのゲームも、本当に楽しかった。初めてで最初の友達だったから。
この無機質で何もない部屋。ずっと一人ぼっちで持て余していた時間。いつしか己龍が僕の人生の全てになっていた。
「……っ」
ひっくひっくと嗚咽した。楽しかった。己龍と一緒に過ごした日び。僕の初恋。
「ったく…!お前良い加減にしろよ!」
バッシャ!と水を掛けられた。
呆然として見上げる。冷たい瞳の己龍が僕を見下ろしている。己龍の持っているコップ。カラだ。
「もうこの部屋には来ないから。じゃあな!」
ダン!とテーブルに手をついて己龍は部屋を出て行った。部屋の鍵は自動で閉まった。そういう仕組みだから。
何も言えず、ただ思い出していた。
あの手で優しく撫でて、『ミオ、こっちおいで』ってよく言ってくれたっけ、と。
膝に座って甘えて、幸せだった。今までずっと…。
だけど己龍を追いかけることは叶わない。自分の首輪にそっと触れた。
***
俺は部屋を飛び出したその足で、全速力であるビルへ向かっていた。
階段を駆け上がる。バン、と開けたドア。
部屋ん中には携帯を片手にニヤニヤしている嫌な顔をした男。
「おい!!」
声を掛けた。チラ、とこちらを見上げる。ハイエナみたいな瞳のやり方だった。ミオのマスター、俺の大嫌いな男。
「どうだ、これで良いんだろ、これで良いんだろ!!!」
「まーね。スーパーチャット1000万達成、おつかれさん」
「ミオと付き合って振る。その様子を全部隠し撮りの生配信で流す。んで最後振る時、スーパーチャットで1000万越えたらミオを解放…あんた、サイテーだよ!」
悪びれる様子もないミオのマスター。
ミオを思うと身が引きちぎれそうだった。
「別に。自分で買った奴隷をどうしようと人の勝手。いやー、生き物の生配信は物好きが結構集まるから儲かるんだよね。
スーパーチャット結構入るし。ミオちんはいっぱい稼いでくれたねー。
ま、あのミオの配信見て惚れ込んじゃって、解放してやりたいとか連絡してくるアンタも相当だよ。前金2000万、つったら律儀に出してくるし。
純愛とか寒くてめっちゃウケるわー」
「うるせえよ!!良いから、良いからさっさとミオの首輪の鍵、渡せよ!!!」
はあいと投げやりに渡してきた鍵をひったくった。
もう良い、用は済んだ。こんな男と同じ空間、1秒だっていたくない!
足早に部屋を出ていこうとした俺に、背後からその男は言った。
「そいえばさあ。ミオには昨日小さな拳銃渡してあるんだよね。いざって時に使っていいよ?って。まーあれであの部屋から逃げるなんて無理なんだけどね」
何言って…
振り返る。
ニヤニヤと笑っているその男。
「急がないとヤバいかもよ?ミオ、さっきから様子が変だから。…良いじゃん。最後に盛り上げてよね」
携帯の画面をヒラヒラさせながら見せてきたその男。
LIVEと表示されているその画面では、ミオが拳銃も持って部屋をウロウロしている。
「や、やめろ、やめろ!!」
俺は猛然と走り出した!人をかき分けぶつかり、再度ミオの部屋の前まで戻ってきた。
祈るような気持ちで部屋の鍵を開けようとした時。
ダァン!と中で銃声が響いた。
そんな、まさか…!
ドアを開けた。
中で目にしたものはー……。
end
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◆あとがき
ミオが撃ったのは自分かもしれないし、別の何かかもしれない。
ほんのり希望が残せるところで敢えて終わらせています。
ミオと己龍、明るい未来につながっていることを私自身祈っています。
命の売り買いという人間の悪しき行いと、テクノロジーの進化が組み合わさるとこういう事態があり得るなと思って書きました。
でもいつの時代もヒーローはいるものです。
きっと地獄の底に救いの手を差し伸べる誰かもまた、存在し続けるのでしょう。
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