オメガバース

【片想い症候群#6】誰かの片想いが成就する時

※飛鳥視点です

「・・あ、おはよう!咲也!」

朝。通学途中で咲也を見つけて僕は駆け寄った。

週末、全然連絡つかなかったから心配してたんだ。電話とかしたかったのに。

「・・!あ、あすか・・」

全然目を合わせてくれない咲也。

・・?

「どしたの?」
「・・何でもないよ」
「あ、待ってよ!」

瞳を伏せ、さっさと行ってしまった咲也。

何が何だか分からない。
だけど咲也の翳りある瞳に、僕はなんだか妙に嫌な予感がしていた。

 

 

 

何だかずっとよそよそしい咲也。

「僕、何かしちゃったかな?」
「・・別に・・」

思い切って聞いてみてもそっけない返事。
何もない訳ないよねこれ・・!

でも会話の糸口すら掴めないまま午前中の授業は終わってしまい、いつも昼ごはん一緒に食べているはずの咲也はふ、とどこかへ消えていった。

僕を置いて・・。

すごく寂しくなってつい連絡した、海里。

『お昼一緒に食べない?』

おそるおそる送ったLINEには即『もちろん』の返事。僕はもの凄く安堵した。

 

 

 

「咲也さんが突然冷たい。・・ふ〜ん何だろね」

屋上でふたり並んで昼食のお弁当を食べる。『それちょうだい』と僕のお弁当の卵焼きを盗んでいくことも忘れない海里。

「心当たりなくってさあ・・!ホント困ってるんだよお・・」

なんて年下の海里に泣きついた、ダメな僕・・。

「・・って言われても俺はさすがに分かんねえなあ・・ごめん飛鳥」

苦笑しながら大きな手で頭をぽんぽん。

「ま、昼飯は今度から俺が一緒に食うよ。それで良いじゃん?咲也さんの機嫌なおったら今度から3人で食えば良いしさ」

「え、うん・・」

ニコと笑った爽やかな笑顔。変にドキッとした。この海里を振ったのはつい先日のこと・・。

「あ。飛鳥。そのカフェオレちょうだいよ」

僕が何か言う間もなく、僕の飲みかけのカフェオレを勝手に飲んでいく海里。

「お礼にねえ、そうだなあ・・俺の弁当に一緒に入っていたこのカントリーマアムも飛鳥にやろう。母さんが入れたっぽいやつ。ほらアーンしろ」

うぐぐぐ。割と遠慮なくチョコ味のカントリーマアムを口につっこまれてムグムグしてしまった。

「その顔最高」

心底嬉しそうに海里は笑った。

 

 

昼食終わり。機嫌良くカラの弁当箱を包みながら海里は言った。

「あ、そういえばさあ飛鳥。俺ふと思いついたんだけど。咲也さんが素っ気ない理由」

「えっ何!?」

「慶太のことじゃね。進展あったとか?」

雷に打たれた様な衝撃がその身を走った。

そんな・・そんな・・!!!
でも僕の直感が『それで合ってる』と囁いている・・!

「・・うそだ・・そんなの・・慶太・・!!」

絶望に打ちひしがれた僕に、やや顔を顰めて海里は言った。

「そうやって慶太慶太って・・。そんな顔するなよ飛鳥。じゃあ確かめてみりゃ良いじゃん。一緒に咲也さんとこ行こうぜ。俺が代わりに聞いてやる」

有無を言わさない手がグ、と僕の手を掴んで引っ張っていった。

 

 

昼休みも残すところあと10分。

ひと気のない廊下に僕と海里と・・咲也。

教室から連れ出した美貌の親友は、無言で外をじっと眺めている。その驚くほど綺麗な横顔。

「咲也さん・・もしかして兄貴と何かあったんですか」

咲也はチラと海里を見上げた。何か、意味ありげな視線・・?

「・・僕が慶太と寝たって言ったらどうする?」

驚いて目を見開いた僕。海里と顔を見合わせた。

「そ、そんな!」
「嘘だよ!んなこと・・ある訳ない」
「な、何でそんな変な嘘つくの!?咲也、今日変だよ!」
「別に変じゃないよ・・う・・」

グラ、とふらついてしゃがみ込んだ咲也。あ、もしかしてヒートのせいかな。咲也はヒートが重めだから・・。

大丈夫?と手を貸そうとした時。

「咲也!大丈夫か!」

廊下の向こうから現れたのは慶太。颯爽と現れると、膝をついて咲也の背をさすった。

「咲也。無理するなってこの間言ったろ。ほらお茶」

なんて甲斐甲斐しく世話をしている・・!?
ってかこの間って何!?

それに何か2人の間に漂う恋人っぽい雰囲気に、僕はただひたすらに動転していた。

「な、なに・・どうしちゃったの?ふたりとも・・!?」
「・・見てわかるでしょ」

そう言って、咲也は慶太の首に自身の腕を絡めた。

 

 

咲也を支える様にして、じゃあなと歩き出した慶太。

去って行くふたりの後ろ姿を、僕は何も言えずに見送った。気づけばぽたぽた泣いていた。

ちょうど始業ベルが鳴った。でも、授業なんて気分じゃない。

「・・咲也さんが慶太にぐらつき始めたらもうどうしようもねえよなあ・・」

頭上からそんな無慈悲な声が聞こえた。

「海里、そんな他人事だと思って!!!」

悔しい様な悲しい様な感情がないまぜになって、海里にきつい言い方をしてしまった。

 

じっと僕を見下ろし、海里は言う。

「飛鳥、慶太は諦めろ」

冷たい瞳でそう言った。

 

 

うなだれて家路についた放課後。勝手にくっついてくるのは、海里・・。

夕暮れの中。きょう色んなことがあった校舎に背を向け歩き出す。

じゃり、じゃりと靴底が砂を踏む音が妙に頭の中に響いていた。

「!危ない!」

ブウンとすぐ側を走っていった自動車。

「飛鳥!しっかりしろ!危ないだろ」

「・・なんかさ、色んなことがどうでも良くてさ・・。何かもうこのままぱっと消えれたらどんなに楽だろって・・」

「んなこと言うなよ・・」

悲しそうに顔を歪めた海里。

「ちなみに今日はおばさんは?家にいんの?」
「・・親戚の家に用事で泊まりにいくから今日、明日、いないよ・・」

ウチは父さんが単身赴任でそもそも不在。
今日はひとりか・・。

「・・今日は俺が飛鳥ん家に泊まってやろうか。飛鳥を今日1人にするの、心配だし」

「え・・」

「まあまあ。幼馴染だろう?俺たち。辛い時は俺に愚痴っとけば良いんだよ」

キュ、と手を握られてドキっとしてしまっていた。

 

 

海里は一旦自宅に帰って着替えなんかを持ってきて、本当にウチに泊まることになった。母さんが多めに作っといてくれたカレーを2人で食べた。カチャカチャとスプーンの金属音が鳴っていた。

「そういえばちいさい時、よく皆でこうやってお泊まり会したよね」

海里、僕、慶太の3人で・・。

あの頃は将来、慶太の番になると信じて疑わなかった。

カチャ・・と手を止めた僕を、海里はチラと見上げた。

「・・まーた慶太のこと考えてるんだろ」

そう言って僕の眉間をぐりぐりと押した。

「いたい・・!」
「飛鳥に眉間の皺はいらん。かわいい顔が台無しだ」

胸が苦しくなった。
慶太はそんなこと言ってくれたことないから。

 

海里はずっと寄り添ってくれた

お風呂に入る時でさえ『変な気起こすといけないから』という理由で、僕が風呂に入ってる間は脱衣所でスマホを弄りつつ話し相手になってくれていた。

湯船から話しかけた。

「・・海里ってさあ」
「うん?」

「過保護だよね」
「心配だからな。・・良い番になると思うけどな〜俺」

 

それには何も応えられなくて、キュと蛇口を捻って聞こえなかったことにした。

 

 

夜、僕の部屋。

僕のベッド脇に海里用に布団を敷いた。
寝る準備をして電気を消した。

暗闇の中で何となしに言葉はこぼれた。

「どうして咲也は慶太になびいちゃったのかな・・」
「・・まあ人の気持ちって変わるしな」

「なんで僕じゃダメだったのかな・・?」
「飛鳥はダメじゃないよ。まあ、兄貴にとって咲也さんがドンピシャだった、それだけだ」

聞けば聞くほど胸が苦しくなっていく。

「じゃあどうして僕は咲也として生まれなかったの?どうして大企業の御曹司で誰もが羨む美少年、咲也じゃないの?どうして!」

「・・飛鳥」

「それか海里、代わってよ!僕が海里だったらずっとせめて家族としてそばにいられたのに!」

言葉は止まらない。

「飛鳥」

海里は布団から這い出て僕を抱きしめた。

「いずれこうなる運命だったんだよ。仕方ないさ。誰のせいでもない。

飛鳥には飛鳥の番になりたい奴がここにいるだろ。これも運命って、考えてみない」

 

ぽろとこぼれ落ちた涙。

海里はそれを指先で掬い取り、暗闇のなかで僕にそっとキスをした。

 

これも運命だった・・?

 

 

続く

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