オメガバース

【片想い症候群#4】海里の手のひらの上

※今回は咲也視点です。

土曜日の昼。
ややどんよりとした気持ちを引き摺りつつ、渋谷の待ち合わせ場所へとやって来た。

遅れるのも悪いしなあと、ちょっと早めに着いて待っていたら。

「よう!咲也」

ううっ・・この声は・・

もの凄くニコやかに現れたのは、予想通り慶太だった。背が高くてガタイ良くて精悍。この人この前僕にフラれたのに、何でこんなメゲずに登場できる訳?

そう思いつつ、海里くんが見当たらないことに気づく。まさか・・

「あれ?海里くんは・・?」

「やべ携帯忘れたとか言って途中家取りに戻ったんだよアイツ。ごめんな本当」

ええ〜!?

手を合わせて心底すまなそうな慶太。・・嘘じゃなさそうだけど。

「とりあえず先店入って食べててだってさ。って訳でとりあえず行こ!」

そう嬉しそうに言って僕を促す。連れ立って歩き出す、僕ら。

・・や、いや!これじゃデートになっちゃうよオ海里くん早く来てええええ・・!

なんて極小の叫びは、渋谷の喧騒の中に掻き消された。

 

 

 

雰囲気の良さげなイタリアンに連れて行かれそうになるのを、『今日は長い時間居座る予定だから』とファミレスに強引に変更させた。

ちぇっと残念そうな慶太。良いんだよ僕らはただのトモダチ!

席に通され、とりあえずメニューを選ぶ。巨大なメニュー表に隠れる様にして何にしようか決まらないフリをしていた。

ううっ・・気まずいよお・・誰かああ・・!

「今日はありがとな」

「ウチの弟のためにわざわざ。助かるよ」
「え、あっ・・うん」

チラ、とメニュー表から顔を覗かせた。切長な瞳とバチと目が合ってしまってちょっと動揺した。

「あと俺と休日に会ってくれて。俺この間フラれたじゃん」

ふふと苦笑して見せた慶太に、胸がうぐっと詰まった。

「今日は本当は来ないんじゃないかと思ってた。でもこうして会えて嬉しい。

ま、適当に今後も頼むよ。友達は辞めたくないんだ」

ニコと爽やかに笑った。本当、笑顔だけは爽やかで良いんだよね。僕だって友達なら全然良いのに。

「ん・・なら、良いよ・・」
「やった!!」

ニコニコと本当に嬉しそうだ。な、なぜ僕をそこまで・・?工藤先輩がこうなら良いのになあ。

 

いや。良いんだ僕らのことは!そんなことより。

「と、ところでさあ。今日って海里くんの恋の相談会なんだよね・・?」

「ああ」

「その・・海里くん飛鳥が好きって、知ってた・・?」

「いや?全然。でも海里から聞かされて、そっかあのふたりめっちゃ良いじゃん!って俺思っったんだよな!早くくっついて欲しいわ」

何の悪気もなくニコニコ笑って言ってのけた慶太。あまりの飛鳥への脈のなさに、僕がグッサリ傷ついていた。こんなの飛鳥の前で絶対言うなよ!?

「お似合いじゃん!それに・・」
「そ、それに?」

これ以上何を言う気なんだ。恐々しながら、慶太の続きを待った。

声を落としてヒソヒソと慶太は言う。

「海里と番になったらあのおさるみたいに色気のない飛鳥にも、色気とか出んのかなーって」

ぷくくとイタズラな顔で笑った慶太・・!

「お前えええおさるは言い過ぎだろうがああ!」

半ギレして慶太の胸元を掴んで揺さぶった。

「謝れ!飛鳥に!!!」
「おおいなんで咲也がキレてんの!?」
「親友だからだよ!!!」

飛鳥は・・飛鳥は確かにオメガの割に色気がない・・っ!それを本人だってちょっと気にしてるのに!!!よりによって好きな人に『おさる』なんて言われて・・!僕が先輩にそんなこと言われたら耐えられない!!!

「・・咲也は友達思いだな、はは・・っ」
「!」

そう言って僕の手首を掴んで無理やり引き剥がした。

「やっぱ随分細いね」

その強い力に一瞬ドキンと心臓が跳ねた。精悍な顔つきは雄って感じ。

手首掴まれたまま、1〜2秒、いやもっと?見つめ合ってしまって・・

 

 

「遅くなってすみません!」

その声にパッと振り返った。

申し訳ないと頭を下げている海里くん。

「・・あっおつかれ!ここ、慶太の隣に座って!?」

弟くんの登場に救われた。やれやれ・・
変な動悸は無かったことにした。

 

 

一通り注文を済ます。

「それで・・単刀直入に相談なんですけど。飛鳥と僕の間を取り持って欲しいんです」

真剣な眼差しの海里くん。
うう、慶太がいる前だと話しづらいな。

「う、でもその・・飛鳥は・・あんまり熱しにくいタイプって言うか・・」

君の兄さんにずっと惚れてるんだけど・・!

「好きになったら一途ですよね。知ってます、昔から・・。でもそんな飛鳥だから好きなんです」

ああ、慶太が飛鳥にこう言ってあげてくれたらなあ・・。親友の僕は複雑な気持ち・・。

「・・ちなみに君のお兄さん、さっき飛鳥のこと色気ないからっておさるって言ったんだけど。海里くんどう思う?」

「は?殺す・・」
海里くんは本当に殺しそうな瞳で慶太を振り返った。気まずそうにまあまあと言った慶太。

「僕にはおさるじゃないです。そう思ったこと1回もないし。飛鳥の良さは僕には分かります。ずっと近くにいたから」

!なんて良い子なんだ。

海里くんは慶太にちょっと似てるし、飛鳥が海里くんを好きになれたら凄く幸せなんだろうなあ。

「ちなみに飛鳥のどこが好きなんだよ」
割り込んだニヤニヤ顔の慶太。
「おさるって言う奴には教えない」

似てるからって好きになれる訳じゃないのは僕もよく分かるけどさ。

「良いから教えろよ」
「無理」

やいやい言い合う兄弟を何とも言えない気持ちで僕は見つめていた。

2人が入れ替わってくれたら?
それかほんの数%でも、海里くんの熱量が慶太に移れば?

なんて・・。

 

「ま、そんなことより。咲也さん。俺と飛鳥とうまく行くように、手を貸して欲しいんです」

「うん・・」

チュウとドリンクバーで仕入れたアイスティーを吸った。

正直あまりにも慶太は飛鳥へ興味がないから、海里くんから先にLINEで相談を受けた時に『応援する』と言ってしまったんだけど。

あれは正解だったのかなあ・・?

でも脈のない慶太より、好きって言ってくれる海里くんの方が親友としては良い気もしたし・・。

 

「それで、僕は何したら良いの?」

「僕のこと良いんじゃない、って時々飛鳥に言ってもらえたら。無理にじゃなくて良いので。

あとは良かったら咲也さん、飛鳥、俺の3人で遊びに行くとか」

おお。それなら友達の範囲だ。

「それだけで良いの?」

 

チラ、と僕を見上げて悪戯に海里くんは言った。

「あとは・・慶太のネガティブキャンペーンをするとか」

 

 

続く

【片想い症候群#5】陥れる者、誘惑する者、騙す者※今回も咲也視点です。 「慶太の・・ネガティブキャンペーン・・?」 キョトンとして尋ねてしまった僕に、海里くんはニコって笑っ...
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