オメガバース

【stardust#7】浮気疑惑を掛けられて

「星屑くん!しっかりして!」

ハッと目を覚ましたら雨宮先生がいた。気を失っていたらしかった。

「大丈夫!?まさか階段から落ちたの!?」

「・・え、はい・・そうみたいです・・」

起き上がる。

「大丈夫!?」
「あ、はい。頭はズキズキするけど、なんとか平気です。あ、それじゃ・・」

そのまま立ち上がって帰ろうとしたけど、心配した雨宮先生に医務室にムリヤリ連行されてしまった。

無理しないでと、お姫様抱っこで・・。

 

『疑念』

 

「うん、軽い脳震盪起こしただけで大きな問題ないね」

医務室の先生のチェックを一通り受け、僕は命に別状はないマークを取得した。

「えっでも病院でちゃんと検査した方が良くないですか!?」

雨宮先生が食い下がる。すごく心配してくれてありがたいんだけど、ちょっと過保護な気がする。

「大丈夫ですよ。今日1日様子見するくらいで」

やや苦笑しつつも医務室の先生に言われ、僕は解放された。

 

 

雨宮先生と医務室を出る。辺りはもう真っ暗になっている。大分遅くなちゃったなあ。梓、心配してるかな。

チラと鞄から覗きみた携帯には、鬼のようにライン。梓だと直感した。

「それじゃ先生、すみませんお世話になりました・・」

そう帰ろうとしたところで、がしと雨宮先生に手首を捕まえられた。

「星屑くん!やっぱり今日は僕の家に泊まりにおいでよ、ね!」

「ええ!?いや良いですって!!」

「今日は帰したくない!!」

先生のテノールが廊下に響く。

強引に引っ張っていかれそうになってヤバいかもと思った時!

「ひかり!」

地を這う様な冷たい声が廊下に響いた。
梓だった。

 

「なかなか帰ってこないから心配して探しに来てみれば。雨宮先生も。どういうことですか?」

キレたいのを抑え込んでる声で、色んな意味でこれはヤバい!

「先生!僕帰りますのでさようなら!!」

「星屑くん!!!」

強引に梓の腕を引いて、僕はその場から逃げ出した。

 

 

寮の部屋で梓と2人。

バタンと扉を閉めるなり、梓は僕の手を振り払った。

「!」
「ちゃんと説明しろよ!」

うっやばいどうしよう!?どこから何を言えば良い!?

「ひかり、やっぱりさあ。雨宮先生と付き合ってるんだろ!?抱き抱えられてるとこ見たって聞いたよ同級生に!お姫様抱っこだったらしいじゃん、何それ!?」

「いや、ご、誤解なんだ!!」

ダアン!と机を叩いて梓は言った。

「じゃさっきの何!?僕ん家泊まってとか今日は帰したくないとか!恋人同士の会話じゃん!!」

「いや、違うって!!」

「違くない!保健室前であの会話って何!?保健室でそういうコトしてたってこと?で続きは家でって訳!?」

トンデモない方向に誤解されている!!

「俺を誘惑しといて雨宮先生とも!?信じらんない!!」

「いや、違うんだよ本当にい!!!」

「じゃあどういうことか説明しろよ!!!」

「・・!」

怒りに頬を染めている。こんな梓は初めてだった。誤魔化せないと悟った僕は、正直に白状し始めた。

「実は・・」

隠しておいた例の手紙を見せて、雨宮先生に相談していたと打ち明けた。

「だからね、家に泊まってっていうのは、僕を守るためにって意味だったんだよ。
・・分かってくれた・・?」

はあと深く深く、梓はため息を吐いた。

「・・こんな手紙貰ってるなら、俺に相談してくれたら良かったのに・・俺ってそんなに頼りない?」

「・・梓には知られたくなかったんだ」

「雨宮先生になら良いんだ」
傷ついた顔で言う梓。何も言えなかった。

「・・・」

「雨宮先生の方が身近なんだよねひかりにとってはさ・・。

結局今日一日俺にくっついてたのは、突き落とされるのが怖かったからでしょ?俺をステキだと思っただとか、一緒にいたいと思ったから、って嘘だったんじゃん」

俺、嬉しかったんだけどなあと梓は寂しそうに言った。胸がギュッとなった。

 

梓、それは本当は僕の本音でもあるんだ。本当だよ。だなんて言えないから。

「・・ごめん」

とだけ言った。

 

 

夜。すごく気まずい気持ちでベッドに横になっていたら。暗闇で梓は言った。

「・・ひかり、雨宮先生と番になりたい?」

「え、いや違うってえ!」

「正直に教えてよ」

「いや、全然!思ってないってば!」

「でもさ、先生も何とも思ってない子を家に泊めようとかするかな」

「雨宮先生優しいんだよ!」

「男が親切なのは、好きな子にだけだと思うけどなー俺は」

「あずさあ!!」

「ごめん冗談だよ」
ふふと梓は苦笑した。そして言った。

「・・もし雨宮先生と番になりたくなったら言ってね。俺との番はさ」

解消するからってこと・・?

「解消、しないから」

「ええ?普通逆じゃない」

つい起き上がってしまった。僕に背を向けたまま梓は続けた。

「俺が先にひかりと番になったから、残念でしたって言ってやるんだ。ひかりは譲らないんだ、誰にも」

梓・・。

「まあさ、また何か変な手紙入れられたり、またべつの嫌がらせされたら今度は俺に教えてね。ひかりは俺が守りたいんだ。・・守らせてくれよ」

「・・わかったよ、ありがとう」

「おやすみひかり」

 

梓はこんなにも優しい。本当の番でもない僕にさえ。

こんな人に愛される本物の相手が僕は心底羨ましい。良いな。梓の中の僕の席は、いずれ誰かが座るんだ。

 

 

続く

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